JAJT305 February   2024 LM5143A-Q1

 

  1.   1
  2.   2
    1.     3
    2.     関連記事

Josh Mandelcorn

車内に搭載される電子機器の大半は、強制空冷を使用せずに、最高 85℃ で動作する必要があります。製品認定では、たとえ最高周囲温度であっても、基板上の部品やトレースが高温になりすぎていないことを示す必要があります。既存の温度上昇テスト方法では熱電対を使用していますが、このやり方は時間がかかり、潜在的ホット スポットを見逃してしまう可能性があります。サーマル カメラはこのような見逃しホット スポットを検出するため、室温テストのベスト プラクティスになっています。室温テストでは、高温環境で初めて明らかになる加熱効果を見逃す可能性があります。

ただし、ほとんどのサーマル カメラは破損することなく 70℃以上に耐えることはできないため、85℃のチャンバーにサーマル カメラを挿入することはお勧めできません。また、サーマル チャンバーの前面ガラス面によって対象デバイスの熱画像が歪むため、前面ガラス越しにサーマル カメラを向けることもできません。

ここで提案する解決策は、対流式サーマル チャンバーを使用した電子機器のテストです。この際、チャンバーのドアを開け、前面を段ボールとテープで覆い、サーマル カメラが鮮明な熱画像を撮影できるように小さな開口部だけを残します。熱電対は、85℃の周囲温度に達したことを確認するために、チャンバー内でテスト対象基板のすぐ近くに配置します。サーマル カメラ用の小さな開口部がこの配置を邪魔することはなく、実際の画像を撮影する際にはカメラをチャンバーの外に配置することができます。

古いサーマル チャンバーでは、下に過熱コイルがあるだけで、ファンはなく、熱輸送は対流気流のみというものでした (図 1 を参照)。さらに、搭載されていたオーブンには、フロント ドアを開けるとコイルが遮断されるインターロックがありませんでした。新しいオーブンを使用し、ファンの接続を外してインターロックを解除することも考えられますが、メーカーの保証が無効になるため推奨できません。

GUID-32422F8E-BDF9-4097-BDAD-9EE4D926821E-low.png図 1 サーマル チャンバーとバッフルのセットアップ

テスト対象の基板の左側には、車載バッテリの代わりとして外部ラボ電源からの 14V 入力電源ワイヤがあります。基板の右側には、チャンバー内の抵抗に接続された負荷があり、920mV 出力が 22A で負荷されます。熱電対と出力電圧センス (正と負) を測定するために 3 本の監視用ワイヤがあるのがわかります。これらは、温度 (Tektronix TX3) と出力電圧 (Fluke 87 III) を監視するマルチメータに接続されています。

Blue M DV-12A (Gravity Oven) サーマル チャンバーは、前面開口部 12 × 12 インチ (奥行き 12.5 インチ) のものを使用し、テスト中はバッフル (図 1 を参照) で覆いました。同様のオーブンは一般に数百ドル台で市販されています。バッフルの四角穴は、外部サーマル カメラ (FLIR E75) がテスト対象の基板上の最も高温の部分に焦点を合わせられるように配置されています。

基板はテスト中ほぼ 2A の 14V 電源が供給され、チャンバー開口部にはバッフル カバーが取り付けられました。サーマル チャンバー コイルの電源を入れて、熱電対の設定温度を 85~87℃に調整しました。全体の動作時間は約 30 分で、5 分間隔で 3 枚の熱画像を撮影し、実際に熱安定に達したことを確認しました。この熱安定を確認するために、ラボ電源からの入力電流の監視も行いました。温度が上昇するとコンバータの導通損失が増加することに起因して、予想どおり、動作中に電流消費が約 1% 増加しました。図 2 に最終的な熱画像を示します。

GUID-8ADEADC2-41A9-4A82-A8EE-F30C3B6B93B2-low.png図 2 最終的な熱画像は終了時点で最高温度 131℃を示しています。FET の右側にある緑色の熱電対の画像に注目してください。

動作中に監視された出力電圧は 919mV にとどまりました。最後の 15〜20 分間はサーマル チャンバー コイルのオンとオフが繰り返されたため、熱電対の測定値は 85~88℃の間で変動しました。同じ最高温度で 9 分間の熱画像を繰り返し撮影したところ、熱安定が達成されたことが確認されました。

周囲温度監視を確認するため、2 つの熱電対 (1 つは 図 2‌、もう 1 つは基板の少し下) を使用して周囲を監視しました。どちらの測定値も 1℃以内の誤差でした。追加の確認として、最も高温の FET に熱電対を接着して測定を繰り返したところ、最高温度はサーマル カメラが検知した温度より 4~5℃低くなりました。このことからも、サーマル カメラは熱電対が見逃したホット スポットを検出できることがかります。

全体として、車載アプリケーション向けの高周囲温度の確認をより徹底的に、(サーマル カメラが既に利用可能であると仮定した場合) 中程度の追加コストで実現できることが実証されました。この方法では、これまでの方法で見逃していた熱暴走の状況を検出することができます。使用済みの対流式オーブンを購入する必要がある場合、既に熱電対が取り付けられているため、熱電対を接着する作業にかかるコストを節約することができます。