エッジ AI が日常生活を改善する方法
エッジ AI の採用により、組み込みデバイスはセンサのデータをより効率的に使用し、私たちの日常生活を改善することができます
私たちは毎日の生活でさまざまな製品を使用しています。家を冷やすエアコンや、移動するための自動車、エネルギーを発電するためのソーラー パネルなどが該当します。ところで、これらの製品は私たちの生活にとって不可欠ですが、製品が単純に生活の一部であることに加え、改良を通じて、生活の利便性や快適さが向上するとしたらどうでしょうか?HVAC (エアコン) システムが十分にスマート対応すると、フィルタの交換時期を自動的に通知してくるほか、動作効率がいっそう向上し、夏の期間中、涼しい状態を維持することができます。
多様なアプリケーションは、ニューラル ネットワークをベースとするエッジ AI (人工知能) を採用し、さまざまな事象が発生する場所、つまりエッジで製品を取り巻く状況を理解して動作を改善し、ユーザーの快適さの改善を進めています。エンジニアは、設計やデータの活用を通じてニューラル ネットワーク アルゴリズムをトレーニングし、組み込みデバイスはこれらのアルゴリズムを活用して問題を解決することができます。私たちが日常的に使用するアプリケーションにエッジ AI を導入すると、生活がしやすくなり、毎日使用している製品の使いやすさ、安全性、持続性がいっそう向上します。
現在、多くの人が「スマート」デバイスという言葉から連想するのは、一般的にはワイヤレス接続を活用し、意思決定を進めるためにデータをクラウドに保存する機器のことです。ただし、コネクテッド (ネットワーク接続型) デバイスは必ずしもインテリジェントとは限りません。エッジ AI はデータ ソース (発生源) の近くにコンピューティング能力を配置します。つまり、クラウドではなくデバイス上つまりローカルで意思決定を下すことができます。その結果、レイテンシの短縮、電力効率の向上、堅牢性とデータ セキュリティの向上を実現し、より迅速な意思決定に結び付けることができます。
スマート ホーム向けセキュリティ カメラについて考えてみましょう。裏庭にある物体が猫なのか見知らぬ人なのかを判定しようとする場合、クラウド AI を使用すると、決定を下すために、そのデータをクラウドに送信し、処理した後、データを送り返す必要が生じます。これらの操作は時間を要するうえ、より多くの電力が必要になります。一方、エッジで意思決定を下す場合、高集積の組込みデバイスはニューラル ネットワークをローカルで実行します。その結果、必要な電力は少なくて済み、セキュリティとプライバシーを向上させることができます。
エッジ AI を活用し、未来への対応能力を確保
エッジ AI には、私たちがエレクトロニクスを対話型操作する方法を変革する潜在能力があり、応答性の向上、効率的な動作、セキュリティの向上に貢献します。データの収集領域に近い場所で AI アルゴリズムをローカル実行すると、より迅速に意思決定を下すことができます。この理由で、エッジで意思決定を下すと、救命に役立つ可能性があります。現在、エレクトロニクスはローカルで対応することができ、クラウド ベースのリソースは必須ではありません。私たちが運転しているとき、ビジョン プロセッサはレーダー検出テクノロジーを使用して周囲を継続的に監視し、障害物を検出したときに迅速に自動車のシステム意思決定を下して、言い換えると自律性を向上させる方向で自動車を支援します。
ファクトリ (工場) では、エッジ AI を使用してモーターの障害を検出することができます。システム全体の損傷を引き起こす前にモーター内の障害を捕捉し、そのうえ予防保守の必要性を示すパターンを識別すると、信頼性と効率性の向上に役立つ、コスト効率の優れた運用につながる可能性があります。
エッジ AI 機能が進化し、エッジ AI を採用したアプリケーションのスマート化とコネクテッド (ネットワーク接続) 強化が進むにつれて、いっそう的確に私たちのライフスタイルに適応できるようになります。たとえば、エアコンがレーダーを使用すると、家庭内のどこに人がいるかを検出し、その場所へ向かう空気の流れを最適化する方法で、住宅のエネルギー効率をいっそう向上させることができます。またはレーダー センシングを使用して、リビング ルームに人が立ち入ったときにテレビのオンとオフを切り替えることもできます。
エッジ AI がより迅速かつ効率的に意思決定を下すと、私たちは持っているリソースをより的確に活用し、よりスマートな意思決定を下すことができます。エッジ AI を搭載したソーラー パネルは、障害検出機能を活用して、安全性の向上、電力サージの検出、危険な状況でも発火する前のシステムのシャットダウンを通じて、再生可能エネルギー源の増加につなげることができます。エッジ AI は、私たち人間の意思決定を補完し、私たちが使用するシステムの安全性維持や効率向上を支援すると同時に、より持続可能な未来の推進にもつながります。
インテリジェンスの向上に役立つリソース
エッジ AI を採用するアプリケーションが増加している現状で筆者が望んでいるのは、AI に関する専門知識や経験にかかわりなく、すべてのエンジニアが容易に採用でき、アクセスしやすい AI を実現することです。筆者の業務は、お客様が必要とするソフトウェアやハードウェアのツールを提供するチームを指揮することです。TI は、オープン ソース形式で使いやすいソフトウェアに取り組んでいます。その考え方を土台として、設計者がデータを活用し、開発中のシステムに有意義なインテリジェンスを追加できるように、TI は設計者を支援しています。
TI は、エレクトロニクス製品をより手ごろな価格で購入できるようにする方法で、半導体は世界の改善に貢献すると確信しています。この情熱は目新しいものではありません。TI は、50 年近くにわたってデジタル信号処理テクノロジーに携わってきました。当初は効率的な数学関数を実行して音声を取り扱っていましたが、複雑さが増大を続ける中で、より大きな問題にも対応できるようになってきました。TI は信号処理分野における経験を活かして製品ラインアップを拡充し、エッジ AI アプリケーションに適したスケーラブルなハードウェア デバイスを取り揃え、必要な処理能力がどのような規模であっても、革新を実現できるようにお客様を支援してきました。TI はまた、組込みプロセッサの統合レベルを高め、より手ごろな価格設定を推進してきました。TI のお客様は、エッジ AI を簡単に採用し、本当にインテリジェントなアプリケーションを実現することができます。TI はエッジ AI のさまざまな要素に貢献してきました。これらすべては、迅速かつ効率的な意思決定の実現と、世界の安全性や持続性の向上に役立ちます。
テクノロジーの進歩に伴って、各種アプリケーションでのエッジ AI 採用は増加を続ける見込みです。ここ数年、私たちはシステムのいっそうの洗練度上昇を目にしてきました。TI はその流れの推進を支援しています。筆者が期待しているのは、エッジ AI が私たちの生活向上を補完し、意思決定を容易にする新しい方法を明らかにすることです。
50 年前に私たちはどのような状況だったのか、また現在はどのような状況になっているかを考えると、現在の革新を活用して、未来のエッジ AI をどのように推進できるか想像するのは楽しいことです。
このブログを執筆した Amichai Ron は、TI の組込みプロセッシング担当シニア バイス プレジデントを務めています。