JAJSKW7 December   2020 DRV8434A

PRODUCTION DATA  

  1. 特長
  2. アプリケーション
  3. 概要
  4. 改訂履歴
  5. ピン構成および機能
    1. 5.1 端子機能
  6. 仕様
    1. 6.1 絶対最大定格
    2. 6.2 ESD 定格
    3. 6.3 推奨動作条件
    4. 6.4 熱に関する情報
    5. 6.5 電気的特性
    6. 6.6 ステッピング制御ロジック・タイミング要件
      1. 6.6.1 代表的特性
  7. 詳細説明
    1. 7.1 概要
    2. 7.2 機能ブロック図
    3. 7.3 機能説明
      1. 7.3.1 ステッピング・モータ・ドライバの電流定格
        1. 7.3.1.1 ピーク電流定格
        2. 7.3.1.2 RMS 電流定格
        3. 7.3.1.3 フルスケール電流定格
      2. 7.3.2 PWM モータ・ドライバ
      3. 7.3.3 マイクロステッピング・インデクサ
      4. 7.3.4 MCU DAC による VREF の制御
      5. 7.3.5 電流レギュレーションおよびディケイ・モード
        1. 7.3.5.1 スマート・チューン・リップル・コントロール
        2. 7.3.5.2 ブランキング時間
      6. 7.3.6 チャージ・ポンプ
      7. 7.3.7 リニア電圧レギュレータ
      8. 7.3.8 論理レベル、トライレベル、クワッドレベルのピン構造図
        1. 7.3.8.1 nFAULT ピン
      9. 7.3.9 保護回路
        1. 7.3.9.1 VM 低電圧誤動作防止 (UVLO)
        2. 7.3.9.2 VCP 低電圧誤動作防止 (CPUV)
        3. 7.3.9.3 過電流保護 (OCP)
        4. 7.3.9.4 ストール検出
        5. 7.3.9.5 開放負荷検出 (OL)
        6. 7.3.9.6 サーマル・シャットダウン (OTSD)
        7.       フォルト条件のまとめ
    4. 7.4 デバイスの機能モード
      1. 7.4.1 スリープ・モード (nSLEEP = 0)
      2.      43
      3. 7.4.2 ディセーブル・モード (nSLEEP = 1、ENABLE = 0)
      4. 7.4.3 動作モード (nSLEEP = 1、ENABLE = ハイ・インピーダンス / 1)
      5. 7.4.4 nSLEEP リセット・パルス
      6.      機能モードのまとめ
  8. アプリケーションと実装
    1. 8.1 アプリケーション情報
    2. 8.2 代表的なアプリケーション
      1. 8.2.1 設計要件
      2. 8.2.2 詳細な設計手順
        1. 8.2.2.1 ステッピング・モータの速度
        2. 8.2.2.2 電流レギュレーション
        3. 8.2.2.3 ディケイ・モード
        4. 8.2.2.4 アプリケーション曲線
        5. 8.2.2.5 熱に関連する計算
          1. 8.2.2.5.1 消費電力
          2. 8.2.2.5.2 導通損失
          3. 8.2.2.5.3 スイッチング損失
          4. 8.2.2.5.4 静止電流による消費電力
          5. 8.2.2.5.5 全消費電力
          6. 8.2.2.5.6 デバイスの接合部温度の概算
  9. 電源に関する推奨事項
    1. 9.1 バルク・コンデンサ
  10. 10レイアウト
    1. 10.1 レイアウトの注意点
    2. 10.2 レイアウト例
  11. 11デバイスおよびドキュメントのサポート
    1. 11.1 ドキュメントの更新通知を受け取る方法
    2. 11.2 サポート・リソース
    3. 11.3 商標
    4. 11.4 静電気放電に関する注意事項
    5. 11.5 用語集
  12. 12メカニカル、パッケージ、および注文情報

パッケージ・オプション

メカニカル・データ(パッケージ|ピン)
サーマルパッド・メカニカル・データ
発注情報

ストール検出

ステッピング・モータでは、モータの巻線電流、逆起電力、機械的トルク負荷の間に明確な関係があります (図 7-13 を参照)。与えられた巻線電流に対して、モータの負荷がモータの最大トルク能力に近づくと、逆起電力は巻線電流に対して位相が変化します。

