JAJA561B November   2017  – September 2024 ADS7040 , ADS7041 , ADS7042 , ADS7056

 

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設計目標

入力 ADC 入力 デジタル出力 ADS7042
VinMin = 0V AIN_P = 0V、AIN_M = 0V 000H または 010
VinMax = 3.3V AIN_P = 3.3V、AIN_M = 0V FFFH または 409610
電源
AVDD Vee Vdd
3.3V -0.3V 4.5 V

設計の説明

この設計は、動作時消費電力がわずかnW単位のSAR ADCの駆動に用いる低消費電力アンプを示しています。この設計は、センサ データ収集システム用であり、消費電力がわずか数µWの低消費電力の信号チェーンを必要とします。この SAR ADC 設計を活用できる消費電力の制限が厳しいシステムの例として、PIR センサガス センサ血糖モニタなどがあります。「部品選定」の値を調整して、さまざまなデータ スループット レート、さまざまな帯域幅のアンプを実現できます。『低消費電力センサ測定:3.3V、1ksps、12 ビット シングルエンド、単一電源』では、負電源を接地する、この回路の簡易版を示しています。この例では-0.3V負電源を使用して、最高水準の線形入力信号範囲を達成します。低消費電力 SAR 設計のトレードオフの詳細については、『SAR ADC パワー スケーリング』を参照してください。

仕様

仕様 計算結果 シミュレーション結果 測定結果
ADC 過渡入力電圧セトリング (1ksps) < 0.5 × LSB = 402µV 41.6µV 該当なし
AVDD消費電流(1ksps) 230nA 該当なし 214.8nA
AVDD消費電力(1ksps) 759nW 該当なし 709nW
VDD OPAMP消費電流 450nA 該当なし 431.6nA
VDD OPAMP消費電力 2.025µW 該当なし 1.942µW
AVDD + VDDシステム消費電力(1ksps) 2.784µW 該当なし 2.651µW

デザイン ノート

  1. 同相、出力振幅、線形開ループ ゲインの仕様に基づいて、オペアンプの線形範囲を特定します。これについては「部品選定」で述べます。
  2. 歪みを最小限に抑えるために、CfiltにはCOG (NPO)コンデンサを選定します。
  3. TI プレシジョン ラボ – ADC』トレーニング ビデオ シリーズで、電荷バケツ回路 Rfilt と Cfilt の選択方法を説明しています (『SAR ADC フロント エンド コンポーネント選定の概要』を参照)。これらの部品の値はアンプの帯域幅、データ コンバータのサンプリング レート、データ コンバータの設計に依存します。ここに示す値は、この例のアンプとデータ コンバータで適切なセトリングと AC 性能を実現します。設計を変更するには、別の RC フィルタを選択する必要があります。

部品選定

  1. 低消費電力オペアンプを選定します。
    • 消費電流: 0.5µA未満
    • ゲイン帯域幅積:5kHz 超 (サンプリング レートの 5 倍)
    • ユニティ ゲイン安定
    • LPV811 – 消費電流: 450nA、ゲイン帯域幅積: 8kHz、ユニティ ゲイン安定
  2. 線形動作に対応するオペアンプの最大/最小出力を特定します。
    V ee + 0 V < V out < V dd - 0 . 9 V   from   LPV 811   V cm   specification
    V ee + 10 mV < V out < V dd - 10 mV   from   LPV 811   Vout   swing   specification
    V ee + 0 . 3 V < V out < V dd - 0 . 3 V   from   LPV 811   Aol   linear   region   specification
  3. 推定値による標準消費電力計算(1ksps時)。低消費電力 SAR 設計のトレードオフの詳細については、『SAR ADC パワー スケーリング』を参照してください。
    P AVDD = I AVDD_AVG × AVDD = 230 nA × 3 . 3 V = 759 nW
    P LPV 811 = I LPV 811 × ( V dd - V ee ) = 450 nA × [ 4 . 5 V - ( - 0 . 3 V ) ] = 2 . 16 μW
    P total = P AVDD + P LPV 811 = 759 nW + 2 . 16 μW = 2 . 919 μW
  4. 測定値による標準消費電力計算(1ksps時)。
    P AVDD = I AVDD_AVG × AVDD = 214 . 8 nA × 3 . 3 V = 708 . 8 nW
    P LPV 811 = I LPV 811 × ( V dd - V ee ) = 431 . 6 nA × [ 4 . 5 V - ( - 0 . 3 V ) ] = 2 . 071 μW
    P total = P AVDD + P LPV 811 = 708 . 8 nW + 2 . 071 μW = 2 . 780 μW
  5. 1kspsでセトリングを実現するRfiltとCfiltを求めます。Rfilt と Cfilt を選択するアルゴリズムについては、『Rfilt 値と Cfilt 値を微調整』(『プレシジョン ラボ』のビデオ) を参照してください。最終的に200kΩと510pFという値で、最下位ビット(LSB)の1/2を優に下回るまでセトリングできることが分かりました。

