JAJA525D August   2017  – June 2025 ISO1211 , ISO1212 , ISO1228 , ISO7710 , ISO7720 , ISO7730 , SN65HVS880 , SN65HVS881 , SN65HVS882 , SN65HVS883 , SN65HVS885

 

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デジタル入力モジュール

デジタル入力 (DI) モジュールは、プログラマブル ロジック コントローラ (PLC) およびモータ ドライブで、フィールド側のセンサおよびスイッチから 24V のデジタル入力を受け取るために使用されます。グランド電位の相違を管理するため、絶縁が使用されます。入力信号は、ヒステリシス付きの電圧コンパレータを使用し、ロジックHIGHまたはLOWとして解釈されます。24V 入力からの過剰な電流消費を回避するため、何らかの形の電流制限も実装されます。高密度の小型マルチ チャネルの設計では、消費電力が極めて重要な考慮事項です。

プログラマブル コントローラ用の IEC 61131-2 標準では、3 種類のデジタル入力レシーバ(タイプ 1、2、3) を規定しています。タイプ 1 およびタイプ 3 の理想的な実装では、ON 状態で可能な限り 2mA に近い電流を消費し、電圧の遷移スレッショルドが 5V 〜 11V の範囲にある必要があります。

 基本電流制限付きの従来の DI モジュール図 1 基本電流制限付きの従来の DI モジュール
 従来型の DI モジュール (高精度であるものの複雑な電流制限機能付き)図 2 従来型の DI モジュール (高精度であるものの複雑な電流制限機能付き)

一般的なデジタル入力の実装

今日使用されているデジタル入力レシーバの最も一般的な実装の 2 つを、図 1図 2に示します。図 1 に示す最初の例では、電圧スレッショルドは抵抗 R1 および R2 により設定され、R2 は基本電流制限として機能します。タイプ 3 のこのような実装では、32V 入力で消費電流が簡単に 12mA に達することがあります。図 2 に示す 2 番目の実装では、いくつかの分離コンポーネント (9 から 15) を使用して、より的確な電流制限と、制御された電圧スレッショルドを実装しています。この場合、タイプ3について、消費電流は設計に応じ、温度範囲にわたって最高6mAです。どちらの例でも、電流制限はタイプ3入力の理想的な電流制限である2mAを大きく超えています。シュミット トリガ バッファは通常、オプトカプラの後段に、ノイズ耐性用のヒステリシスを提供するために必要となります。

 ISO1211 を持つデジタル入力モジュールの 1 チャネル図 3 ISO1211 を持つデジタル入力モジュールの 1 チャネル
 ISO1228 によるソースまたはシンク モードのデジタル入力モジュールの 8 チャネル動作図 4 ISO1228 によるソースまたはシンク モードのデジタル入力モジュールの 8 チャネル動作

デジタル入力モジュール用の新しい設計

テキサス・インスツルメンツの ISO1211 1 チャネル、ISO1212 2 チャネル、および ISO1228 8 チャネル デバイスは、電流制限が内蔵された絶縁デジタル入力レシーバで、IEC 61131-2 のタイプ 1、2、3 の特性に準拠しています。ISO1211 および ISO1212 は、機能安全用途で必要とされるチャネル間絶縁のために設計されており、ISO1228 はマルチチャネル設計向けに設計されています。ISO1211を持つデジタル入力モジュールの1チャネルの実装を、図 3に示します。抵抗 RSENSE は電流制限を、抵抗 RTHR は電圧遷移スレッショルドを制御します。RSENSE と RTHR の推奨値、およびマルチチャネルや他のシナリオ用のアプリケーション回路は、ISO121x の製品データシートに示されています。ISO121xには正確な電流制限、ヒステリシス付きの電圧コンパレータ、逆極性保護および絶縁が組み込まれているため、システム設計が簡素化され、フィールド側の電源も必要ありません。タイプ 3 の特性では、ISO121x では入力消費電流が 2.5mA 未満に制限されますが、これは従来の手法の 5 分の 1 の値です。ISO1228 を持つデジタル アイソレータの 8 チャネルの実装を、図 4に示します。ISO1228 は同じデバイスでシンクモードとソースモードの両方をサポートしており、図 4に示すように構成できます。RILIM 抵抗は、すべてのチャネルの電流制限値を設定します。RILIM、RTHR、および RPAR の推奨値は、ISO1228「電流制限および診断機能付き 8 チャネル絶縁型デジタル入力」データシートに記載されています。