DRV8434A は、モータ電流の立ち上がり電流象限と立ち下がり電流象限の間の逆起電力の位相の変化を検出することで、モータの過負荷ストール条件またはエンドオブライン・トラベルを検出できます。ストール検出機能を使わない場合、ドライバは障害物があっても駆動し続け、熱、可聴ノイズ、システムの損傷を引き起こすことがあります。

ストール検出機能は、高価なホール・センサを置き換えることができます。ホール・センサによるタイムアウト方式と比較して、内蔵センサレス・ストール検出機能を使うとモータ・ストール時に高速な応答が得られます。

GUID-8FCBA2FD-7B1A-4DE1-81A6-0B93919F899B-low.gif図 7-13 モータの逆起電力の監視によるストール検出

このストール検出アルゴリズムは、PWM オフ時間を監視することで立ち上がり電流象限と立ち下がり電流象限の逆起電力を比較し、トルク・カウントで表される値を生成します。この比較は、トルク・カウントがモータ電流、周囲温度、電源電圧に事実上依存しないような方法で行われます。

モータの負荷が軽い場合、トルク・カウントはゼロ以外の値になります。モータがストール条件に近づくにつれてトルク・カウントはゼロに近づくため、トルク・カウントを使ってストール条件を検出できます。トルク・カウントがストール・スレッショルドを少しでも下回ると、本デバイスはストールを検出します。ストール条件では、モータのシャフトは回転しません。ストール条件が解消すると、モータは再び回転を開始します。

モータのコイルの抵抗が大きいと、トルク・カウントが小さくなる場合があります。DRV8434A の ENABLE ピンを使うと、小さいトルク・カウント値を拡大し、その後の処理を簡単にできます。ENABLE ピンをハイ・インピーダンスにすると、トルク・カウントとストール・スレッショルドは 8 倍されます。ENABLE ピンを論理 High にすると、トルク・カウントとストール・スレッショルドはアルゴリズムによる当初の計算値を維持します。

DRV8434A のストール検出アルゴリズムは、2 本のデジタル I/O ピンと 1 本のアナログ I/O ピン (STL_MODE、STL_REP、TRQ_CNT/STL_TH) で設定されます。

STL_MODE はストール検出モードを設定します。このピンが論理 Low の場合、ストール・スレッショルドは本ドライバまたは外部マイクロコントローラ (MCU) によって計算されます。TRQ_CNT/STL_TH ピンはトルク・カウントをアナログ電圧として出力します。STL_MODE ピンが開放 (ハイ・インピーダンス) の場合、ストール・スレッショルド学習プロセスが有効になります。学習が成功した場合、TRQ_CNT/STL_TH ピンはストール・スレッショルドをアナログ電圧として出力します。STL_MODE が論理 High (DVDD に接続) の場合、ストール・スレッショルドは TRQ_CNT/STL_TH ピンに電圧を印加することで設定されます。TRQ_CNT/STL_TH ピンは、動作モードに応じて入力としても出力としても動作できます。TRQ_CNT/STL_TH ピンと GND の間に 1nF のコンデンサを接続する必要があります。STL_MODE ピンと GND の間に 330kΩ の抵抗を接続すると、ストール検出が無効になります。また、何らかのフォルト条件 (例:UVLO、OCP、OL、OTSD) が存在する場合、ストール検出は無効になります。

STL_REP はオープンドレイン出力です。STL_MODE = GND または DVDD の場合、STL_REP はストール・フォルトがなければ本ドライバによって Low にプルされ、ストールが検出されると High になります。STL_MODE = GND または DVDD、かつ STL_REP ピンが外部から Low にプルされている場合、ストール・フォルト通知は無効になり、ストールが検出されても nFAULT は Low になりません。ストール・スレッショルド学習モード (STL_MODE = ハイ・インピーダンス) では、STL_REP が High から Low に遷移した場合、それはストール・スレッショルドの学習が成功したことを示します。STL_REP は、外付けプルアップ抵抗でプルアップする必要があります。

次の手順では、ストール・スレッショルドの学習動作について説明します。

  • ストール・スレッショルド学習の前に、モータ速度が目標値に達していることを確認します。モータ速度が上昇または下降中はストール・スレッショルド学習を行わないでください。