DC 伝達特性

以下のグラフは、0~3.3Vの入力に対する線形出力応答を示しています。ADC のフルスケール範囲 (FSR) は、オペアンプの線形範囲内に収まっています。この件の詳しい理論については、『オペアンプを使用するときの SAR ADC の線形範囲の決定』を参照してください。

AC 伝達特性

帯域幅シミュレーションは、アンプの出力インピーダンスと RC 電荷バケツ回路 (Rfilt と Cfilt) の影響を含んでいます。RC 回路の帯域幅は、以下の式に示すとおり 1.56kHz となります。2kHzという帯域幅のシミュレーション結果は、負荷のインピーダンスと相互作用する出力インピーダンスの影響を含んでいます。この件の詳細については、『TI Precision Labs - Op Amps: Bandwidth 1』(英語) を参照してください。

f c = 1 2 × π × R filt × C filt = 1 2 × π × ( 200 ) × ( 510 pF ) = 1 . 56 k H z

ADC 過渡入力電圧セトリング シミュレーション

以下のシミュレーションは、3V DC入力信号へのセトリングを示しています。このようなシミュレーションは、LSBの1/2 (402µV)以内になるようにサンプル/ホールド キックバック回路が適正に選定されていることを示します。この件の詳しい理論については、『SAR ADC フロント エンド コンポーネント選定の概要』を参照してください。

ノイズ シミュレーション

ここには概算用の簡易なノイズ計算を記載します。抵抗のノイズは 10kHz を超える周波数で減衰するため、この計算では無視されます。

ƒ c = 1 2 × π × R filt × C filt = 1 2 × π × 200 × 510 pF = 1560 Hz
E n = e n 811 × K n × ƒ c = 340 nV Hz × 1 . 57 × 1560 Hz = 16 . 8 μV

計算結果とシミュレーション結果はよく一致しています。この件の詳しい理論については、『Calculating the Total Noise for ADC Systems』を参照してください。

FFT 測定

この性能は、ADS7042EVMに変更を加えて、10Hzの入力正弦波により測定しました。AC性能はSNR=71.0dB、THD=-82.4dB、ENOB (有効ビット数)=11.51であることを示しており、ADCの性能仕様: SNR=70dB、THD=-80dBとよく一致しています。このテストは室温で実施しました。この件の詳細については、『周波数ドメインの概要』を参照してください。

使用デバイス

デバイス 主な特長 リンク 類似デバイス
ADS7042(1) 分解能: 12ビット、SPI、サンプル レート: 1Msps、シングルエンド入力、AVDD入力基準電圧範囲: 1.6V~3.6V SPI インターフェイス付き 12 ビット 1MSPS 超低消費電力、超小型 SAR ADC A/D コンバータ (ADC)
LPV811(2) 帯域幅: 8kHz、レール ツー レール出力、消費電流: 450nA、ユニティ ゲイン安定 シングル チャネル 450nA 高精度ナノパワー オペアンプ オペアンプ
ADS7042はAVDDを入力基準電圧として使用します。TPS7A47 などの高 PSRR LDO を電源として使用してください。
LPV811は低速センサ用途にもよく使用されます。さらに、レール ツー レール出力により、ADCの全入力電圧範囲にわたって線形振幅を実現します。

主要なファイルへのリンク (TINA)

テキサス・インスツルメンツ、『SBAM342 回路』、設計ファイル