| 入力 |
ADC 入力 |
デジタル出力 ADS7042 |
| VinDiffMin = –20V |
CH_x = +10V |
7FFFH または 3276710 |
| VinDiffMax = +20V |
CH_x = –10V |
8000H または 3276810 |
| 電源 |
| AVDD |
DVDD |
VCC (HVDD) |
VSS (HVSS) |
| 5.0 V |
3.3 V |
+15 V |
-15 V |
設計の説明
この設計は、高電圧 SAR ADC を駆動して高電圧完全差動信号のデータ収集を実現する設計であり、アンプの電源と入力振幅信号に応じて広い同相電圧範囲をサポートします。一般的な高電圧高精度アンプが差動からシングルエンドへの変換を実行し、最高スループットで±10Vの高電圧SAR ADCシングルエンド入力を駆動します。このようなアプリケーションは、多機能リレー、AC アナログ入力モジュール、鉄道輸送用制御ユニットといった最終機器において一般的です。「部品選定」の値を調整して、さまざまなレベルの差動入力信号、さまざまな ADC データ スループット レート、さまざまな帯域幅のアンプに対応できます。
仕様
| 仕様 |
OPA827計算結果 |
OPA827シミュレーション結果 |
OPA192計算結果 |
OPA192シミュレーション結果 |
| 同相入力電圧範囲(Vdif = ±20V) |
±26V |
±26 V |
±35 V |
±35 V |
| ADC過渡入力電圧セトリング誤差 |
< 1/2LSB (< 152µV) |
0.002 LSB (0.568µV) |
< 1/2LSB (< 152µV) |
0.006 LSB (1.86µV) |
| ドライバの位相マージン |
> 45° |
67.1° |
> 45° |
68.6° |
| ADC 入力でのノイズ |
14.128µVrms |
15.88µVrms |
5.699µVrms |
6.44µVrms |
デザイン ノート
- 差動入力信号レベル、ADCの入力電圧範囲の設定に基づいて、アンプのゲインを特定します。これについては「部品選定」で説明します。
- 同相電圧、入力振幅、電源に基づいて、アンプの線形範囲を特定します。これについては「部品選定」で説明します。
- この設計回路では、入力信号の同相電圧を VInputCM の範囲で任意の値にできます。この範囲の求め方は、OPA827 および OPA192 の「部品選定」に記載します。
- 歪みを最小限に抑えるために、COGコンデンサを選定します。
- 適切な精度と低ゲイン ドリフトを実現し、歪みを最小限に抑えるために、0.1% 20ppm/℃以下の薄膜抵抗を使用します。ゲイン、オフセット、ドリフト、およびノイズの誤差を最小限に抑える方法については、『Statistics Behind Error Analysis』を参照してください。
- 最高水準のセトリングと AC 性能を実現する Rfilt と Cfilt の選定方法については、『Introduction to SAR ADC Front-End Component Selection』を参照してください。これらの部品の値はアンプの帯域幅、データ コンバータのサンプリング レート、データ コンバータの設計に依存します。ここに示す値は、この例のアンプとデータ コンバータで適切なセトリングと AC 性能を実現します。設計を変更する場合は、別の RC フィルタを選択します。
部品選定
- 差動入力信号とADCの全入力電圧範囲に基づいてゲインを求めます。
- 差動ゲインに応じて標準抵抗値を求めます。アナログ技術者向けカリキュレータ(「Amplifier and Comparator\Find Amplifier Gain」) を使用して Rf/Rg 比の標準値を求めます。
- 線形動作に対応するアンプの最大 / 最小入力電圧 (すなわちアンプの同相電圧範囲 Vcm_amp) を求めます。この例では、OPA827を使用します。
- アンプの入力電圧範囲と上記の設定に基づいて、最大同相電圧範囲を計算します。Vcm_opa、VInputCM、Vdif と回路の関係をよく理解するには、p.1 の回路図を参照してください。
