JAJSCA0B September   2014  – March 2015 TPS92638-Q1

PRODUCTION DATA.  

  1. 特長
  2. アプリケーション
  3. 説明
  4. 代表的なアプリケーションの回路図
  5. 改訂履歴
  6. ピン構成および機能
  7. 仕様
    1. 7.1 絶対最大定格
    2. 7.2 ESD定格
    3. 7.3 推奨動作条件
    4. 7.4 熱特性について
    5. 7.5 電気的特性
    6. 7.6 スイッチング特性
    7. 7.7 代表的特性
  8. パラメータ測定情報
  9. 詳細説明
    1. 9.1 概要
    2. 9.2 機能ブロック図
    3. 9.3 機能説明
      1. 9.3.1 LED電流の設定
      2. 9.3.2 PWM制御
      3. 9.3.3 フォルト診断
        1. 9.3.3.1 オープン負荷の検出
      4. 9.3.4 温度フォールドバック
    4. 9.4 デバイスの機能モード
  10. 10アプリケーションと実装
    1. 10.1 アプリケーション情報
    2. 10.2 代表的なアプリケーション
      1. 10.2.1 バンクによるPWM調光
        1. 10.2.1.1 設計要件
        2. 10.2.1.2 詳細な設計手順
        3. 10.2.1.3 アプリケーション・パフォーマンスの波形
      2. 10.2.2 TAILおよびSTOPライト用の2つの輝度レベル
        1. 10.2.2.1 設計要件
        2. 10.2.2.2 詳細な設計手順
      3. 10.2.3 変調電源によるPWM調光
        1. 10.2.3.1 設計要件
        2. 10.2.3.2 設計手順
      4. 10.2.4 単一のデバイスから並列のチャネルによりLEDを駆動する
        1. 10.2.4.1 設計要件
        2. 10.2.4.2 設計手順
      5. 10.2.5 複数のデバイスから並列のチャネルによりLEDを駆動する
        1. 10.2.5.1 設計要件
        2. 10.2.5.2 設計手順
  11. 11電源に関する推奨事項
  12. 12レイアウト
    1. 12.1 レイアウトのガイドライン
    2. 12.2 レイアウト例
    3. 12.3 熱特性について
  13. 13デバイスおよびドキュメントのサポート
    1. 13.1 商標
    2. 13.2 静電気放電に関する注意事項
    3. 13.3 用語集
  14. 14メカニカル、パッケージ、および注文情報

パッケージ・オプション

メカニカル・データ(パッケージ|ピン)
サーマルパッド・メカニカル・データ
発注情報

詳細説明

概要

TPS92638-Q1デバイスは、PWM調光機能を搭載した8チャネルの定電流レギュレータで、車載照明アプリケーションで使用される高輝度の赤色または白色LED用に設計されています。各チャネルは最大70mAの電流容量を持ち、並列で使用すると最大560mAを供給できます。このデバイスは、チャネル間およびデバイス間で優れた電流マッチングを実現します。ハイサイドの電流ソースにより、LEDの共通カソード接続が可能です。高度な制御ループにより、出力に接続されているLEDの数が異なっても、チャネル間で高い精度が得られます。

TPS92638-Q1デバイスは、ストップおよびテールのアプリケーションで、LEDの電流が大電流(ストップやブレーキを示します)と小電流(通常のテールライト動作用)との間で切り替わる用途向けに設計されています。

TPS92638-Q1デバイスは、出力の障害状況を監視し、FAULTピンで状態を通知します。このデバイスには、出力からグランドへの短絡の検出、オープン負荷の検出、サーマル・シャットダウンが搭載されています。FAULTピンにより、フォルト・モードと、エラーが発生した場合のMCUへの通知を、可能な限り柔軟に決定できます。MCUが存在しないアプリケーションでは、複数のTPS92638-Q1デバイスをバスに接続することも可能です。

内蔵の温度フォールドバック機能により、設定済みのスレッショルドに達したときに出力電流を直線的に減少させることで、デバイスをサーマル・シャットダウンから保護します。温度フォールドバック・スレッショルドは、外部抵抗を使用してプログラムされます。TEMPピンをグランドに接続すると、この機能はディセーブルになります。

機能ブロック図

TPS92638-Q1 fbd_SLVSCK5.gif

機能説明

LED電流の設定

独立したリニア電流レギュレータが、8つのLED出力チャネルを制御します。グローバルな外部抵抗により、各チャネルの電流が設定されます。また、デバイスにはストップとテールのアプリケーションで使用するため、2つの電流レベルが搭載されています。

内部基準電流I(REF)は、STOP入力の状態に応じて2つの値が可能です。STOPがLOWのとき、REFピンから取り出される電流であるREFが出力電流を制御します。STOPがHIGHのとき、REFHIピンとREFピンから取り出される電流の合計が、出力電流を制御します。

