JAJY125A May   2018  – July 2020 TIOL111

 

  1. 11
  2. 2はじめに
  3. 3低帯域幅向けの IO-Link
  4. 4産業用イーサネット:スマート・ファクトリのバックボーン
  5. 5スマート・ファクトリでの通信に適した TI のテクノロジー
  6. 6スマート・ファクトリの将来に対応できるテクノロジー
  7. 7Important Notice

産業用イーサネット:スマート・ファクトリのバックボーン

近年、産業用イーサネットは高度自動化ファクトリでその価値を実証しており、複雑なシステム、PLC、ゲートウェイのような大規模なフィールド (現場) ネットワークで標準的な選択肢になりつつあるほか、外部ネットワークとの相互通信をサポートしています。高速、共通インターフェイス、長い接続距離という特長により、イーサネットは各種データ・ネットワークで普遍的に採用されています。さらに、産業用イーサネットは修正済みのメディア・アクセス制御 (MAC) 層を使用して、非常に短い待ち時間とディタミニスティック (確定的) なデータ配信を実現し、各種タイム・トリガ・イベントをサポートしています。リングとスター両方のトポロジーに加えて、従来のインライン接続もサポートしているので、ケーブル切断や接続解除が発生した場合でも安全性と信頼性を確保できます。

「産業用イーサネット」とは、独自の単独仕様ではなく、現場レベルのアプリケーションでの実装を意図してさまざまな産業用機器のメーカーが推進している、互いに違いのあるプロトコル実装で構成された大規模なグループの総称です。一般的なプロトコルとして、EtherCAT、Profinet、Ethernet/IP、Sercos III、CC-Link IE Field などを挙げることができます。『産業用イーサネット通信プロトコルの現在』ホワイトペーパーは、これらの各プロトコルを比較し、CAN (Control Area Network)、Modbus、Profibus など、イーサネット・ベースではない従来のシリアル・フィールドバス・プロトコルについて説明しています。

非常に幅広く使用されている 2 つのプロトコルは、Profinet と EtherCAT です。これらの産業用イーサネットについて、互いにどのように異なっているか、また IO-Link とどのように異なっているかを示しています。どちらも 100Mbps の転送速度と、最大 100m という距離を規定しています。Profinet はデータ・ケーブルの電力とは独立した電力供給を必要とするのに対し、EtherCAT の 1 つのバージョン (EtherCAT_P) は、電力とデータを同じケーブルで伝送することができます。Profinet は全二重トラフィックをサポートしており、ネットワーク内の各ノードにパケットを送信することができます。また、このプロトコルは 3 つのクラスを実現しており、ユーザーはネットワークが必要とする性能レベルに合わせてクラスを選択することができます。対照的に、EtherCAT はネットワーク内の一方向で 1 つの共有フレームを送信し、すべてのスレーブが自らのデータをそのフレームの中に書き込むことになります。これは、非常に高速な伝送時間をサポートする方式です。

Profinet と EtherCAT はどちらも IO-Link より高速なサイクル時間を実現しており、許容差は大幅に少なくなっています。両方とも、ネットワーク同期を基本的なタイミングとして使用しています。この点は、通信開始を基本的なタイミングとして使用する IO-Link とは異なっています。追加の各種プロトコルは、接続に関する機能安全を実現します。オートメーション環境との統合を簡素化する目的で、産業用イーサネット・プロトコルは全般的に、多数のサービスを提供しています。

大半のセンサは、産業用イーサネット接続が提供している高信頼性機能セットを必要としていませんが、重要な例外として視覚的センシング機能を挙げることができます。ビデオ・カメラが作成する大量のデータ自体が、IO-Link が実現できるデータ・レートを上回る高速データ・レート接続を必要とする十分な理由になります。視覚的、また時には他の種類のセンシングが実現する固有の入力量が原因で、リアルタイム・プロセス制御が必要になります。その結果、産業用イーサネットは、ディタミニスティック (確定的) な配信を必要としています。

たとえば、タイム・オブ・フライト (ToF) アプリケーションは物品の 3D 方向の移動を追跡し、予測します。代表的な応答として、物品をピッキング (取得) するために自ら動作するロボット・アームを挙げることができます。IO-Link はこの種のアプリケーションで物品の存在のみをセンスする、という限定的な用途では十分な速度と分解能を実現できる可能性がありますが、産業用イーサネットは十分な帯域幅と非常に短い待ち時間を実現しており、物品およびその周囲にある空間のいくつかの特性を判定することもできます。ギガビット・イーサネットを経由する場合、カメラからの入力を使用してさらに高い水準の識別を実施できる可能性もありますが、ここで説明した産業用イーサネット・プロトコルは、このようなギガビット単位の速度とその場合の動作についてまだ規定していません。

GUID-20210426-CA0I-FLFX-B0NJ-F6GXRS5MVLQ0-low.gif図 3 選択肢の例:タイム・オブ・フライト。