JAJT347A September   2024  – October 2024 BQ25756 , BQ25798 , TPS25751 , TPS26750

 

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    1.     バッテリ駆動製品と次世代ソリューション
    2.     リファレンス デザイン
    3.     まとめ
    4.     その他の資料
    5.     商標

Adam McGaffin

パーソナル エレクトロニクス、車載、産業用、エンタープライズなどのシステムに採用されている USB Type-C® (USB-C®) は、業界標準のコネクタであり、単一のインターフェイス (ケーブル) を使用してデータと電力の両方を伝送することができます。USB パワー デリバリ (PD:電力供給) は、USB-C コネクタを使用する規格であり、(電力伝送に関して) USB-C インターフェイスの機能と特長を強化する役割を果たします。最近まで、USB PD 3.0 仕様では、標準電力範囲 (SPR) と呼ばれる最大 100W (20V、5A) の電力が双方向に流れることを許容していました。最新の USB PD 3.1 仕様では、USB-C ケーブルによって電力範囲が 240W (48V、5A) に拡大されており、現在は拡張電力範囲 (EPR) と呼ばれています。

表 1 に、EPR と SPR の比較を示します。

表 1 SPR と EPR の固定電圧範囲
電力範囲 利用可能な電流と電圧 電力供給プロファイルの範囲
SPR 3A:5V、9V、15V、20V
5A 1:20 V
15W-60W
>60W-100W
EPR 5A 2:28V、36V、48V >100W-240W EPR モードへの移行が必要
  1. 5A ケーブルが必要です。
  2. EPR ケーブルが必要です。

EPR は最大 240W の電力 (5A で 28V、36V、48V) をサポートできます。EPR モードでは、標準的な USB PD 契約ネゴシエーションの場合と同様に、シンクで新しいソース機能メッセージを評価して応答する必要があります。EPR モードに移行すると、ポートは最大 240W (48V、5A) の電力供給オブジェクト (PDO) のネゴシエーションを開始します。48V の制限は、設計上の安全マージンを考慮した場合の実用的な制限値を表します。

EPR モードの固定電圧レベル拡張に加えて、電源は可変電圧源 (AVS) の仕様にも従う必要があります。EPR モードでは、AVS により、シンクが 15V~48V の間で 100mV 刻みで電圧を微調整できるため、性能と熱効率が向上します。また、AVS により、あらゆるチャージャからシンクで電圧を受け取る柔軟性が得られるため、カスタム アダプタが不要になり、電子エコシステム内で一貫性のあるユーザー エクスペリエンスを実現できます。

図 1 に、SPR と EPR の電力レベルに関するプログラマブル電源 (PPS) および AVS 範囲を示します。PPS と AVS はどちらもプログラム可能なステップ サイズを備えていますが、同じではなく、異なる用途を目的としています。AVS は定電圧電源として動作し、効率を高めるために安定した DC 電圧をシステムに供給します。PPS はステップサイズ ウィンドウが小さく (20mV)、接続デバイスのバッテリ チャージャをバイパスしてバッテリを直接充電できます。AVS と PPS の主な違いは、PPS ではネゴシエートされた電圧が時間の経過とともに絶えず変化することです。バッテリの充電に伴い、必要な PPS 充電電圧が上昇します。AVS は、システム全体で必要とされる電圧に近い電圧レベルまでシステム入力電圧を供給する定電圧電源として機能することを意図しています。

 ソースに必要な USB PD 3.2 電圧図 1 ソースに必要な USB PD 3.2 電圧

バッテリ駆動製品と次世代ソリューション

Bluetooth® スピーカや電動工具のようなポータブル バッテリ駆動製品は、USB-C の採用によって利点を得られます。この種の製品に USB-C を実装すると、USB-C ポートから充電できるだけでなく、同じポートを使用して接続デバイスに電力を供給することもできます。シングルまたはマルチセルのバッテリ チャージャを使用する製品を USB-C または USB PD コントローラとペアリングできるようになったため、アプリケーションで USB-C ポートから電力のソース (供給) およびシンク (吸い込み) を行うことが可能です。

