JAJY118A october   2020  – october 2020 BQ79600-Q1 , BQ79606A-Q1 , BQ79616-Q1 , CC2642R-Q1

 

  1.   1
  2.   概要
  3.   概要
  4.   EV 内の分散型バッテリ管理システム
  5.   有線 BMS とワイヤレス BMS の比較と検討事項
  6.   テキサス・インスツルメンツの有線とワイヤレスそれぞれの BMS プロトコルの比較
  7.   まとめ

テキサス・インスツルメンツの有線とワイヤレスそれぞれの BMS プロトコルの比較

両方のソリューションで使用しているテキサス・インスツルメンツのプロトコルをもう少し詳細に観察すると、有線ソリューションは、差動、双方向、半二重のインターフェイスを使用しているので、ハイサイドとローサイド両方の通信インターフェイスでトランスミッタ (TX) とレシーバ (RX) を実装し、デフォルトではローサイドからハイサイドに情報を伝搬します。これらの TX 機能と RX 機能は、デバイスのベースまたはスタックを検出するハードウェアを基盤とする自動的な制御で動作し、各モジュール宛にデータを伝搬するときに、データのリクロック (クロックとの再同期) を実施します。BQ796xx デバイスの RX トポロジーは RS-485 に似ていますが、自動車環境で一般的に見受けられるノイズの多い条件下で発生する高い同相電圧を減衰させるために設計上のメカニズムを追加している点が異なります。各バイトを 2MHz (パルスごとに 250ns、または 2 つ 1 組ごとに 500ns) のレートで送信します。図 4 に示すように、各バイト間の時間は、UART のボーレート (通常動作時は 1Mbps) によって異なりますが、バイトごとの時間は常に一定です。

表 1 有線 BMS とワイヤレス BMS の比較と検討事項。
検討事項 有線 BMS ワイヤレス BMS
重量
  • 標準的な信頼性規格
  • 自動車全体の重量と複雑さが増大
  • 自動車全体の重量と複雑さが減少
設計のフレキシビリティと保守性
  • 全体のフットプリント大型化に伴うフレキシビリティの低下
  • 保守がより困難になる
  • ケーブルを取り外した後はモジュール構造
  • フットプリントの小型化により、設計のフレキシビリティが向上し、車両内での配置がよりフレキシブルになる
  • 保守がいっそう容易
測定時
  • 電圧と電流の時間同期型の測定は、上下に伝播する必要があり、読み取りの間に遅延が生じる
  • 意図的な遅延型測定機能を使用した性能向上が可能
  • ワイヤレス・システムの場合、自然に実施可能な時間同期型の測定
  • 同期型をいっそう強化したセンシング機能を追加する能力にも対応
信頼性
  • 配線は信頼性が高く、機能安全基準を満たしているが、時間の経過とともに断線する可能性がある
  • リング・アーキテクチャには、双方向の冗長ケーブルが内蔵されている
  • 修理の複雑度が増す可能性がある
  • 保守対象の配線が存在しない
  • 設計では、過酷な車載用無線周波数の環境や非視線方向の課題を克服する必要がある
セキュリティ
  • 配線内で通信が完結し、全面的に安全なシステム通信
  • セキュリティ・プロトコルが欠けている設計が不十分なシステムは、侵入される可能性がある
GUID-0F452924-9322-4844-B1F4-3A422F3634A5-low.png図 4 BQ796xx のバイト・レベルの通信。
GUID-09688C14-E60A-479C-8673-FDE7539C1E4D-low.png図 5 有線の絶縁型回路の例。

有線インターフェイスは、EMC/EMI の仕様に関する自動車分野の厳格な制限の中でも信頼性を維持できるように、静電容量性または誘導性の絶縁をサポートする設計を採用しています。図 5 に、複数のコンデンサと複数のチョークを使用する 1 つの例を示します。設計者の皆様は、各バッテリ・モニタの PCB の間に位置する回路を設計することになります。最大 64 台のデバイスすべてが 1 つのスタック内に存在し、可変サイズである自動車のバッテリ・モジュールをサポートすることになります。

次期 EV を開発する際に、ティア 1 メーカーと OEM (自動車メーカー) から課されると思われる要件を満たせるように、テキサス・インスツルメンツは Bluetooth® Low Energy をベースとし、2.4GHz の周波数帯で動作する独自のワイヤレス BMS プロトコルを開発しました。表 2 に、テキサス・インスツルメンツのワイヤレス BMS プロトコルの特長を示します。スター・ネットワーク構成に対応し、集中型ユニットごとに最大 32 個のノードをサポートします。高いスループットと短い待ち時間でデータを送信する能力があります。また、機能安全に関連するプロトコルを使用します。

表 2 テキサス・インスツルメンツのワイヤレス BMS システムのターゲット。
機能 目標値
安全性重視の応答時間 (遅延時間) 最大 100ms (安全性)
データ・スループット ワイヤレス・デバイスごとに最大 400 バイト
リンクの信頼性 99.9999%
セキュリティ セキュリティを確保した暗号化済みメッセージ
スケーラビリティ 最大 32 台以上のワイヤレス・デバイス
マルチクラスタをサポート あり
機能安全 システム・レベルで ASIL-D / ASIL-C に対応
消費電力 プライマリ・ノードで <1mA (平均)、セカンダリ・ノードで <1mA (平均)
リンク・バジェット >95dB
ネットワーク形成時間 <600ms

これら 2 つのプロトコルの間の主な違いは、デイジーチェーン接続したツイストペア配線を使用してマイコンからすべての最上位モニタへ、またその逆にデータを伝搬するか、それともワイヤレスのスター・ネットワーク構成を使用し、個別のモジュールが互いに独立した形でホスト・プロセッサとの通信を実施し、データを送り返すか、という点です。どちらのソリューションも、複数の仕様を規定しています。これらの仕様は、車載システムが、関連するバッテリ・パックの大量のデータを迅速、安全、かつ信頼性の高い方法で送受信するうえで重要です。