ソフトウェアで定義される未来:ソフトウェアを優先するアプローチの重要性
ソフトウェアの柔軟性、相互運用性、標準化で未来のイノベーションを実現する方法
私たちは日々のさまざまな瞬間に、何百、ときには何千ものスマート組み込みデバイスとやり取りします。家電のカスタマイズ、安全運転の向上、工場の自動化におけるスムーズな運用など、組み込み技術は私たちの生活を快適にし、生産性を高め、エネルギーの持続可能性にも貢献しています。
TI は組み込み技術向けハードウェア開発のリーダーであり、何十年にもわたりソフトウェアによる革新を重視してきました。汎用マイクロプロセッサ製品ライン マネージャーの Artem Aginskiy は、次のように語っています。「ソフトウェアは半導体の活用を可能にする重要な要素です。ソフトウェアの包括的かつ柔軟な特性は、お客様の課題解決とイノベーションを支援します」。
ソフトウェアの適応力により、エンジニアは完成したハードウェア製品においても新機能の追加や作成が可能になります。企業にとっては、ソフトウェアを優先するアプローチへの転換がますます重要になっています。これは、製品の設計や製造において、ソフトウェアへの投資の価値が高まることを意味します。このアプローチには、スケーラビリティの確保、よりスマートな設計、開発と使用の容易さが求められます。しかし、ソフトウェア優先のアプローチへの転換は、設計エンジニアや半導体企業にとって何を意味するのでしょうか?
柔軟性と、差別化要素としてのソフトウェアの台頭
システムを動かすにはハードウェアとソフトウェアの両方が必要ですが、基本的には、ハードウェアは静的なものです。一度ハードウェアが実装されると、通常はそのままで、更新や変更はできません。一方、ソフトウェアは動的であるため、アプリケーションの機能を拡張できます。Artem は言います。「1 つのチップ内での統合が進んでいます。以前は 1 つの機能を実行していたものが、今では何百もの機能に対応するようになっています」。ソフトウェアは製品の差別化につながる重要な要素となりました。TI は、高品質で信頼性の高いソフトウェアを開発できる、使いやすいプラットフォームとツールを提供しています。
例えば、ソフトウェア デファインド ビークル (SDV:ソフトウェア定義の自動車) では、自動運転からインフォテインメントまで、車のすべての機能をソフトウェアが制御します。さらに、ソフトウェア アルゴリズムの改善により、EV 充電や個人向け電子機器などのバッテリ駆動アプリケーションのエネルギー効率が向上しました。ロボット アームのような最終製品は、最初は特定の作業のみにプログラムされていますが、後から無線アップデートによって複数の作業に適応できるようになります。
ソフトウェアはさまざまな業界のイノベーションを加速させています。その普及を促進することは重要ですが、課題も伴います。
オープンソースと標準化
ソフトウェアは数百もの開発者やベンダーによって提供されるため、相互運用性が大きな課題となります。TI では、この課題に対応するためにオープンソース ソフトウェアを活用しています。
オープンソース ソフトウェアでは、コードが公開されており、誰でも追加や変更が可能です。多くの開発者が検証し、改善に取り組み、製品に統合することで、ソフトウェアの信頼性と相互運用性が向上します。そのため、仕様が異なる製品同士でも、同じコミュニティのソフトウェアを使用することで連携が可能になります。オープンソース ソフトウェアは、初回リリースから数年後でも修正や更新ができるため、保守性が高く、柔軟性や拡張性にも優れています。
オープンソースの高いアクセス性は、透明性を向上させ、ソフトウェアの大規模な普及を促進します。これにより、エコシステムが拡大し、新規参入が容易になり、業界へ進出するハードルが下がります。
プラットフォーム ソフトウェアの R&D エンジニアリング マネージャーである Yashwant Dutt は、次のように語っています。「統一された協調的なアプローチは、標準化において非常に重要です。多くのワイヤレス通信規格は、オープンソースを通じて開発されてきました」。
接続性の進化に伴い、より多様なデバイス同士がさらに高度な方法で通信する必要性が高まっており、通信規格の重要性が増しています。コネクティビティ事業部マネージャーの Marian Kost は、次のように述べています。「センサは、周囲の複数のデバイスだけでなく、クラウドとも通信する必要があります。インターフェースが重要な標準に準拠していなければ、それを実現するのは困難です。Wi-Fi®、Bluetooth®、Matter などの主要な通信プロトコルや規格において、TI は標準に準拠するだけでなく、それらの定義に積極的に関与するパートナーとしても活動しています。TI のソフトウェアは、新しい規格や既存の規格の発展に伴い、常に進化を続けています」。
ソフトウェアによる標準化の一例として、スマートハウスでの Matter の採用があり、異なるデバイスや製品間の相互運用性を実現しています。例えば、ある企業が販売する音声アシスタントが、別の企業のスマート サーモスタットと連携し、制御することが可能になります。
しかし、ソフトウェアの動的な特性は、相互接続されたデバイスをセキュリティ侵害のリスクにさらすこともあります。TI は、安全な通信を維持しながら正確で安全なデータ保存を可能にするために、セキュア ブートや高効率の統合型暗号アクセラレータなどのインフラを構築しています。
未来のイノベーションを支えるソフトウェアを活用
組み込み開発の要求は今後さらに高まっていきます。その要因の 1 つが、より多くのアプリケーションで人工知能 (AI) が活用されるようになっていることです。ソフトウェアは、より高度な機能を統合しながら、開発のしやすさとセキュリティの確保を両立する必要があります。Yashwant は言います。「私たちは、TI のソフトウェア ツールとプラットフォームが、先進運転支援システム (ADAS) のような新しく強力なアプリケーションに対応できるよう準備を進めています」。
ソフトウェアは、エッジ コンピューティングの重要性が増している中で、その特定の要求にも対応する必要があります。
TI は 30 年以上にわたり、充実した機能を備えたオープンソースのソフトウェア開発プラットフォームを提供し、お客様が革新的で高機能なアプリケーションを迅速に構築できるよう支援してきました。
また、幅広いパートナーシップのエコシステムも築いています。アプリケーションやツールの開発においてパートナーと緊密に連携することで、多様な専門知識を活用し、その恩恵も受けながら、技術革新の加速と向上に貢献していくことができます。Artem は言います。「私たちは、パートナーやお客様とともに課題を解決することに力を尽くします。TI は積極的な参加者、そして貢献者として、このエコシステムをさらに発展させていきます」。
新しい機能、新しいアプリケーション、新しい技術が次々と生まれる中、ソフトウェアの革新は今後も続いていきます。「ソフトウェアは常に進化し続け、それは私たちも同じです」と Artem は言います。TI は、ソフトウェアが牽引する次世代技術の進化に向けてパートナーを支援し、未来のイノベーションを推進していきます。