電流を設定する抵抗の値は、数式Equation 1およびEquation 2で計算されます。

STOP = LOWのとき

Equation 1. TPS92638-Q1 Eq02_Ioutx-tail_SLVSCK5.gif

STOP = HIGHのとき

Equation 2. TPS92638-Q1 Eq01a_Ioutx4_slvsck5.gif

ここで

Vrefは、内部の基準電圧

G(I)は出力電流と基準電流との比

PWM制御

このデバイスには4つの独立したPWMバンク調光制御ピンが搭載され、それぞれのピンは2つのチャネルで構成される1つのバンクを制御します。PWM入力は、未使用バンクのシャットダウン・ピンとしても使用できます。PWMをグランドに接続すると、対応する出力がディセーブルになります。PWM信号には正確なスレッショルドがあり、設計者はSUPPLYからの分割抵抗を使用して、低電圧ロックアウト(UVLO)機能としてLEDのスタートアップ電圧を定義できます。PWMバンクのマッピングを、Table 1に示します。

Table 1. PWMバンクのマッピング

PWM入力 制御される出力
PWM1 OUT1、OUT2
PWM2 OUT3、OUT4
PWM3 OUT5、OUT6
PWM4 OUT7、OUT8

フォルト診断

TPS92638-Q1デバイスにはフォルト・ピンFAULTがあり、短絡、オープン、およびサーマル・シャットダウンの一般的な障害に使用されます。この配置により、すべての要件およびアプリケーションの状況に基づいて、最大限の柔軟性が得られます。

デバイスのFAULTピンをMCUへ接続すると、フォルト通知が可能になります。FAULTピンはオープン・ドレインのトランジスタで、内部的に弱くプルアップされています。

デバイスは、外部の回路がFAULTバスをトグルしたとき、またはデバイスの電力がオフになってから再度オンになる時に、FAULTパスを解放します。MCUを使用しないアプリケーションでは、電力をオフにしてから再度オンにすることによってのみフォルトがクリアされます。

サーマル・シャットダウン、オープン負荷、または出力回路の短絡のフォルトが発生すると、FAULTピンはLOWになります。サーマル・シャットダウンおよびオープンLEDの場合、サーマル・シャットダウンまたはオープンLEDの状況が解消されるとFAULTピンが解放されます。他のフォルトの場合、その状況が解消された後でもFAULTピンはLOWに維持され、FAULTピンをトグルするか、デバイスの電力をオフにしてから再度オンにすることによってのみクリアできます。

TPS92638-Q1 det_tim_dia_1_SLVSCK5.gif Figure 32. TPS92638-Q1デバイスのフォルト処理動作、FAULTバスがフローティング状態

MCUを使用しないアプリケーションの設計では、最大15本までのTPS92638-Q1 FAULTピンをまとめて接続できます。1つ以上のデバイスにエラーが発生した場合、対応するFAULTピンがLOWになり、接続されているFAULTバスをプルダウンして、すべてのデバイス出力がシャットダウンされます。FAULTラインのバス接続を、Figure 33に示します。

TPS92638-Q1 fau_lin_conn_SLVSCK5.gif Figure 33. FAULTラインのバスの接続

外部の回路によってFAULTバスがHIGHにプルされる、ENピンがトグルされる、またはデバイスの電力がオフになってから再度オンになると、デバイスはFAULTバスを解放します。MCUを使用しないアプリケーションでは、電力をオフにしてから再度オンにした場合のみフォルトがクリアされます。Figure 34は、詳細なタイミング図です。

TPS92638-Q1 det_tim_dia_2_SLVSCK5.gif Figure 34. TPS92638-Q1デバイスのフォルト処理の動作、FAULTバスが外部的にHIGHにプルアップされている場合

Table 2. フォルト表

障害モード 判定条件 診断出力ピン(1) 動作 FAULT デバイスの応答 障害除去 自己クリア
検出電圧 チャネル状態 検出メカニズム
短絡:
1つまたは複数のLEDストリング
V(SUPPLY) > 5V オン V(IOUTx) < 0.9V FAULT Lowに設定 外部で
HIGHにプル
障害ストリングをオフ、
他のチャネルはオン
ENをトグル、
電力をオフにしてから再度オン
なし
フローティング すべてのストリングをオフ ENをトグル、
電力をオフにして再度オン
オープン負荷:
1つまたは複数のLEDストリング
V(SUPPLY) > 5V オン V(SUPPLY) – V(IOUTx) < 100mV FAULT Lowに設定 外部で
HIGHにプル
すべてのストリングをオンに保持 障害状況の解消 あり
フローティング 障害ストリングがオンのまま、
他のチャネルをオフ
障害状況の解消
バッテリへの短絡:
1つまたは複数のLEDストリング
V(SUPPLY) > 5V オンまたはオフ V(SUPPLY) – V(IOUTx) < 100mV FAULT Lowに設定 外部で
HIGHにプル
すべてのストリングをオンに保持 障害状況の解消 あり
フローティング 障害ストリングがオンのまま、
他のチャネルをオフ
障害状況の解消
サーマル・シャットダウン V(SUPPLY) > 5V オンまたはオフ > 170℃ FAULT Lowに設定 外部で
HIGHにプル
すべてのストリングをオフ 温度 < 155°C あり
フローティング
温度フォールドバック V(SUPPLY) > 5V オンまたはオフ > 110℃ N/A なし N/A すべてのストリングへの電流が減少 温度 < 100°C あり
基準抵抗の短絡 V(SUPPLY) > 5V オンまたはオフ R(ref) < 1400Ω FAULT Lowに設定 N/A すべてのストリングをオフ ENをトグル、電力をオフにして再度オン なし
診断用のFAULTピンを外部的にHIGHへ接続する場合、内部的なプルダウンを打ち消せるだけの強度のプルアップを行う必要があります。

