信頼性が今後10年間のエネルギー貯蔵を決定づける

バッテリ管理の進歩により、グリッドスケールのシステム全体で、より一貫性のある性能を実現できます

9 6 月 2026 | 科学技術

Henrik Mannesson (エネルギー インフラストラクチャ、ゼネラル マネージャー) がこの記事を執筆しました。

日没の直後から、日中の豊富な太陽光発電は減少し始め、家庭、企業、データセンターからのエネルギー需要は継続しています。 バッテリエネルギーストレージシステム (ESS) は、エネルギーを生成する状況と必要な状況の間の架け橋として機能しつつあります。

国際エネルギー機関は、太陽光および風力発電の急速な拡大を支えるために、世界のエネルギー ストレージ容量を 2030 年までに 6 倍以上の 1,500GW へ増やす必要があると予測しています。この需要の急増は、エネルギーの生産、貯蔵、供給についての業界の考え方を変えています。

しかし、容量を拡大しただけでは需要の課題に対処できません。ストレージ システムが拡大するにつれて、長期的な信頼性が決定的な課題になりつつあります。オペレータは、需要が増加した場合、再生可能エネルギー発電が変動した場合、または予期しないグリッド イベントが発生した場合に、貯蔵されたエネルギーを利用できるという確信を得る必要があります。信頼性の低いシステムでは、エネルギー供給が滞るだけでなく、発電コストが安いときに充電し、需要や価格のピーク時に供給することも難しくなります。

現在、設計者と話をする際、彼らの最大の関心事は蓄電量ではなく、システムの全寿命にわたる供給の信頼性です。彼らは、今日4時間分の電力を供給できるシステムが、数年後も同様の性能を発揮できるという確信を求めています。その信頼性は、バッテリ内部から始まります。

バッテリ内部の課題とブレークスルー

グリッド スケールのストレージ システムは、数千個のセルに依存しています。1 つのセル内部で発生する異常は、異常発熱や内部短絡のような小さなものでも、システム全体の性能に影響することがあります。従来のバッテリ管理システムは電圧、電流、温度を測定しますが、これらの測定値は、各セル内で発生する電気化学的変化ではなく、システムが外部からどのように動作するかを反映しています。

セル内部の可視性がなければ、最も危険な不具合である熱暴走は、手遅れになるまで検出されない可能性があります。この自己発熱連鎖反応では、セルが放熱能力よりも速く熱を発生させます。温度センサが過熱を検知する頃には、すでに不可逆的な状態になっている可能性があり、周囲のセル、モジュール、あるいはシステム全体を危険にさらすことになります。

グリッド スケール ESS には、数千個のリチウム セルが使われていることがあります。各セルを個別に監視することが、診断上の課題です。

心電図 (EKG) で心臓の状態を監視するのと同じように、電気化学インピーダンス分光法 (EIS) はバッテリを監視し、各セルの電気化学的シグネチャを測定します。これは、その化学特性、経年劣化、動作条件に特有のフィンガープリントです。EIS は、従来のセンサでは到達できないセル内部から、各セルの健全性を明らかにし、問題が深刻化する前に警告する継続的なリアルタイム インサイトを提供します。

TI の 統合型 EIS エンジン搭載 BQ79826Z-Q1 バッテリ モニタは、予測インテリジェンス、リアルタイム診断、包括的なセル レベル データを、グリッド スケールのバッテリ システムにもたらします。1 台のデバイスでより多くのセルを監視できるバッテリ モニタの機能により、システムの複雑さとコストが削減され、バッテリ管理は事後対応型の監視からインテリジェントな予測制御へと進化します。  

予測監視が動作に及ぼす影響

高度なバッテリ管理によって可能になる最も明確な指標は、時間の節約です。潜在的な故障を早期に把握することで、根本的に異なる運用モデルが構築されます。運用者は、より正確なメンテナンス計画を立て、予期せぬダウンタイムを削減し、システムの状況に対する確信度を高めて意思決定を行うことができます。

このインテリジェンスは、運用者が既存のシステムをどのように活用するかにも変化をもたらします。充電状態と健全性、そして長期的な損傷を引き起こすことなくシステムがどの程度まで放電できるかを正確に把握することで、運用者は大規模なESS設備を信頼できる最適化可能な資産として扱うことができます。

インテリジェントなエネルギー供給の進化

バッテリ レベルでのストレージの予測可能性が向上すれば、グリッド レベルでの応答性も高まります。システムが大規模化し、電力網により深く組み込まれていくなかで、この結びつきはますます重要になります。

再生可能エネルギーの出力は天候や時刻に応じて増減し、必ずしも需要に連動するわけではありません。発電量が多いときに動的に充電し、需要が増加したときに放電するストレージ システムは、従来型発電では実現できない柔軟性を提供します。

エネルギー供給を高速道路網にたとえて考えてみましょう。技術者はピーク時の需要に対応できるよう電力網を構築し、いわばラッシュアワーの交通量を想定して設計しているものの、一日の大半の時間帯においてその設備は十分に活用されていません。バッテリ ストレージは、需要が高まる前にエネルギーを蓄えて供給する一方、出力制御される可能性のある再生可能エネルギーを吸収することにより、このモデルを一変させます。

産業施設やデータ センター、変電所における太陽光発電とバッテリ システムの組み合わせに代表される、発電設備とストレージの併設により、エネルギー ストレージを需要地のすぐ近くに設置できるようになります。分散型エネルギー システムは、遠隔地にある電源への依存度を低減し、高い信頼性をもって運用する必要があります。

今後の展望

次世代のエネルギー ストレージを決定づけるのは、インテリジェンス、高精度、保護性能です。数千個に及ぶバッテリ セルの内部で起きている事象を正確に把握する能力や、問題を早期に察知する能力、さらには必要なときに必要な場所へエネルギーを安定供給する能力が、その核となります。

現在では、大型の電力事業用エネルギー ストレージ システムにおいて、すべてのセルを監視するために必要な半導体技術が実用化されています。高度なバッテリ管理に投資する企業や組織は、電力網が最も必要とするときに蓄えたエネルギーを利用できるという確信をもって、システムを配備、運用できるようになります。

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