JAJY111C january   2023  – april 2023 LMQ61460-Q1 , TPS54319 , TPS62088 , TPS82671 , UCC12040 , UCC12050

 

  1.   1
  2.   概要
  3.   概要
  4.   電力密度とは
  5.   電力密度を制限する要因
  6.   電力密度を制限する要因:スイッチング損失
  7.   主な制限要因 1:充電関連の損失
  8.   主な制限要因 2:逆回復の損失
  9.   主な制限要因 3:ターンオン損失とターンオフ損失
  10.   電力密度を制限する要因:放熱性能
  11.   電力密度の障壁を打破する方法
  12.   スイッチング損失の革新
  13.   パッケージの放熱特性の革新
  14.   先進的な回路設計による革新
  15.   統合の革新
  16.   まとめ
  17.   その他の資料

電力密度とは

電力密度とは、特定の空間でどれほど多くの電力を処理できるかを表す測定値であり、立方メートル当たりのワット数 (W/m3)、または立方インチ当たりのワット数 (W/in3) という単位で定量化します。これらの値は、コンバータの電力定格と、図 2 に示すように、すべてのコンポーネントを含めて電源ソリューションを直方体として扱う場合の体積 (奥行き x 幅 x 高さ) を基礎としています。 適切な電力レベルまたはサイズに合わせ、補助単位などを使用して、この単位をスケール化することも可能です。たとえば、電気自動車 (EV) のオンボード・バッテリ・チャージャの場合、kW/l (リットル当たりキロワット) が一般的な性能指標 (figure of merit、FoM) です。このようなパワー・コンバータは、kW 単位の電力を供給するからです (おおむね 3kW ~ 22kW の範囲)。

GUID-20220826-SS0I-1Z6Z-PWKB-2XVQPFL6CGCG-low.jpg 図 2 ある 65W アクティブ・クランプ・フライバック・コンバータの大きさは 65mm x 28mm x 25mm。

電流密度は電力密度に関連のある測度 (測定概念) であり、かなり役に立ちます。体積当たりの電流という考え方を、立方インチ当たりのアンペア数、または立方 mm 当たりのアンペア数という単位で定量化できます。コンバータの電流定格 (通常は入力電流と出力電流のどちらかを採用) を使用して、電流密度を計算できます。

多くの場合、ポイント・オブ・ロード電圧レギュレータのようなアプリケーションにとっては、電流密度の方がより適切な性能指標 (FoM) になります。この種の設計のサイズは、出力電流に応じてスケールが決まります。また、出力電圧のレベルは通常は低い値で、1V 前後です。このような実情に反して、非現実的な高い出力電圧を想定すると、電力密度の数値を意図的に高く表現することも可能になります。その点、電流密度を使用すると、出力電圧を考慮に入れずに済むので、電流密度はより効果的な測度になります。

時には、体積を基準とする密度が重要ではないこともあります。パワー・エレクトロニクスでは、高さの制約が課されないこともあります。設計に使用する他の部品は電源に比べてかなりの高さがあるからです。代わりに、回路基板の面積が制限要因になる可能性があります。このような状況で電力密度を向上させようとする場合、電源ソリューションのフットプリントを節減するために、複数の部品をスタック (積み重ね) または 3D (3 次元方向に) 集積する手法が必要になることがあります。このような場合、複数のソリューションを比較するために使用する測度を、(図 3 に示すように) W/平方 mm、または A/平方インチに変更します。この方法で、設計の重要な目標に注目できます。

GUID-20220826-SS0I-TH7Q-SSGD-5XCGWRKQFQ6P-low.jpg 図 3 ある 10A ポイント・オブ・ロード・コンバータの面積が 13.1mm x 10mm の場合、電流密度は 76mA/mm2

アプリケーションに応じて、いくつかの異なる方法で電力密度を検討することができますが、どの場合でも目標は共通です。ソリューション・サイズを縮小すると、電力密度の向上につながります。ここでの関心事は、電力密度の向上をどのようにして達成するかです。