- アンプの入力同相電圧範囲 VInputCM の式を解きます。この例(OPA827)では、差動入力電圧±20Vで同相入力電圧範囲は±26Vになります。同じ方法をOPA192に用いると、差動入力電圧±20Vで同相電圧範囲は±35Vになります。この同相電圧範囲を超えると、信号に歪みが生じます。なお、この同相電圧範囲は±15V電源を採用して計算しました。同相電圧範囲は、電源電圧範囲を広げることによって (最大 ±18V) 拡大できます。
- 希望の閉ループ帯域幅を実現する Cf 値を求めます。この例では、10kHz の帯域幅が必要になります。なお、閉ループ帯域幅はセトリングに影響するため、帯域幅を調整する場合には、電荷バケツ フィルタの設定 (Cfilt と Rfilt) を確認する必要があります。
- TINA SPICE と『Introduction to SAR ADC Front-End Component Selection』に記載する方法により、Cfilt と Rfilt の値を求めます。本書に示す Rfilt と Cfilt の値はこれらの回路では機能しますが、異なるアンプや異なるゲイン設定を採用する場合は、TINA SPICE を使用して新たに値を求める必要があります。
AC 伝達特性
帯域幅のシミュレーション結果は 10.58kHz であり、ゲインは -6.038dB (線形ゲインは 0.5V/V) です。この件の詳細については、『Op Amps: Bandwidth 1』ビデオを参照してください。
高サンプリング レート (ADS8568+OPA827 で 510ksps) での ADC 過渡入力電圧セトリング シミュレーション
以下のシミュレーションは、OPA827 による 20V DC 入力信号のセトリングを示しています。このようなシミュレーションは、LSBの1/2 (152µV)以内になるようにサンプル/ホールド キックバック回路が適正に選定されていることを示します。この件の詳しい理論については、『Introduction to SAR ADC Front-End Component Selection』を参照してください。
低サンプリング レート (ADS8568+OPA192 で 200ksps) での ADC 過渡入力電圧セトリング シミュレーション
以下のシミュレーションは、OPA192 による 20V DC 入力信号のセトリングを示しています。このようなシミュレーションは、LSBの1/2 (152µV)以内になるようにサンプル/ホールド キックバック回路が適正に選定されていることを示します。
ノイズ計算
ここでは、抵抗ノイズを含む全ノイズ解析を行います。また、fc を下回るノイズ (ノイズ ゲイン=1.5) と fc を上回るノイズ (ノイズ ゲイン=1) に着目します。この例では、広帯域アンプのノイズが支配的であることから、抵抗はさほど影響しません。しかし多くの場合、抵抗ノイズは重要であるため、全ノイズ計算を行います。この件の詳しい理論については、『Calculating the Total Noise for ADC Systems』および『Op Amps: Noise 1』を参照してください。
帰還ループの帯域幅:
OPA827 のノイズ:3.8nV/rtHz
帰還ループ (Rf1 と Rg1) および RC 非反転入力 (Rf2 と Rg2) の熱ノイズ密度
非反転入力の抵抗のノイズは、帰還抵抗のノイズと同じです。
アンプの出力を基準とした総ノイズ(ゲイン):
fcを上回るノイズは出力フィルタ(下記カットオフ)によって制限されます。
ADCの入力に印加される総ノイズ:
ノイズ シミュレーション
シミュレーション結果は計算結果とほぼ一致しています(シミュレーション結果=15.88µVrms、計算結果=14.128µVrms)。
安定性シミュレーション
回路を駆動するこのOPA827の位相マージンは67.1°なので、45°超という要件を満たしており、安定しています。安定性解析の詳しい理論については、『オペアンプ:安定性 1』を参照してください。
使用デバイス
(1) ADS8568には大半の設計要件を満たす高精度基準電圧が内蔵されていますが、ADS8568にはすべてのADCチャネル ペアに対応する基準電圧バッファが内蔵されているため、バッファなしで外付けのREF5050を直接接続できます。また REF5050 は、高精度 SAR アプリケーションで必要とされる低ノイズ 低ドリフトという特長を備えています。CMRR (同相信号除去比)をバランスするようにC1を追加します。ADCのデータシートで規定されている最高水準の性能を実現するには、クリーンなアナログ電源が必要です。