図 2 に、USB-C および USB PD に移行するデバイスの一般的なアーキテクチャを示します。

 USB-C バッテリ駆動製品のブロック図図 2 USB-C バッテリ駆動製品のブロック図

バッテリ駆動製品向けの USB PD ポートの設計を簡素化できるように、TI の USB PD コントローラは I2C ホスト サポートを追加して、バッテリ チャージャを直接制御します。この統合型 I2C ホスト制御により、外部マイクロコントローラ (MCU) を必要とせずに、2 チップ構成のソリューションを実現できます。USB PD コントローラは、USB PD ポート上での電力ネゴシエーションに基づいて、I2C を介してバッテリ チャージャの充電パラメータを自動的に更新します。さらに、バッテリ駆動製品に USB PD ポートを追加するためにファームウェアを開発する必要もありません。TPS25751TPS26750 は、USB-C とバッテリ チャージャのペアリングに使用される 2 つの USB PD コントローラです。

TPS25751 は SPR PD コントローラであり、TPS26750 は 240W EPR 全体をネゴシエートできる EPR PD コントローラです。表 2 に、推奨される USB PD コントローラとバッテリ チャージャのペアリングを示します。これらのペアリングのリファレンス デザインを使用すると、設計をコピーしてアプリケーションに貼り付けることができます。

表 2 USB PD コントローラとバッテリ チャージャのペアリング
サポートされる最大電力レベル サポートされる直列接続セル数 (S) 推奨の USB PD コントローラ 推奨のバッテリ チャージャ リファレンス デザイン
100W シンク
45W ソース
1-4 TPS25751 BQ25798 2~4 セルのバッテリ向け、統合型 USB Type-C® パワー デリバリ (PD) と充電のリファレンス デザイン
100W シンク
100W ソース
1-5 TPS25751 BQ25731 1~5 セルのバッテリ向け、統合型 USB Type-C® PD 双方向充電のリファレンス デザイン
100W シンク
100W ソース
1-16 TPS25751 BQ25756 100W、統合型 USB Type-C® PD 双方向チャージャのリファレンス デザイン
240W シンク
240W ソース
1-16 TPS26750 BQ25756 240W、USB Type-C PD3.1 EPR バッテリ チャージャのリファレンス デザイン

リファレンス デザイン

240W の拡張電力範囲全体をサポートできるように、「240W、USB Type-C PD3.1 EPR バッテリ チャージャのリファレンス デザイン」では、TPS26750 と BQ25756 双方向昇降圧充電コントローラをペアリングしています。図 3 に示すように、このリファレンス デザインは、これら 2 つのデバイスを 1 枚のプリント基板に組み合わせて、外部 MCU やカスタム ファームウェアを必要とせずに双方向 240W ソリューションを実現します。

 EPR バッテリ チャージャのリファレンスデザインのブロック図図 3 EPR バッテリ チャージャのリファレンスデザインのブロック図

このバッテリ チャージャのリファレンス デザインは、7~14 セル バッテリ向けの統合型 USB PD と充電のリファレンス デザインであり、電動工具、掃除機、ポータブル電源、E-バイクなどの製品に適しています。TPS26750 は、シンプルな I2C 通信を介して BQ25756 と連携し、ファームウェアの開発は必要ありません。TI の USB-C PD コントローラ向けアプリケーション カスタマイズ ツールを使用すると、TPS26750 のプログラミングが簡単になります。

このバッテリ チャージャのリファレンス デザインは、USB PD 3.1 準拠の入力電源を使用して、最大 240W のバッテリ充電をサポートし、On-the-Go (OTG) モードで最大 48V、5A の出力を供給します。BQ25756 は 4 スイッチの昇降圧チャージャを実装しており、降圧モード、昇降圧モード、昇圧モードの間を遷移します。高集積とシンプルな設計により、BOM (部品表) コストの削減、サイズの小型化、開発期間の短縮を実現できます。

まとめ

新たに拡大された最大電力範囲により、USB-C は将来のユニバーサル コネクタとしての地位を確立しています。USB-C は新しくて難しい技術と見る向きもありますが、TI のソリューションはソフトウェアとハードウェアの両方の観点で統合を可能にして、設計プロセスを簡素化できます。TI の USB PD コントローラとバッテリ チャージャのペアリングは、リファレンス デザインと組み合わせることで、ソリューション サイズの小型化や開発期間の短縮を実現できます。

商標

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