JAJT374A April   2023  – February 2025 TPS7H5001-SP , TPS7H5002-SP , TPS7H5003-SP , TPS7H5004-SP , TPS7H5005-SEP , TPS7H5006-SEP , TPS7H5007-SEP , TPS7H5008-SEP , TPS7H6003-SP

 

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    2.     まとめ
    3.     その他の資料
    4.     商標

クルト・エクレス

人工衛星業界では、ローカル (衛星内) データ処理量の大幅な増加、よりスループットの高い通信リンクへの対応、電気推進システムの急速な採用増加に伴い、これまでよりずっと高性能な電源システム (EPS) が求められるようになっています。EPS は衛星のバス セクション (基本動作に必要な機器) の一部です。このセクションは、構造的な土台となるほか、電源、放熱管理、通信、推進などの各サブシステムを格納しています。EPS は、電力の発電、蓄積、レギュレーション、および他のすべてのサブシステムや衛星に搭載されたペイロードへの配電を行います。

宇宙ミッションに固有の課題と制約により、サイズ、重量、電力 (SWaP) を最適化することが必須です。衛星の設計で SWaP がそのような重要事項となるいくつかの理由を、以下に示します。

  • ミッションの要件:データ送信レート、分解能、感度など、ます高まる要件が、衛星の SWaP 要件に影響を及ぼす場合があります。
  • 打ち上げの制限事項:衛星には、サイズの制約、重量の制約、打ち上げコストの制約が課されており、意図している衛星軌道に応じて、コストは 1 kg あたり 1,000 ドルから 10,000 ドルにまで達します。
  • 発電:衛星は一般的にソーラーパネルに依存しており、パネルのサイズと重量に応じて発電量に制限が生じます。発電能力はまた、バッテリのような部品のサイズと重量に影響を及ぼし、配電系や放熱管理などの機能にも影響します。
  • 動作効率:SWaP を最適化すると、宇宙で衛星がより効率的に動作するようになり、その結果、性能の向上とミッションの寿命延長を達成できます。

衛星にとって電力は最も貴重なリソースの 1 つであり、EPS の効率を最大化すると、ミッションの寿命延長、質量と体積の低減、放熱管理オーバーヘッドの最小化に役立つ可能性があります。

多数の電源トポロジを採用しているため、EPS では効率に加えて、広い範囲の電圧と電流を取り扱うことも必要になります。図 1に、最も一般的なトポロジのいくつかを示します。

 衛星の電源アーキテクチャで一般的な電源トポロジ図 1 衛星の電源アーキテクチャで一般的な電源トポロジ

図 2に示している、一般的な衛星向け EPS の部品と機能は以下のとおりです。

  • ソーラーパネル (またはエネルギー生成):大半の衛星にとって、主要な電力源はソーラーパネルです。
  • バッテリ (またはエネルギー蓄積):太陽光が当たる時間帯に、ソーラーパネルが発電した電力のうち余剰分をバッテリに充電しておき、太陽光が当たらない時間帯や、ソーラーパネルが十分な電力を発電できないときに、蓄積しておいた電力を衛星に供給します。
  • パワー コンディショニング ユニット (PCU):PCU は、ソーラーパネルやバッテリの出力電力に対するレギュレーションを実施し、安定的で一貫した電圧と電流を衛星の他の部分に供給します。
  • パワー ディストリビューションユニット (PDU):PDU は、ソーラーパネルが発電した電力やバッテリが放電した電力を、各種サブシステムや衛星に搭載されたペイロードに配電します。
  • バックアップ電源:メイン EPS が故障した場合、メインシステムが復旧するまでの間、非常に重要ないくつかの機能を維持するためにバックアップ電源が役立ちます。
 標準的な衛星向け EPS図 2 標準的な衛星向け EPS

人工衛星システムの SWaP 設計の課題を解決するために、PWM (パルス幅変調) コントローラとゲートドライバ、シリコン MOSFET または GaN FET を組み合わせることができます。このアプローチにより、EPS システムのさまざまな部分に最適化された電源を開発できます。

EPS を開発する場合、設計者はさまざまな電圧レベルと電流レベルに対応し、放射線強化されたハーフブリッジ GaN FET ゲートドライバを選択できます。これらのゲートドライバは、衛星の EPS 電源ツリー全体のスケール化に使用できます。利用可能なデバイスは、TPS7H6003-SP (200V)、TPS7H6013-SP (60V)、TPS7H6023-SP (22V) (100 krad TID、75 MeV⋅cm2/mg の SEL 耐性)、耐放射線特性の TPS7H6005-SEP (200V)、TPS7H6015-SEP (60V)、TPS7H6025-SEP (22V) (50 krad TID、43 MeV⋅cm2/mg の SEL 耐性)。これらのゲートドライバは、さまざまな電源トポロジと入力形式に対応することで、設計のフレキシビリティを向上します。

さらに、設計者は、放射線耐性強化のTPS7H5001-SPや耐放射線特性のTPS7H5005-SEP PWM コントローラなど、さまざまな電源実装をサポートするように設計された PWM コントローラを使用することもできます。

TI は、宇宙グレードの PWM コントローラおよび GaN FET ゲートドライバを用いるエンジニアの方々が、EPS だけでなく、一部のペイロード用途においても、様々な電源回路で活用できるよう、以下のリファレンスデザインを開発しました。

  • 非絶縁型の高電圧降圧設計
    • 50V ~150V の入力、28YV の出力をサポートする、上記の PWM コントローラとゲートドライバを使用した、300W の非絶縁型同期整流降圧トポロジを採用しています。
    • この設計は、衛星が EPS サブシステムのバッテリストレージ部分に電力を渡す前に、変化の大きい 100V ソーラーパネル出力のレギュレーションを行うために最適化されています。
    • TI のリファレンスキットのサンプル:PMP23552
  • 絶縁型フルブリッジ設計
  • 非絶縁型大電流多相降圧設計
    • この設計は、PWM コントローラとゲートドライバを使用した多相同期整流降圧トポロジで、11V ~ 14V の入力、0.8V の出力に対応し、出力段に GaN FET を使用します。この設計は、許容可能な DC および AC の公差を維持しながら、80A をサポートできる二相構成を採用しています。
    • 設計者は設計をより多くのフェーズに拡大することができ、高度な FPGA (フィールド プログラマブル ゲート アレイ)、ASIC、またはマルチコアプロセッサのコアレールに電力を供給するために必要とされる大電流 (100A 以上) と低い入力電圧 (0.8V 以下) などの設計要件を満たせるようになります。
    • TI のリファレンスキットのサンプル:TIDA-010958
    • その他の資料:アプリケーション ノート「12 VIN to 1 VOUT Single Phase Buck Converter Using TPS7H5001-SP Controller.

まとめ

衛星にとって電力は最も貴重なリソースの 1 つであり、EPS (電源システム) アーキテクチャは衛星の設計全体に大きな影響を及ぼす可能性があります。TI の放射線検証済み PWM コントローラ ファミリは高効率を実現するほか、広い範囲のトポロジや、多様なミッションと衛星軌道に導入可能なアーキテクチャに対応できます。

商標

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