 基板温度の比較:従来型設計と ISO1212図 5 基板温度の比較:従来型設計と ISO1212
 周囲温度 25°C の条件で、すべてのチャネルがオンの状態における ISO1228 の基板温度図 6 周囲温度 25°C の条件で、すべてのチャネルがオンの状態における ISO1228 の基板温度

オプトカプラを使用する従来の手法と比較して、ISO121xを使用する設計には次の利点があります。

  1. 消費電力の低減:ISO121x の正確な電流制限により、デジタル入力から引き込まれる電流が最良で 5 分の 1 に低減され、消費電力と基板温度が低下します。図 5 に示すように、従来型の設計では室温テストで 84℃まで温度が上昇する可能性がありますが、ISO121x ベースの設計は 45℃と、大幅に温度が低下しています。
  2. 基板とモジュールの小型化:ISO121x ベースの設計では、部品点数が削減されるため、基板も小型化できます。また、消費電力の低減から、より多くのチャネルを、小さなモジュールに組み込めるようになります。
  3. システム設計を簡素化:ISO121x は IEC 61131-2 の入力特性を持っており、電流制限と絶縁はデータシートで規定されています。追加のシュミット トリガ バッファは必要ありません。これにより、システム設計が簡素化されます。
  4. 高速動作:ISO121x は 4Mbps のデータ レートと 150ns のレイテンシを持ち、汎用オプトカプラよりもはるかに高速なインターフェイスが可能になります。
  5. フィールド側の電源が不要:これによって、24V のフィールド側の電源のコネクタ / 端子と、対応するサージ保護のコストを削減できます。
  6. チャネルの独立性:フィールド側の 1 つのチャネルに損害 (たとえば短絡) が発生しても、他のチャネルには影響しません。
  7. 高速:マルチチャネル デバイスのシリアル化では速度が 20kHz 未満に制限されるのに対して、ISO121x デバイスは最高 2MHz のクロックをサポートできます。

マルチチャネル シングルチップ デザイン

図 7は、4 つの ISO1212 デバイスを持つ設計のレイアウトと、競合品の 8 チャネル、シングル チップのデザインとを比較したものです。基板の Y 方向の寸法は、入力ネジ端子とコネクタの配置により制限されます。しかし、X 方向の寸法は、8 チャネル、シングル チップのデザインの方が長くなっています。これは、IC に近い部分の配線集中によって追加スペースが使用されることが原因です。これに対して、ISO1212 にはチャネルが 2 つしかないため、IC をより柔軟に、入力端子の近くに配置でき、結果として配線がはるかに簡素化され、設計が小型になります。

 ISO1212 ベースの設計と、競合品の 8 チャネル、シングル チップ デザインのレイアウト図 7 ISO1212 ベースの設計と、競合品の 8 チャネル、シングル チップ デザインのレイアウト

従来の実装に対する ISO1228 ベース設計の主な利点:

