JAJA899A June   2025  – June 2025 BQ25620 , BQ25622 , BQ25622E , BQ25628 , BQ25628E , BQ25629 , BQ25638

 

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はじめに

バッテリの存在の有無を判定することは、多くのシステムにとって有用です。バッテリが存在する場合は、より高いシステム負荷に対応でき、バッテリが外された場合は、エンド ユーザーに通知できます。さらに、バッテリが BAT ピンから外れると、アダプタが存在する場合、チャージャはバッテリノードのキャパシタンスの充電を開始します。調整電圧に達すると充電が停止し、BAT ピン電圧が再充電のスレッショルドを下回るまで充電は再開されません。その後、スレッショルドを下回ると充電を再開します。これにより、可聴ノイズの発生、EMI の増加、SYS 電圧の変動が発生する可能性があります。これらの問題を軽減するため、シングル セル チャージャ (BQ2562x および BQ2563x) の統合機能を活用してバッテリの有無を検出し、それに応じて充電を有効または無効にできます。

 BQ25622 のアプリケーション図図 1 BQ25622 のアプリケーション図

バッテリの検出方法

BQ2562x および BQ2563x チャージャ ファミリには、BAT ピンに約 30mA の放電電流を印加する機能があります。この機能を使用して、バッテリ検出アルゴリズムを実行できます。バッテリが存在しない場合、30mA の放電電流で、BAT ピンの小容量の容量性電荷を放電することにより電圧が低下します。バッテリが存在する場合、BAT ピンに電圧が印加されます。どちらの場合も、内蔵 ADC を使用してバッテリ電圧を検出できます。プロテクタ IC が使用されている場合は、プロテクタ IC の低電圧保護 (UVP) を復帰させるため、一時的にチャージャを有効にする必要があります。充電が有効な状態で VBAT が VREG V RECHG を下回ると、バッテリが存在し、プロテクタ デバイスがアクティブになります。これらの方法では、バッテリがシステムに挿入されているかどうかをすばやく確認できます。また、追加のコンポーネントは必要ありません。

 BAT ピンの放電方法図 2 BAT ピンの放電方法

バッテリ検出シーケンス

バッテリが外された場合や、UVP 保護がアクティブになった場合を検出するため、ホスト MCU のファームウェアで次の手順を実行します。以下のシーケンスで示されるレジスタとビットは、BQ2562x チャージャ ファミリに対応します。他のチャージャ ファミリについては、データシートのレジスタ定義をご参照ください。

バッテリ検出の解除方法:

  1. CE ピンを High にするか、EN_CHG=0 (0x16[5]=0) を書き込むことにより、充電を無効にします。
  2. FORCE_IBATDIS=1 (0x16[6]=1) を書き込み、IBAT 放電電流を有効にします。
  3. 約 5ms 秒待ちます。
  4. FORCE_IBATDIS=0 (0x16[6]=0) を書き込み、IBAT 放電電流を無効にします。
  5. ADC をワンショット モードに設定し、ADC_RATE=1 (0x26[6]=1) および ADC_EN=1 (0x26[7]=1) を書き込み、有効にします。
  6. VBAT ADC の値を 0x30 から読み出します。
  7. VBAT ADC の値がバッテリ低電圧スレッショルドを超えている場合、有効なバッテリが接続されており、 EN_CHG=1 (0x16[5]=1) で充電を有効にできます。
  8. VBAT ADC の値がプロテクタ IC の低電圧スレッショルド未満の場合、UVP 保護からの復帰を試行するため、次のシーケンスに進みます。

ADC を有効にした後、ステップ 5 から 6 の間で値を読み出す前に、ファームウェアに十分な待機時間があることを確認してください。ADC の変換速度は調整できます。また、VBAT ADC を有効にすると ADC 待機時間を短縮できます。

次の手順に従って、プロテクタ IC を確認して復帰します。

  1. VSYSMIN = 3.84V (0x0E=0x0C00 を書き込む) に設定し、VREG = 3.7V (0x04=0x0B90 を書き込む) に設定します。終端 (0x14[2]=1 を書き込む) を無効にして、PFM (0x18[4]=1 を書き込む) を無効にします。
  2. CE ピンを Low にするか、EN_CHG=1 (0x16[5]=1) を書き込むことにより、充電を有効にします。
  3. プロテクタ デバイスの放電 FET が閉路するために十分な時間待機します。
  4. ADC をワンショット モードに設定し、ADC_RATE=1 (0x26[6]=1) および ADC_EN=1 (0x26[7]=1) を書き込み、有効にします
  5. VBAT ADC の値を 0x30 から読み出します
  6. (VREG-VRECHG - 100mV) が VBAT ADC 値よりも小さい場合、有効なバッテリが接続されていません。CE ピンを High にするか、EN_CHG=0 (0x16[5]=0) を書き込み、充電を無効にします。
  7. VBAT ADC 値 < (VREG-VRECHG + 100mV) の場合、有効なバッテリが接続されており、充電を継続できます。

ステップ 3 の待機時間は、バッテリに使用されるプロテクタ IC によって異なります。UVP からの復帰に必要な正確な待機時間を決定するには、テストが必要です。待機時間は、バッテリの放電深度とプロテクタ デバイスの復帰基準の関数です。バッテリの存在の有無を判定すれば、以前のすべてのレジスタ構成をアプリケーション要件に戻すことができます。

波形の例

このテストは、標準的なリチウムイオン バッテリ (BQ25620EVM および BQ29700EVM) を使用して行いました。

バッテリが存在しない場合、初期の FORCE_IBATDIS によってバッテリ電圧が 0V になり、充電が有効になります。充電が有効になると、VBAT は VREG-VRECHG と VREG の前後で変動します。これは、BQ25620 の内蔵 VBAT ADC を使用して、バッテリが接続されていないことを確認できます。

 バッテリなし図 3 バッテリなし

バッテリが検出された場合、FORCE_IBATDIS によって VBAT を UVP スレッショルド未満に下げないため、最初のシーケンスのみが実行されます。

 バッテリあり図 4 バッテリあり

プロテクタ UVP は約 800ms 後に復帰し、充電が継続されます。プロテクタの放電 FET のボディ ダイオードを介してバッテリを充電し、VUVP+VHYS を上回るまで充電を継続する必要があります。これより、プロテクタ IC が完全に復帰します。

 バッテリあり - UVP 復帰図 5 バッテリあり - UVP 復帰

バッテリがデイープ放電した場合、電圧は、短時間で VUVP +VHYS を超えるまで、完全には復帰しません。充電が有効になる時間は、使用するプロテクタ IC およびバッテリの放電量によって異なります。

 UVP 復帰失敗図 6 UVP 復帰失敗