JAJY157D October   2018  – April 2025 OPA855 , OPA857 , OPA858 , OPA859

 

  1.   1
  2.   概要
  3.   自動運転車による検出と画像処理
  4.   LiDAR の種類
  5.   LiDAR サブシステム
  6.   LiDAR システムの統合
  7.   まとめ
  8.   その他の資料

LiDAR の種類

入手可能な LiDAR システムにはさまざまな種類がありますが、ここでは主にパルス幅の狭い (短パルス) ToF 方式に注目します。LiDAR システムには、以下のような 2 種類のビーム ステアリング方式があります。

  • 機械式 LiDAR は高グレード光学系と回転機構を使用して、広い (一般的には 360 度) FOV (視野角) を実現します。機械的側面では、広い FOV にわたって高い信号雑音比 (SNR) を実現しますが、その結果、かさばる実装を招きます (ただし、最近はサイズの縮小が進んでいます)。
  • 半導体 LiDAR は機械式の回転コンポーネントを搭載していないので、FOV は狭くなりますが、安価でもあります。自動車のフロント、リア、サイドで複数のチャネルを使用し、それらのデータを融合する方法で、機械式 LiDAR に匹敵する FOV を達成できます。

半導体 LiDAR には、以下のような複数の実装方式があります。

  • MEMS (微小電気機械システム) LiDAR。MEMS LiDAR システムは、超小型のミラーを複数使用しており、電圧のような刺激を印加する方法でそれらのミラーの角度を変えます。実質的に、MEMS は、機械式スキャン ハードウェアを電子機械式の等価機能で置き換えるものです。レシーバの光収集開口部は、受信 SNR を決定する要因ですが、MEMS の場合、開口部はかなり小さくなっています (数 mm)。複数の方向にレーザー ビームを動かすためには、複数のミラーをカスケード接続する必要があります。これに伴う配列プロセスは重要です。それに加えて、いったん取り付けた後も、移動する自動車でごく一般的に発生する衝撃や振動に対して敏感に反応します。MEMS ベースのシステムで発生する可能性のあるもう 1 つの電位落とし穴は、-40°C から始まる自動車の仕様ですが、これは MEMS デバイスにとって課題となる可能性があります。
  • フラッシュ LiDAR。フラッシュ LiDAR の動作は、光学式フラッシュを使用する標準的なデジタル カメラの動作によく似ています。フラッシュ ライダーでは、単一の大領域レーザー パルスが前方の環境に照射され、レーザーに近接して配置されたフォト ディテクタの焦点面アレイが後方散乱光をキャプチャします。このディテクタは画像の距離、位置、反射強度をキャプチャします。機械式レーザー スキャン方式とは異なり、この方式はシーン全体を単一の画像としてキャプチャするので、データ キャプチャ レートはかなり高速になります。加えて、画像全体を 1 回のフラッシュでキャプチャするので、画像の歪みを招く可能性のある振動の影響に対して、この方式はより堅牢です。この方式の短所は、実際の環境でリトロリフレクター (再帰反射器) が存在する可能性があることです。リトロリフレクターは、大部分の光をそのまま反射し、散乱光がほとんど生じません。その結果、センサ全体が有効な情報を実質的に何も取得できず、役に立たない状態になります。この方式の別の短所は、シーン全体を照射し、十分遠くまで到達させるために、非常に大きいピーク レーザー出力が必要になることです。目の安全性要件に準拠するため、フラッシュ LiDAR は主に短距離から中距離の検出システムで使用されます。
  • 光学式フェーズ アレイ (OPA)。OPA の原理は、フェーズド アレイ レーダーに似ています。OPA システムを使用する場合、単一の光学式位相変調器が、レンズを通過する光の速度を制御します。光の速度の制御を通じて、図 2 に示すように、波面 (ウェーブフロント、時刻方向の光の等高線) を制御することができます。上部ビームは遅延していませんが、中下部ビームは量を大きくして遅延します。この現象は実質的に、レーザー ビームを「操作」し、複数の方向に向けることになります。同様の方法で、センサへ向かう反射された散乱光を操作することもでき、その結果、機械式可動部品が不要になります。
     OPA です。図 2 OPA です。
  • 周波数変調連続波 (Frequency-modulated continuous wave、FMCW) LiDAR。ここまでに説明した各方式がパルス幅の狭い光を使用する ToF の原理をベースとしているのに対し、FMCW LiDAR はコヒーレント (可干渉) 方式を使用して周波数変調されたレーザー光の短いチャープを複数生成します。反射されたチャープの位相と周波数を測定することで、システムはドップラー原理を使用して距離と速度の両方を測定できます。FMCW 方式を使用する場合、計算負荷と光学系は簡素化できます。ただし、チャープを生成するために、複雑さが増す結果になります。FMCW システムに必要なレーザー電力は、パルス形式の ToF システムが必要とする電力よりかなり小さいので、FMCW は非常に長距離のセンシング アプリケーションに適しています。また、霧、雨、雪などの悪天候下でも優れた性能を発揮します。