  • STL_MODE ピンをハイ・インピーダンスにして学習を開始します。

  • 無負荷の状態でモータを動作させます。

  • 本ドライバが定常カウントを学習するように 32 電気的サイクルの間待機します。

  • モータをストールさせます。

  • 本ドライバがストール・カウントを学習するように 16 電気的サイクルの間待機します。

  • 学習が成功すると、STL_REP が Low にプルされます。

  • ストール・スレッショルドは、定常カウントとストール・カウントの平均として計算されます。

  • 学習が成功すると、TRQ_CNT/STL_TH ピンはストール・スレッショルドをアナログ電圧として出力し、トルク・カウント・モードで使用するためにその値を内部に保存します。

  • 学習が成功した後、STL_MODE の論理レベルを変更することで本デバイスがトルク・カウント・モードまたはストール・スレッショルド・モードに移行すると、STL_REP は High に遷移し、nFAULT はプルダウンされ、TRQ_CNT/STL_TH ピンの電圧はリセットされます。

  • STL_REP をプルダウンさせ、nFAULT を再びプルアップさせるには、nSLEEP リセット・パルスを印加します。

モータ作動中または停止中のトルク・カウントが不安定なために、ストール学習プロセスが失敗する場合があります。例として、モータのコイルの抵抗が大きい場合、モータが非常に高速または低速で動作している場合、トルク・カウントが時間と共に大きく変化する場合、定常カウントとストール・カウントの差が小さい場合が挙げられます。このような場合、ストール学習手法を使用しないことを推奨します。代わりに、動作条件の範囲全体にわたって定常カウントとトルク・カウントを慎重に検討し、定常カウントの最小値とストール・カウントの最大値の中間にスレッショルドを設定します。

モータが最初に回転速度を増加させる際は、本ドライバをトルク・カウント・モードとストール・スレッショルド・モードのどちらかに設定することを推奨します。初期ランプ・アップ中にデバイスが学習モードに入っている場合、より小さいストール・スレッショルド値が学習されることがあります。定常状態の速度に達すると、学習プロセスを開始できます。

表 7-6 に、ストールを検出できる各種動作モードを示します。

表 7-6 ストール検出動作モード
動作モード STL_MODE TRQ_CNT/STL_TH STL_REP nFAULT 説明
トルク・カウント・モード

GND

出力としてのトルク・カウント電圧 出力:High:ストール・フォルト
入力:Low:ストール通知は無効
STL_REP > 1.6V の場合、ストールが検出されると nFAULT は Low になります。 このモードは、次の 2 種類の動作をサポートしています。
1.スタンドアロン・ストール検出モード:ドライバはストール検出と通知を行います (このモードは学習モードの後に設定する必要があります)。
2.MCU を使ったストール検出モード:MCU は TRQ_CNT/STL_TH 電圧を入力として取り込み、2 次的な影響がある場合その電圧を補償し、独自のストール・スレッショルド値と比較してストールを検出します。これは外部動作モードであるため、本デバイスのストール通知を無効にする必要があります。MCU は、トルク・カウントに基づいて VREF を制御するためのアルゴリズムを実行することもできます。
学習モード ハイ・インピーダンス 出力としてのストール・スレッショルド電圧 出力:High:学習は未完了
Low:学習は成功
該当なし 1. トルク・カウントの学習結果は TRQ_CNT/STL_TH ピン経由で得られます。
2. このモードでは、ストール検出アルゴリズムが内部ストール・スレッショルドを決定するために、モータは少なくとも 32 電気的サイクルにわたって無負荷で回転し、その後少なくとも 16 電気的サイクルの間ストールする必要があります。
ストール・スレッショルド・モード

DVDD

入力としてのストール・スレッショルド電圧 出力:High:ストール・フォルト
入力:Low:ストール通知は無効
STL_REP > 1.6V の場合、ストールが検出されると nFAULT は Low になります。 トルク・カウントはトルク・カウント・モードまたは学習モードから TRQ_CNT/STL_TH ピンに通知されます。また、目標ストール・スレッショルド電圧は外部から TRQ_CNT/STL_TH ピンに印加します。このストール・スレッショルド電圧は、トルク・カウント・モードから通知されたトルク・カウントに相当する電圧よりも小さい必要があります。モータがトルク・カウント・モードで回転している間、ストール・スレッショルド・モードが選択されている必要があります。

ストール検出無効

330kΩ を GND との間に接続

出力:Low

STL_MODE が 0 または 1 になるまで、モータのストールは無視されます。

図 7-14 に、DRV8434A ドライバによるストール検出のフローチャートを示します。

GUID-32D2E1A4-189A-4DEA-89EA-160890A087D9-low.jpg図 7-14 DRV8434A によるストール検出のフローチャート