JAJSH86G April   2019  – November 2023 TMP61-Q1

PRODUCTION DATA  

  1.   1
  2. 特長
  3. アプリケーション
  4. 概要
  5. デバイスの比較
  6. ピン構成および機能
  7. 仕様
    1. 6.1 絶対最大定格
    2. 6.2 ESD 定格
    3. 6.3 推奨動作条件
    4. 6.4 熱に関する情報
    5. 6.5 電気的特性
    6. 6.6 代表的特性
  8. 詳細説明
    1. 7.1 概要
    2. 7.2 機能ブロック図
    3. 7.3 機能説明
      1. 7.3.1 TMP61-Q1 の R-T 表
      2. 7.3.2 線形抵抗曲線
      3. 7.3.3 正温度係数 (PTC)
      4. 7.3.4 内蔵フェイルセーフ
    4. 7.4 デバイスの機能モード
  9. アプリケーションと実装
    1. 8.1 アプリケーション情報
    2. 8.2 AEC-Q200 認定
    3. 8.3 代表的なアプリケーション
      1. 8.3.1 サーミスタ・バイアス回路
        1. 8.3.1.1 設計要件
        2. 8.3.1.2 詳細な設計手順
          1. 8.3.1.2.1 コンパレータを使用した過熱保護
          2. 8.3.1.2.2 サーマル・フォールドバック
        3. 8.3.1.3 アプリケーション曲線
    4. 8.4 電源に関する推奨事項
    5. 8.5 レイアウト
      1. 8.5.1 レイアウトのガイドライン
      2. 8.5.2 レイアウト例
  10. デバイスおよびドキュメントのサポート
    1. 9.1 ドキュメントのサポート
      1. 9.1.1 関連資料
    2. 9.2 ドキュメントの更新通知を受け取る方法
    3. 9.3 サポート・リソース
    4. 9.4 商標
    5. 9.5 用語集
    6. 9.6 静電気放電に関する注意事項
  11. 10改訂履歴
  12. 11メカニカル、パッケージ、および注文情報

パッケージ・オプション

メカニカル・データ(パッケージ|ピン)
サーマルパッド・メカニカル・データ
発注情報

詳細な設計手順

抵抗分圧器方式では、バイアス電圧 (VBIAS) に応じて出力電圧 (VTEMP) が変化します。VBIAS を ADC の基準電圧としても使用することで、電源電圧に起因する変動または誤差が相殺されるようになり、温度の精度に対する影響をなくせます (図 8-5 を参照)。式 2 を使って、TMP61-Q1 の可変抵抗 (RTMP61) とバイアス抵抗 (RBIAS) に基づく出力電圧 (VTEMP) を計算します。式 3 を使って、 その出力電圧、ADC のフルスケール範囲、ADC の分解能に対応する ADC コードを計算します。

GUID-82B723E0-8688-4806-854C-74A384E4CDCD-low.jpg図 8-5 ADC を使用した TMP61-Q1 分圧器
式 2. GUID-4D80FC8C-053E-4234-96EA-4AB28AD8F481-low.gif
式 3. GUID-CFC5FDCB-7206-400B-9AC5-7857214CDD29-low.gif

ここで、

  • FSR は ADC のフルスケール範囲 (GND に対する REF の電圧 (VREF)) です。
  • n は ADC の分解能を表します。

式 4 は、VREF = VBIAS の場合、VBIAS が相殺されることを示しています。

式 4. GUID-528FE569-8DA1-4F25-8CE0-D77096B24050-low.gif

多項式または LUT を用いて、マイクロコントローラで読み取った ADC コードに基づく温度測定値を抽出します。サーミスタ設計ツールを使用して、TMP61-Q1 の抵抗値を温度に変換します。

VBIAS の相殺は、分圧器を使用すること (レシオメトリック方式) の 1 つの利点ですが、分圧器の出力電圧感度の向上は限定的です。したがって、この電圧出力範囲は FSR に比べて狭くなり、この設計の応用回路では全範囲の ADC コードを使用できません。ただし、実装が簡単なこの応用回路は、非常に多く使用されています。

図 8-6 に示すような電流源を使用した回路は、出力電圧の感度の制御性が優れており、より高い精度を達成できます。この場合の出力電圧は、単純に V = I×R で算出できます。たとえば、本デバイスに 40μA の電流源を接続した場合、出力電圧の変動幅は約 5.5V になり、ゲインは最大 40mV/℃ になります。電圧範囲と感度を制御できるため、ADC コードの全範囲をフルスケールで活用できます。図 8-7 に、各種バイアス電流条件での温度電圧を示します。レシオメトリック方式と同様に、ADC の基準電圧と同じバイアスを共有する電流源を ADC が内蔵している場合、電源電流の誤差を相殺できます。この場合、高精度の ADC は不要です。この方式はもっとも高い精度をもたらしますが、システム実装コストが高くなる可能性があります。

GUID-CE107377-EE7D-41FF-BF00-6B137710F011-low.jpg図 8-6 電流源を使用した TMP61-Q1 のバイアス回路
GUID-195E979D-D0EA-4693-8A24-7D8D1724070A-low.gif図 8-7 さまざまな電流源を使用した TMP61-Q1 の温度電圧

分圧器構成のノンリニア NTC サーミスタと比べ、TMP61-Q1 は優れた線形出力特性を備えています。図 8-8 に、線形化並列抵抗 RP を使用した場合と使用しない場合の 2 つの分圧器回路を示します。VBIAS = 5V、RBIAS = 100kΩ とし、追加の 100kΩ の並列抵抗 (RP) を NTC サーミスタ (RNTC) と組み合わせて出力電圧を線形化する例を検討します。図 8-9 に、分圧器の出力特性を示します。NTC の曲線が狭い温度範囲のみで線形であるのに対して、本デバイスは全温度範囲にわたって線形性の高い曲線を描きます。NTC 回路に並列抵抗 (RP) を追加した場合、曲線の線形性ははるかに改善されますが、出力電圧範囲に大きな影響を与えます。

GUID-9B32E164-A44B-40EA-A006-D6D127248A75-low.jpg図 8-8 TMP61-Q1 と NTC (線形化抵抗 (RP) を使用) の分圧器回路の比較
GUID-222BC186-CD65-4600-B409-97B316472CD7-low.gif図 8-9 NTC (線形化抵抗あり / なし) と TMP61-Q1 の温度電圧の比較