オープン負荷の検出

デバイスは、チャネルにまたがる電圧のV(SUPPLY) - V(IOUTx)が、オープン負荷検出電圧であるV(olv)未満のとき、オープン負荷状況を検出します。この状況が、オープン負荷検出のグリッチ除去時間(PWMが100%のとき2ms、またはPWM調光モードで連続して7つのPMWデューティ・サイクル)よりも長く存在すると、デバイスはFAULTをLOWにプルダウンし、フォルトの発生したチャネルをオフにします。FAULTピンがHIGHに接続されると、すべてのチャネルがシャットダウンします。オープン状態が解消されると、チャネルは回復します。デバイスは、ストリング内のLEDの順方向電圧の合計が、SUPPLYピンの電源電圧に近いか、それを超えている場合にも、オープン負荷を検出する場合があることに注意してください。

温度フォールドバック

TPS92638-Q1デバイスには、ICの過熱を防ぐため、サーマル・シャットダウン保護機能が内蔵されています。さらに、急速な温度変化によるLEDのちらつきを防ぐため、デバイスには接合部温度が高い時の消費電力を低減する、プログラム可能なサーマル電流フォールドバック機能が搭載されています。

TPS92638-Q1デバイスは、デバイスのシリコン接合部温度が上昇するにつれて、LED電流を減少させます(Figure 35を参照)。TPS92638-Q1デバイスをLEDと同じサーマル基板上に実装すると、この機能を使用してLEDの消費電力を制限できます。TPS92638-Q1デバイスの接合部温度が上昇すると、レギュレートされる電流レベルが低下するため、TPS92638-Q1およびLEDの消費電力が減少します。この電流の減少割合は一般に、100%レベルからセ氏温度ごとに2%で、T(th) + 20℃において電流は最大値の50%まで低下します。

TPS92638-Q1 ther_fold_1_SLVSC76.gif Figure 35. 温度フォールドバック

これより高い温度では、接合部温度が過熱シャットダウン・スレッショルドであるT(shutdown)に達するまで、デバイスは50%の電流レベルを維持します。TEMPピンの電圧を変更することで、電流の減少が開始される温度を調整できます。TEMPがオープンのままのとき、「サーマル・モニタ・アクティベーション温度は、電流の減少が開始する温度T(th)です。電気的特性の表で、T(th)の仕様は90%の電流レベルでのものです。TEMPピンの電圧V(TEMP)が減少すると、T(th)は増大します。T(th)の概算値は、Equation 3で与えられます。

Equation 3. TPS92638-Q1 Eq16-Tth_SLVSCK5.gif
TPS92638-Q1 D004_SLVSC76.gif Figure 36. TEMPピンの電圧とサーマル・フォールドバック温度との関係

TEMPとGNDの間に抵抗を接続すると、V(TEMP)が低下し、T(th)が上昇します。TEMPと、1Vを超える基準電源との間に抵抗を接続すると、V(TEMP)が上昇し、T(th)が低下します。

TPS92638-Q1 D005_SLVSC76.gif Figure 37. プルアップおよびプルダウン抵抗とT(th)との関係

「サーマル・モニタ・アクティベーション温度の公称値は、TEMPの電圧と、GNDに接続されるか3Vまたは5Vにプルアップされる抵抗R(TEMP)の値によって変化します。このことを、Figure 37に示します。

極端な場合、接合部温度が過熱制限T(shutdown)を超えると、デバイスのすべてのレギュレータはディセーブルされます。温度監視は続行され、温度が指定されたヒステリシス・スレッショルド未満に低下すると、デバイスのレギュレータは再度アクティブになります。

TPS92638-Q1デバイスは、サーマル・シャットダウンから通常動作へ急速に移行する可能性があることに注意してください。これは、露出したサーマル・パッドに接続されている熱質量が小さく、T(th)がシャットダウン温度と非常に近い場合に発生する可能性があります。発振周期は、T(th)、消費電力、周囲温度、およびヒートシンクがある場合はその熱質量に依存します。

デバイスの機能モード

TPS92638-Q1デバイスの機能モードは、動作と非動作です。デバイスは、V(SUPPLY)が5V以上、40V以下のとき通常に動作します。