INA745xは、多目的のオープン ドレイン ALERT 出力ピンを備えており、複数の診断の報告や、ADC 変換が完了したことの表示に使用できます。表 6-1 に示す診断は定期的に監視され、監視された出力値が関連の範囲外スレッショルドを超えるたびに、ALERT ピンを経由して通知されます。
表 6-1 ALERT 診断の説明| INA745x診断 | DIAG_ALRT レジスタのステータス ビット (RO) | 範囲外スレッショルド レジスタ (R/W) | レジスタのデフォルト値 |
|---|
| 電流下限値 | CURRENTUL | CUL | 0x8000 h (2 の補数) |
| 電流上限値 | CURRENTOL | COL | 0x7FFF h (2 の補数) |
| バス電圧制限超過 | BUSOL | BOVL | 0x7FFF h (2 の補数、正の値のみ) |
| バス電圧低電圧 | BUSUL | BUVL | 0x0000 h (2 の補数、正の値のみ) |
| 温度制限超過 | TMPOL | TEMP_LIMIT | 0xFFFF h (2 の補数、正の値のみ) |
| 電力制限超過 | POL | PWR_LIMIT | 0x7FFF h (2 の補数) |
DIAG_ALRT レジスタからの読み取り値は、ALERT ピンでトリガされた診断の種類を判断するために使用されます。このレジスタは、表 7-11 に示すように、その他の関連診断を監視したり、ALERT ピンの一部の機能の構成にも使用することができます。
- アラート ラッチ イネーブル - ALERT ピンがトリガされた場合、この機能により、すべての診断状態がクリアされてもピンの値は保持されます。DIAG_ALRT レジスタの読み取りによって、ALERT ピンの状態はリセットされます。この機能は、ALATCH ビットを設定することによりイネーブルになります。
- 変換準備イネーブル - ADC 変換が完了して、デジタル インターフェイスから出力値を読み取る準備ができるとアサートされるように、ALERT ピンをイネーブルにします。この機能は、CNVR ビットを設定することによりイネーブルになります。CNVR ビットの設定に関係なく、CNVRF ビットからは変換完了イベントも読み取ることが可能です。
- 平均出力でのアラート比較 - ADC で生成された平均データ値と範囲外スレッショルド値を比較することができます。この機能により、範囲外スレッショルドと比較するときに、出力データからさらにノイズを除去して、ノイズに起因する誤アラートを防止できます。ただし、平均化に必要な時間があるため、診断は遅延します。この機能は、SLOWALERT ビットを設定するとイネーブルになります。
- アラート極性 - デバイスは ALERT ピンのアクティブ状態を反転させることができます。ALERT ピンはオープン ドレイン出力のため、抵抗によってプルアップする必要があります。ALERT ピンはデフォルトでアクティブ Low であり、APOL 制御ピンを使用してアクティブ High 機能に構成できます。
ALERT ピンで通知されないが DIAG_ALRT レジスタの読み取りによって利用可能なその他の診断機能:
- 算術オーバーフロー - MATHOF ビットにより示され、算術演算によって内部レジスタのオーバーフローが発生した場合に通知されます。
- メモリ ステータス - MEMSTAT ビットにより示され、デバイスの不揮発性トリム メモリの状態を監視します。デバイスが正常に動作している場合、このビットは常に 1 です。
- エネルギー オーバーフロー - ENERGYOF ビットにより示され、データの蓄積によって ENERGY レジスタがオーバーフロー状態に達すると通知されます。
- 充電オーバーフロー - CHARGEOF ビットにより示され、データの蓄積によって CHARGE レジスタがオーバーフロー状態に達すると通知されます。
ADC 変換完了イベントが通知されるように ALERT ピンを構成すると、ALERT ピンは多目的通知出力になります。図 6-11 は、INA745x デバイスが過電流イベント、バス低電圧イベント、過熱イベント、電力制限超過イベントの影響を受けているときに、デバイスが ADC 変換完了イベントを通知している例です。