日常の中の産業技術:物静かなテクノロジーが日常生活を強化

持続可能性、利便性、安全性をいっそう高めた生活を推進するうえで、産業用アプリケーションが不可欠な理由

12 12 月 2024 | テクノロジーと革新

多くの人は産業用アプリケーション内のテクノロジーを想像するとき、大型の機器や複雑な製造プロセスを想像します。一見する限りでは、それらは日常生活とは縁のないものです。一方、リアルタイム制御機能を使用する場合、システムは規定の時間内にデータを収集し、それらを処理した後、自らの動作を更新することができます。スマート センシング機能は人々や機器を検出することができ、エッジ AI (人工知能) は、迅速かつより効果的に決定を下します。私たちが目を覚ました瞬間から就寝するまで、製造から流通に至るまで多様な分野の舞台裏で動作しているこれらのテクノロジーは、超人的な業務を物静かに実行し、私たちの住む世界を継続的かつ円滑に機能させています。

産業用アプリケーションで使用されている各種テクノロジーは、スマートフォンなどと同様、私たちの日常生活にとって不可欠かつ有益です。それらのテクノロジーは、時間の節減と利便性の向上に貢献し、私たちの家庭やインフラの安全性向上に寄与するほか、持続可能な生活の推進に役立ちます。

私たちの生活を向上させるこれら 3 種類の主な利点について、それらの目標を達成するためにテクノロジーがどのように連携しているかを解説します。 

日常生活の利便性向上 

産業用アプリケーションは利便性を変化させています。以前は店舗まで足を運んでいた買い物は、ほんの数クリックで済むオンライン注文に変わりました。リビング ルームの最適な温度設定のような意思決定は、そのことについて考える前に自動的に実施されています。スマート センシングやエッジ AI のようなテクノロジーは、たとえ直ちに目に見えるものではないとしても、私たちの生活にとってますます不可欠なものになってきています。

皆さんがオンライン注文を確定した時点で、注文履行センターで活動している移動型ロボットは棚にある物品を数分以内に突き止め、即日配送できるように準備を進めます。これらのロボットは従業員と連携して動作することができ、非常に反復性の高い業務を取り扱います。安全性、認識、ナビゲーションに関する高度なテクノロジーが原動力になり、これらのロボットは非常に優れた精度とインテリジェンスで動作することができます。

スマート センシング テクノロジーは、私たちの家庭をいっそう快適にします。最新の半導体温度センサを採用したサーモスタットは現在、0.1℃ の精度で温度を追跡することができ、利便性向上につながる、新しい可能性の扉が開きます。ミリ波 (mmWave) テクノロジーを使用すると、サーモスタットは誰かが家庭内にいるかどうかを検出し、エネルギー効率と快適さのバランスを維持できるように温度を自動的に調整することができます。加えて、ミリ波テクノロジーを採用した HVAC (エアコン) システムは、人のいる場所や、室内での移動状況を検出できます。その結果、このシステムは高精度で人に向かって直接送風し、冷却機能を動的に調整して非常に快適な環境を作り出すことができます。

少し先の時代を予測すると、ヒューマノイド (ヒト型) ロボットが掃除や他の雑用を引き受け、私たちの家庭に新しい水準の利便性をもたらす可能性があります。これらのロボットは、インテリジェントな方法で身の回りの状況に対応し、必要に応じて適応と最適化を進めます。これらの革新が進化するにつれ、私たちの日常的な活動は確実にシンプルになり、よりスマートな世界の実現に役立ちます。

毎日の安全性の革新

産業用アプリケーションは、安全性の向上という分野でも重要な役割を演じています。多くの場合、私たちがその動作方法を直ちに認識することはありません。エッジ AI やリアルタイム制御のようなテクノロジーは、私たちのプライバシーを侵害せずに、私たちの家庭や家族を監視することができます。

流通センターや倉庫で、ロボットによる自動化やエッジ AI に対応した安全性システムは、危険をもたらす可能性のある業務を実行し、労働者を保護します。ある推定によると、2019 年に世界各地で 3 億 9,500 万人の労働者が労働に関連する怪我をしました。一方、リアルタイム制御システムと各種センサを搭載したロボットは、制限領域内で人を検出したときに動作を直ちに停止するようプログラム済みであり、労働に関連する怪我のリスクをある程度低減できます。

