JAJU534E october   2022  – july 2023

 

  1.   1
  2.   概要
  3.   リソース
  4.   特長
  5.   アプリケーション
  6.   6
  7. 1システムの説明
    1. 1.1 主なシステム仕様
  8. 2システム概要
    1. 2.1 ブロック図
    2. 2.2 主な使用製品
      1. 2.2.1 C2000 リアルタイム MCU LaunchPad
      2. 2.2.2 SN65HVD78
      3. 2.2.3 TLV702
      4. 2.2.4 TPS22918-Q1
    3. 2.3 設計上の考慮事項
      1. 2.3.1 Tamagawa T フォーマットのプロトコル
      2. 2.3.2 C2000 T フォーマット・エンコーダ・インターフェイスの概要
      3. 2.3.3 TIDM-1011 の基板実装
      4. 2.3.4 MCU のリソース要件
      5. 2.3.5 デバイス固有のリソース使用
        1. 2.3.5.1 CRC の計算
        2. 2.3.5.2 入力、出力信号、CLB タイル
      6. 2.3.6 CLB T フォーマットの実装の詳細
        1. 2.3.6.1 トランザクションの波形
          1. 2.3.6.1.1 IDLE 状態
          2. 2.3.6.1.2 TRANMIT_DATA 状態
          3. 2.3.6.1.3 WAIT_FOR_START 状態
          4. 2.3.6.1.4 RECEIVE_DATA の状態
        2. 2.3.6.2 通信タイルの設計
        3. 2.3.6.3 ロジック・ビュー
      7. 2.3.7 CLB 受信データ CRC の実装
      8. 2.3.8 PM T フォーマット・エンコーダ・インターフェイス・ライブラリ
        1. 2.3.8.1 PM T フォーマットのリファレンス実装コマンド
        2. 2.3.8.2 PM T フォーマットのリファレンス実装でサポートされる機能
  9. 3ハードウェア、ソフトウェア、テスト要件、テスト結果
    1. 3.1 ハードウェア
      1. 3.1.1 TIDM-1011 のジャンパ構成
    2. 3.2 ソフトウェア
      1. 3.2.1 C2000 ドライバ・ライブラリ (DriverLib)
      2. 3.2.2 C2000 SysConfig
      3. 3.2.3 C2000 構成可能ロジック・ブロック・ツール
      4. 3.2.4 Code Composer Studio™ と C2000WARE-MOTORCONTROL-SDK のインストール
      5. 3.2.5 リファレンス・ソフトウェアの場所
    3. 3.3 テストと結果
      1. 3.3.1 ハードウェアの構成
      2. 3.3.2 プロジェクトのビルドおよびロード
      3. 3.3.3 コードの実行
      4. 3.3.4 ケーブル長の検証
      5. 3.3.5 ベンチマーク
      6. 3.3.6 トラブルシューティング
  10. 4設計ファイル
  11. 5関連資料
    1. 5.1 商標
  12. 6用語
  13. 7著者について
  14. 8改訂履歴

Tamagawa T フォーマットのプロトコル

Tamagawa (多摩川精機) は、工作機械、ロボット、モーター・ドライブなどの高精度位置情報取得に使用されるエンコーダ技術のメーカーです。Tamagawa 製のロータリー・エンコーダには、多く分けて増分エンコーダと絶対エンコーダの 2 種類があります。増分エンコーダは一連のパルスを送信し、絶対エンコーダは絶対デジタル値を送信します。絶対エンコーダには、シングル・ターンとマルチ・ターンの両方のタイプがあります。

TIDM-1011 リファレンス・デザインでは、RS-485 のライン・ドライバ経由でデジタル出力を供給する絶対エンコーダについて扱います。TIDM-1011 でサポートされているトランザクションのプロトコル形式を、T フォーマットと呼びます。