  1. ソース-シンク モード:ISO1228 は、同じデバイスでシンク モードとソース モードの両方をサポートできます。したがって、外部整流器は必要ありません。図 4 は、ISO1228 を使用してシンク モードおよびソース モードでそれぞれ実装された 8 チャネルのデジタル アイソレータの構成を示しています。
  2. 負性抵抗入力構造を使用した熱特性の向上:ISO1228 の入力構造は負の抵抗特性を持っており、入力電圧が高くなると、RPAR を流れる電流の増加を補うためにピン電流が減少します。これにより、図 8に示すように、すべてのピン電圧について、ピンの合計電流が 3.3mA 未満に維持されます。これにより、部品の放熱性能が向上します。図 6.すべての入力が 30V で電流をシンクしている状態の本製品のサーマル イメージを示しています。室温テストの場合、このデバイスは 55°C までのみ動作します。
  3. ワイヤ破損検出機能:PLC 市場においては、センサの配線が PLC からセンサまで非常に長距離を通るため、配線に物理的な損傷が生じても、MCU はセンサが切断されたことを認識できない可能性があります。この状況を防止するために、ISO1228 に断線機能を追加しています。この方式では、センサのリーク電流を利用して、配線が正常で物理的な損傷がないことを検出します。センサのリーク電流がデジタル入力によって検出されない場合、ISO1228 は配線断線の故障として MCU に報告します。
  4. 優れた EMC:DI 部の 8 チャネルすべてがフィールドから信号を受信している場合、アイソレーション バリアを越える通信によって、ガルバニック絶縁型の競合製品では高い EMC ノイズが発生する可能性があります。REが大きい場合、デジタル入力部の隣にある MCU/ FPGA との通信ミスが発生することがあります。TI の ISO1228 は、絶縁バリアをまたぐ通信に特許取得済みの技術を使用しており、図 9に示すように EMC は無視できます。
  5. 入力フィルタ:デジタル入力は主に機械式スイッチで構成されており、オン/オフの切り替え時に変動が発生しやすい傾向があります。ISO1228 には、スイッチによって発生するノイズを除去するために、各チャネルごとに 8 個のプログラム可能な入力フィルタが備わっています。
  6. 損失のない LED 表示:入力状態の表示や手動によるメンテナンスのために、LED 表示は非常に重要です。ISO1228 は、各入力ごとに約 3mA のフィールド側入力電流を利用して LED を点灯させます。図 4 は、各チャネルで LED がどのように接続されているかを示します。これにより、LED 用に追加の電力を消費せずに済み、熱特性の改善にもつながります。
  7. 基板面積の低減:これは、図 4に示すように、8 チャネルのディスクリート実装を 1 つのデバイスで代替する統合ソリューションです。これにより、PCB の面積を大幅に節約でき、同じ基板面積内でより多くのチャネル数を持つ PLC カードの作成が可能になります。
 入力電圧が変化しても常に一定に保たれる ISO1228 のピン電流図 8 入力電圧が変化しても
常に一定に保たれる
ISO1228 のピン電流
 すべてのチャネルがオンの状態における ISO1228 の EMC データ図 9 すべてのチャネルがオンの状態における
ISO1228 の EMC データ

サージ、EFT、ESD への耐性を持つ設計

ISO12xxデバイスは、IEC 61000-4-x標準に従い、サージ、EFT、ESDへの耐性を持つよう設計されています。最良の過渡耐性を実現するための設計およびレイアウトのガイドラインについては、製品データシートのアプリケーション セクションを参照してください。

まとめ

ISO1212 ISO1211、および ISO1228 デバイスはデジタル入力モジュールの現代的な設計となるもので、IEC 61131-2 の入力特性、ヒステリシス付きの電圧コンパレータ、正確な電流制限、ガルバニック絶縁が、小型パッケージに統合されています。ISO121x を使用して設計されたモジュールは、従来型の設計と比較して消費電力が低く、高いチャネル密度を持ち、小型でシンプルな設計が可能になります。

表 1 その他の推奨デバイス
デバイス 最適化されるパラメータ 性能のトレードオフ
SN65HVS880 8チャネルのデジタル入力シリアライザ 絶縁なし、電流制限3.6mA、フィールド側の電源が必要
SN65HVS885 8チャネルのデジタル入力シリアライザ 絶縁なし、電流制限3.6mA、絶縁DC-DCが必要