建造物内の安全性に関する分野で、産業用テクノロジーはスマート HVAC (エアコン) システムの開発を主導してきました。これらのシステムは送風、温度、湿度をリアルタイム制御し、健康的な屋内環境を維持します (熱中症などの防止)。機械学習とエッジ AI を統合した HVAC システムは、振動、温度、音響信号 (ノイズなど) を対象にして、モーター駆動のベアリングを継続的に監視します。この予防保守関連の動作は、予期しない故障を防止し、モーターの寿命を延長すると同時に、労働者にとって快適かつ安全な職場環境の実現に貢献します。

ソーラー エネルギー システムでは、配線の損傷、ゆるんだ接続、気象に関連する屋外部品の摩耗が原因で、アーク障害 (火災のリスクが生じる可能性がある大電流) が発生することがあります。アーク障害検出テクノロジーを搭載したソーラー インバータは、電気回路を継続的に監視し、アーク障害の前兆を示している可能性のある危険なパターンを回路内で識別できます。高度なセンサとマイクロプロセッサを搭載し、エッジ AI テクノロジーを内蔵した場合、通常範囲の電力の変動と、危険なアーク放電を高精度で区別できます。障害を検出した場合、システムは直ちに電力供給を停止し、電気回路を遮断して、その障害が火災にまで拡大する事態を防止します。

これらのどの分野でも、産業用アプリケーションとそれらの採用テクノロジーは主に舞台裏で動作しますが、より安全な生活環境の実現に大きく貢献します。インフラの整合性の管理から、家庭のセキュリティ対応に至るまで、これらのテクノロジーは階層型の安全性を実現します。これらは私たちの日常的な環境の奥深くに組み込まれており、現在の生活の利便性と安全性の向上に貢献しています。

持続可能性の向上

私たちの未来の持続可能性が向上するにつれて、太陽光発電やエネルギー ストレージ システムのような再生可能エネルギー ソリューションは、日常的なエネルギー コストの削減と、家庭における二酸化炭素排出量の低減にとって不可欠なものになります。日常的な移動に電気自動車 (EV) を使用することも該当します。家庭、企業全般、エネルギー企業が、エネルギーの活用、変換、送電を効果的に進めようと努力する過程で、電力変換のピーク効率やスマート エネルギー管理を達成するのは、引き続き複雑な課題のままにとどまります。いっそうの効率向上という要件は、リアルタイム制御やワイド バンドギャップ半導体などテクノロジーの継続的な刷新を進める原動力になります。

GaN (窒化ガリウム) のようなワイド バンドギャップ半導体は、次世代のパワー スイッチを代表しています。高電圧、高温、高周波の環境で効率的に動作できる GaN 半導体の能力は、電力変換のいっそうの効率向上や、スイッチング損失の最小化に寄与します。スイッチング損失とは、スイッチがブロック状態 (接続オフ) と導通状態 (接続オン) の間で切り替わるときに生じるエネルギー損失です。

TI の GaN IC を TI の C2000™ リアルタイム マイコンと組み合わせると、ソーラー インバータやエネルギー ストレージ システムをピーク効率で動作させ、スイッチング損失を低減し、より大きい電力を供給することができます。この組み合わせは、グリッド (商用電力網) の電力への依存度低減に加え、電力コストの削減や、私たちの日常的な生活への再生可能エネルギーの円滑な統合にも貢献します。

現在の生活を支える物静かなヒーロー

これらのテクノロジーは常に脚光を浴びるとは限りませんが、私たちはそれらがもたらす快適さや安全を毎日享受しています。いくつかのアプリケーションはテクノロジーを単体で使用しているのに対し、私たちが日常的に使用する製品はこれらのテクノロジーを組み合わせて継続的に動作し、エネルギー使用量の最適化や、私たちが活用しているインフラの強化などに貢献しています。持続可能性、効率、安全性がより優れた未来を目指して私たちが働く過程で、産業用アプリケーション内のテクノロジーは、前線にとどまり、私たちの日常生活を物静かに強化しています。

TI のシステム / エンジニアリング マーケティング ディレクターを務める Ryan Wang がこのブログ記事を執筆しました。

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