JAJT487 August   2025 TPSI3052-Q1

 

  1.   1
  2.   2
    1.     3
    2.     はじめに
    3.     アクティブ プリチャージについて理解できます
    4.     計算機の概要
    5.     カリキュレータ ツールを使用
    6.     プリチャージ システム要件
    7.     インダクタンスと充電電流の設定
    8.     電流センシングとコンパレータの設定ポイント
    9.     バイアス電源とスイッチング周波数の制限
    10.     目的の充電プロファイルを達成しました
    11.     関連コンテンツ
  3.   商標
    1.     15

はじめに

電気自動車 (EV) には通常、トラクション インバータの入力での電圧リップルを最小限に抑えるため、大容量の DC リンク コンデンサ (CDC LINK) が搭載されています。EV に電源を投入する際、プリチャージの目的は、車両を操作する前に CDC LINK を安全に充電することです。CDC LINK をバッテリ スタック電圧 (VBATT) まで充電することで、接触器端子のアーク放電を防止し、長期的に致命的な障害につながる可能性があります。

従来のプリチャージ方法では、CDC LINK と直列に電力抵抗を実装して、抵抗/コンデンサ (RC) ネットワークを形成する必要があります。ただし、CDC LINK 容量の合計と VBATT が大きくなると、必要な消費電力は指数関数的に増加します。この記事では、スプレッドシート カリキュレータを使用して効率的なアクティブ プリチャージ回路を設計するための明快なアプローチを紹介します。

アクティブ プリチャージについて理解できます

パッシブ プリチャージでは、コンデンサを漸近的に充電する RC 回路を作成するために電力抵抗を使用しますが、アクティブ プリチャージでは、ヒステリシス インダクタ電流制御を使用してコンデンサに一定の充電電流を供給する降圧トポロジを備えたスイッチング コンバータを採用できます (図 1)。

この定電流により、コンデンサ電圧 (VCAP) をバッテリと同じ電位まで線形充電できます。図 2と式 1 は、この線形動作の特性を示します。

式 1. d V d t = I CHARGE  C DC LINK 

最初の手順は、必要な充電電流 (ICHARGE) を決定することです。ICHARGEは、式 2 に示す DC リンク電荷の合計 (QDC LINK) と必要なプリチャージ時間 (tCHARGE) の指数です。

式 2. I C H A R G E = Q D C L I N K t C H A R G E

QDC LINKは、式 3 に示すように、CDC LINK と VBATT の積です。

式 3. Q DC LINK  = C DC LINK  × V B A T T

計算機の概要

このアクティブ ヒステリシス降圧回路には、スイッチ ノードに沿ったフローティング グランド電位があるため、制御システムへの電力供給には絶縁型バイアス電源が必要です。カリキュレータ ツールを使用すると、この制御回路の消費電力を絶縁型バイアス電源のソース能力内にとどめることができます。そうでないと、電圧が低下します。

テキサス インスツルメンツ (TI) の高電圧ソリッドステート リレー向けアクティブ プリチャージのリファレンス デザインでは、エネルギー伝達効率を向上させ、実用的な充電時間を短縮するアクティブ ソリューションを紹介します。TI の TPSI3052-Q1 は、アクティブ プリチャージ リファレンス デザインで使用されている完全統合型の絶縁型バイアス電源であり、絶縁型 2 次側に最大 83mW の電力を供給し、供給することができます。ゲート駆動電流、デバイスの静止電流、抵抗デバイダが消費電力の主な要因です。式 4 では、ゲート駆動電流 (IGATE DRIVE) とゲート駆動電圧 (VS GATE DRIVER) の積であるゲートドライブ電力 (PGATE DRIVE) の特性を規定しています。リファレンス デザインの場合、この値は 15V です。

式 4. P GATE DRIVE  = I GATE DRIVE  × V S GATE DRIVER 

式 5 は、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ (MOSFET) の総ゲート電荷量 (QG) とスイッチング周波数 (FSW) の積であるゲート駆動電流の特性を規定したものです。

式 5. I G A T E D R I V E = Q G × F S W

式 6 に、充電期間全体を通して VCAP に応じて FSW がどのように変化するかを示します。この結果、図 3の FSW と VCAP の曲線に上下反転パラボラが生じます。下の図に示すように、ゲート駆動電流は最大スイッチング周波数 (FSW_MAX) でピークになります。これは、vcapCAP が VBATT の半分に達したときに発生します。式 7 に、FSW_MAX、VBATT、インダクタンス (L)、ピークツーピーク インダクタ電流 (dI) の関係を示します。

