JAJA917 June 2025 TPUL2T323
TPULファミリは、当社の既存のモノステーブルマルチバイブレータ(MMV)に置き換わるポートフォリオとして作製されたものです。MMVは、外部抵抗とコンデンサによって制御されるパルスジェネレータです。パルス幅は tw= K×R×C という式で決まりますが、。この式の K はデバイスによって決まる定数です。TPULファミリには、定数 K が 1 または1000 のデバイスがあります。K = 1デバイスは、現在の MMV ポートフォリオに置き換わるものですが、K = 1000 デバイスではより長いパルス幅による設計が可能になります。
| 入力 | 出力 | |||
|---|---|---|---|---|
| CLR | T | T | Q | Q |
| L | X | X | L | H |
| H | H | X | L | H |
| H | X | L | L | H |
| H | L | ↑ | ||
| H | ↓ | H | ||
| ↑ | L | H | ||
MMVは、3 つの制御信号 T、T、CLRを使用して、立ち上がりまたは立ち下がりエッジでトリガできるようにする設計が可能です。表 1 を参照してください。パルスがトリガされると、R/C と C に接続されている nFET がオンになり、コンデンサが放電します。これによって、出力(Q)は HIGH にスイッチングされ、出力パルスが生成されます。内部コンパレータは、コンデンサ放電電圧が 63.2% VCC、または 1 つの時定数 R×C の範囲を監視します。このレベルに達すると、出力がオフになります。次のトリガの準備をするため、コンデンサは VCC になるまで充電されます。図の PFET は、コンデンサ電圧の急速充電を支援するために使用されます
当社の既存の MMV 製品ラインアップとTPUL K = 1 のデバイスでは、現実的な最大パルス幅は10秒です。新しい TPUL K = 1000デバイスでは、最大パルス幅が 1時間以上にまで増加しています。また、定数 K を大きくすると、システム内でコンデンサが最も大きな部品であるため、フットプリントを大幅に削減することも可能です。同じパルス幅 10秒用に設計された外部コンポーネントを搭載した K = 1 および K = 1000 デバイスを、図 2に示します。左側の(K = 1)は、大型のアルミニウム コンデンサを使用する必要がありますが、右側の(K = 1000)は表面実装コンデンサを使用することができます。
図 2 TPUL1x1000-EVM抵抗とコンデンサは、前述のパルス幅の式(tw= K×R×C)に基づいて選択する必要があります。最初にコンデンサの値を選択することには多くの利点があります。一般的に、コンデンサは抵抗に比べて高価な部品です。特に、計算値が一般的な値ではない場合は、高価になります。さらに、図 2に示すように、コンデンサのサイズが非常に急激に大きくなる可能性があります。コンデンサの値を決めてから抵抗の値を計算するようにすれば、設計のフットプリントが小さくなり、コンデンサの計算値に基づく設計とべて比コストを節約できる可能性があります。
10秒のパルス幅を持つ設計を仮定します。この事例で使用でき、広く入手できるコンデンサは1 uF のものです。K と C の値を式に代入すると、抵抗の値は10 kΩ 程度になります。また、『TPUL2T323デュアル再トリガ可能拡張RC-Timedモノステーブルマルチバイブレータ』データシートに、一般的な R および C の値についてのクイックリファレンス表も掲載されています。
最後に注意すべきことは、MMV は正確な時間長には使用されないことです。出力パルス幅は、外部 RC 回路に依存するため、設計ごとにタイミングは大きく異なる可能性があります。抵抗の値は動作時に比較的一貫性が維持される一方で、コンデンサは温度、動作電圧、製造時の差異によって大きく変化します。すばやく簡単に計算できるように、単純な式を使用できます。すなわち、eΔtwo = eR + eC +Δ two、この場合 eRは抵抗の誤差、eCは容量の誤差、Δ two はデータシートに記載されている TPUL デバイスの誤差です。コンデンサには、多くの場合、製造上の許容誤差と温度による変化がありますが、これは eCとして合算することが可能です。
必要に応じて、より正確な式、eΔtwo = eR + eC +Δtwo(1 + eRR + eCC + eReC)を使用できます。2 つの式を比較するには、eR = 0.1%、e C = 20%(製造時5%、温度による変化15%)、Δtwo = 5%とします。単純な式で誤差は 25.1%、正確な式では 26.126% となります。