ヒューマノイド ロボットの実用化に何が必要か。TI のエキスパートの見解は?

ヒューマノイド ロボットは、AI を物理的なものにする方法の一つであり、その進化には半導体技術が大きく影響しています

24 6 月 2026 | 科学技術

重要なポイント:

  • 半導体は、特定の工場環境から実社会への導入まで、ヒューマノイド ロボットをスケーリングするうえで重要な実現手段となっています。
  • ヒューマノイド ロボットが情報に基づいた決定を行うには、カメラ、ミリ波レーダー、触覚フィードバック センサ、位置エンコーダを組み合わせたセンサ フュージョンが必要です。
  • 高度なヒューマノイド設計は自由度が 50 を超えることがあり、移動を確実に同期させるには、センシング、コンピューティング、通信、モーター制御をシステム レベルで緊密に統合する必要があります。

誰も服をたたむのは好きではないが、もしロボットが代わりにたたんでくれたらどうだろう?

そこで、ヒューマノイド ロボットが登場します。ヒューマノイド市場は 2050 年までに 5 兆ドル規模に達すると予測されています。長らく未来の技術と見られていたヒューマノイド ロボットは、すでに工場環境で運用できるレベルに達しています。

しかし、それはポテンシャルの一部にすぎません。それを実現するには、半導体の役割がこれまで以上に重要になります。

これまで、人工知能 (AI) はデータを分析し、インサイトを生成して、人間の意思決定を支援してきました。

「AI は実体化が進んでいます。分かりやすい例の一つがヒューマノイド ロボットです」と、TI のロボティックス/オートメーション部門の責任者である Giovanni Campanella は話しています。

フィジカル AI は、これらの AI モデルを具現化したものであり、ヒューマノイドが物体を操作したり、複雑な環境を移動したりすることを可能となっています。

「こうした能力を実現できるのは、半導体技術の進歩があってこそです」と、Giovanni は話しています。

半導体技術を活用して、ヒューマノイド ロボットを特定の用途から実社会の多様なシステムにどのように応用しているのでしょうか。また、そのスケーリングに何が必要なのでしょうか。TI のエキスパートに聞いてみましょう。

周囲を認識する能力の拡張

人が五感を使って見たり触ったりするように、エンジニアはヒューマノイド ロボットにセンサを搭載し、周囲の環境を認識できるようにしています。

たとえば、物体を検出するには、視覚や空間認識のための信頼性の高いカメラ センサだけでなく、ケーブルを一定のトルクで引っ張るのかドアを開けるのかといった、異なる作業を識別するための触覚フィードバック センサも必要になります。

しかし、1 つのセンサだけで周囲の環境を完全に認識することはできません。

「ミリ波レーダー技術は、厳しい照明環境、ほこり、霧、遮蔽物のある状況でも信頼性の高い認識能力を実現することで、カメラや他のセンサを補完しています」と、TI のロボティクス担当システム マネージャである German Aguirre は話しています。ロボットの四肢の位置に関する情報は位置エンコーダが提供しています。

「そのため、複数のセンシング方式から取得したデータを組み合わせることが不可欠なのです」と、Giovanni は話します。「この設計アプローチは、ヒューマノイド ロボットの潜在能力を引き出すことになり、ロボットの使用事例を拡大することができます」

ロボットの周囲の環境をより包括的に理解するために複数のセンサから取得したデータを組み合わせることをセンサ フュージョンといいます。

「エンジニアがより多くの情報に基づいて判断できるヒューマノイドを製作するには、センサ フュージョンが必要です」と、German は話します。「たとえば、異なるサイズの物体をつかんだり、物理的な障害物を回避したり、人と安全にやり取りするなどです」

器用な動作を実現するモーターの追加

拳を握ったり手のひらを開いたりするのに、どれだけの関節が関わっているか想像してみてください。

「人にとってはごく簡単な動作であっても、それをロボットに行わせるにはモーターが必要です。ヒューマノイドで安全かつ正確な動作を実現するには、モーターとセンサの組み合わせが必要なのです」と、Giovanni は話します。

器用さを向上させるには、より多くの自由度(モーターによって制御される人型ロボットの手の関節の数を表す用語)が必要となり、それによって複雑な作業を継続的に実行できるようになる。

「エンジニアは、より多くのモーターを設計に組み込むようになってきています。現在、私たちの協力メーカーは、それぞれ最大 25 の自由度を持つ手の開発を進めています」と、German は話します。「高度なヒューマノイドの設計では自由度が 50 を上回ることもあり、ロボット全体で数十個の分散型モーター制御ノードが必要となることも稀ではありません」

スケーラビリティに対するシステム レベルの取り組み

ヒューマノイドの複雑さが増大する現状では、多くのモーターを正確なタイミングで連携させる方法が重要となります。

「より多くのモーターが必要になるにつれ、スケーラビリティはより大きな課題になっています」と、Giovanni は話しています。

エンジニアは、ロボット全身のモーターをどのように同期させているのでしょうか。

「ヒューマノイド システムの強度は、最も弱いサブシステムで決まります」と、German は話します。「スケーラブルなヒューマノイド プラットフォームを実現するには、センシング、コンピューティング、通信、モーター制御を緊密に統合する必要があります。」

TI は、連携して動作する複数のテクノロジーによってヒューマノイド ロボットのスケーリングを可能にしています。

  • EtherCAT や産業用イーサネット技術のような、リアルタイムで決定論的な通信により、複数の分散型アクチュエータ間で同期モーション制御を実現します。
  • センサがヒューマノイドの動作環境をキャプチャします。
  • マイコン上で動作する AI アルゴリズムがセンシング データを解釈して決定を下します。
  • モーター制御が連続的なリアルタイム帰還ループによって決定を実行します。

人間中心の環境への適応性の向上

ヒューマノイド ロボットは、構造化環境と非構造化環境で動作します。構造化環境では、ロボットは予測可能な条件下で動作しますが、Giovanni によれば、非構造化環境での動作の信頼性は、引き続き業界で最大の課題となっています。

「非構造化環境で認識センシングを実現するには、レーダー、LIDAR、カメラのような各種センサの組み合わせや、AI モデルの実行が必要です。そうすれば、ロボットが多様な動作条件の下で、物体の検出、分類、位置特定、追跡を実行できるようになります」と、Giovanni は話します。

ヒューマノイド ロボットを実用化するには、人と機械の安全な相互作用を確保することも重要な検討事項になります。

レーダーは、障害物や人の存在を検知する能力を高めるための追加のセンシング方式となります。その結果、他のセンサや機能安全アーキテクチャと組み合わせることで、システム全体の安全性を向上させることができます。

「この結果、人が近くにいるときに、ロボットの速度を落としたり、停止したりすることができます」と、German は話しています。

リアルタイム制御マイコンは、多くの場合、機能安全規格を満たし、安全な通信をサポートする必要があります。安全認証取得済みの TI のパワー マネージメント IC は、Safety Integrity Level 2 準拠のミリ波レーダー センサに電力を供給でき、信頼性が高い安全なレーダー ソリューションの実現に役立ちます。

では、今後のヒューマノイドはどのようになっていくのでしょうか。

「今後は、より高性能な AI 駆動の意思決定能力が搭載され、より器用で流動的な移動が可能になっていくでしょう」と、German は話します。「安全な相互作用についても進化が見られるでしょう。こうした進歩により、ロボットはプロトタイプの段階を越えて、実社会に浸透していくことでしょう。TI が現在進めている取り組みは、その実現を可能にします。」

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