式 6. F S W = V C A P V C A P 2 V B A T T L × d I
式 7. F S W M A X = V B A T T 4 × L × d I

カリキュレータ ツールを使用

このカリキュレータを使用すると、さまざまな設計パラメータを入力するよう求められます。黄色のセルは必須入力であり、灰色のセルはオプション入力を示します。灰色のセルのデフォルト値は、リファレンス デザインのパラメータを反映しています。ユーザーは、必要に応じてグレーのセル値を変更できます。白色のセルは、計算値を出力として示しています。セルの右上隅にある赤い三角形はエラーを示しています。ユーザーは、修正方法に関するポップアップ テキストを表示できます。目的は、赤色のセルを使用しない構成を成功させることです。これは、ユーザーが各ユニットセルの上にマウスを置くことで説明情報を読むことができる反復的なプロセスです。

プリチャージ システム要件

図 4に示す計算機の最初のセクションでは、必要な充電電流を計算します

(ICHARGE REQUIRED) は、VBATT、tCHARGE、CDC LINK システム パラメータに基づいています。

インダクタンスと充電電流の設定

図 5に示すカリキュレータのセクションでは、実際の平均充電電流 (ICHARGE) とFSW_MAX を計算します。平均インダクタ電流は基本的に ICHARGE に等しくなりますが、ICHARGE は ICHARGE REQUIRED 以上である必要があります。これは、前のセクションで目的の tCHARGE を満たすように計算されました。

式 7 で表されているように、L、dI、FSW_MAX の関係に注意します。L と dI はそれぞれ FSW に反比例するため、最大スイッチング周波数制限 (FSW LIMIT) を超えない値を選択することが重要です。インダクタを選択するには、十分な 2 乗平均平方根電流 (IRMS > ICHARGE)、 飽和電流 (ISAT > IL PEAK)、 電圧定格に対応しておく必要があります。また、各定格について十分なヘッドルームもバッファとして使用できます。

電流センシングとコンパレータの設定ポイント

図 6に示すカリキュレータのセクションで、前のセクションで規定されているピーク (IL PEAK) およびバレー (IL VALLEY) インダクタ電流スレッショルドを満たすために必要なヒステリシス回路の周囲の下側抵抗 (RB) 、上側抵抗 (R T)、 ヒステリシス抵抗 (R H) を計算します。電流検出抵抗 (R SENSE) と RB を入力します。これらは柔軟性があり、必要に応じて変更できます。コンパレータの電源電圧 (VS COMPARATOR) が正しいことを確認します。

バイアス電源とスイッチング周波数の制限

図 7に示す計算機のセクションでは、まずヒステリシス回路抵抗器 (PCOMP. RESISTORS)、ゲート ドライバ集積回路 (IC) (PGATE DRIVER IC)、およびコンパレータ IC (PCOMPARATOR IC) に関連する合計消費電力 (PTOTAL) を計算し、それを TPSI3052-Q1 の最大使用可能電力 (PMAX_ISOLATED BIAS SUPPLY) から差し引くことで、MOSFET のスイッチングに使用可能な電力 (PREMAINING FOR FET DRIVE) を計算します。MOSFET の合計ゲート電荷 (QG TOTAL)、 デバイス静止電流 (IS GATE DRIVER IC および ISUPPLY COMP IC)、 ゲート ドライバ IC 電源電圧 (VS GATE DRIVER IC) を入力します。このツールはこれらの入力を使用して、図 3の赤い線で表示されるFSW LIMIT を計算します。

このカリキュレータ ツールは特定の前提条件を持ち、MOSFET とフリーホイール ダイオードの両方でのコンパレータの遅延や電力損失などの要因を考慮していません。このツールでは、レールツーレール入出力コンパレータの使用を想定しています。適切な電圧定格 RDSON、および寄生容量パラメータを持つ MOSFET を選択してください。MOSFET とフリーホイール ダイオードの両方の電力損失を許容される制限内にするようにします。最後に、電流検出のピークおよびバレー レベル電圧に対して、オフセットが小さくヒステリシス電圧が小さいコンパレータを選択します。最終的なカリキュレータ値で回路のシミュレーションを行うことで、意図した動作が保証されます。

目的の充電プロファイルを達成しました

アクティブ ヒステリシス降圧回路を採用することで、効率が大幅に向上し、EV に搭載されている高電圧 DC-link コンデンサの充電回路のサイズが縮小されます。これにより、プリチャージ ソリューションのサイズ、コスト、発熱の低減を可能にします。

この記事では、希望の充電プロファイルの実現に役立つ適切な部品の値を計算するための設計プロセスを紹介します。

これらの手法とツールを採用することで、エンジニアは EV のプリチャージ機能を効果的に向上させ、自動車業界の高まる需要に対応するためにパワー マネージメント システムの改善を進めることができます。