注: このセクションでは、T フォーマットのプロトコルの概要を紹介します。具体的な情報については、Tamagawa (多摩川精機) から入手可能な T フォーマットの仕様を参照してください。
注: Tamagawa 製のすべてのエンコーダが T フォーマットのプロトコルを使用しているわけではありません。エンコーダの仕様を確認してください。

C2000 T フォーマット・エンコーダ・インターフェイスは、コントローラがエンコーダと通信するために必要な物理層を提供します。このエンコーダ・インターフェイスには、エンコーダとのデジタル情報の送受信を行うための RS-485 ドライブ制御機能があります。ここでの T フォーマットのトランザクションとは、コントローラからの要求の送信と、エンコーダからの応答を合わせたものです。エンコーダ・インターフェイスの観点から、トランザクションは図 2-2 に示す FRAME_STATES に分割できます。

  1. IDEL:RS-485 アクティビティなし
  2. TRANSMIT_DATA:コントローラはエンコーダに要求を送信する
  3. WAIT_FOR_START:エンコーダの応答を待つ
  4. RECEIVE_DATA:コントローラはエンコーダの応答を受信する
  5. IDLE に戻る

このパターンは、エンコーダとのトランザクションごとに繰り返されます。

GUID-20221011-SS0I-GBLK-DPTC-MHLKHV03BGDM-low.svg図 2-2 T フォーマットのフレーム
注: 図 2-2 には、C2000 エンコーダ・インターフェイスの実装に関連する情報が含まれています。たとえば、CLB は SPI クロックと TxEN 信号を駆動します。

T フォーマットの通信プロトコルは、データの読み出し、リセット、EEPROM へのアクセスという 3 種類のトランザクションに大きく分けられます。各トランザクションには、プロトコルによって定義された一意のデータ ID があります。データ ID は、エンコーダ・インターフェイス経由でコントローラが行う特定の要求を識別するために使用されます。

表 2-2 T フォーマットのトランザクション
トランザクションのタイプ データ ID トランザクション
読み出し ID 0 1 回転の絶対データを読み出し
ID 1 マルチ・ターンのデータ
ID 2 エンコーダ ID
ID 3 上記のすべてとエンコーダのエラー・ステータス
リセット ID 7 1 回転の絶対データをリセット
ID 8 マルチ・ターン・データのリセット
ID C エラーのリセット
EEPROM ID D エンコーダの EEPROM の読み取り
ID 6 エンコーダ EEPROM への書き込み

各トランザクションは 10 ビットのフィールドで構成されます。各フィールドは、表 2-3 に示すような形式です。最初のビットはスタート・ビット (常に 0)、最後のビットは区切りビット (常に 1) です。スタート・ビットと区切りの間にある 8 ビット・データの内容は、フィールドのタイプによって異なります。

表 2-3 T フォーマットのフィールド形式
ビット 1 ビット 2 ビット 3 ビット 4 ビット 5 ビット 6 ビット 7 ビット 8 ビット 9 ビット 10
コンテンツ スタート・ビット
は常に 0
8 データ・ビット:LSB が先頭にある
この内容はフィールドによって異なります。これら 8 ビットのデータは CRC の計算に含まれます。
区切りビット
は常に 1

T フォーマットのプロトコルで定義されるフィールドは次のとおりです。

    ControlField (CF) すべての要求とすべての応答で最初にあるフィールド。ControlField には、トランザクションの一意のデータ ID が含まれます。
    StatusField (SF) エンコーダからのステータス情報。
    DataFields (DFx) エンコーダから取得した情報。DataFields の内容と数は、トランザクションによって異なります。DataFields の例には、エンコーダの ID 、位置情報、エラーコードなどがあります。DataFields の数は最大 8 つです。
    CRCField データの 8 ビット CRC (巡回冗長性検査) 値。CRCField は、EEPROM の読み取りまたは書き込み要求の最後のフィールドです。CRCField は常に、エンコーダの応答の最後のフィールドです。
    EEPROM AddressField (ADF) EEPROM トランザクションで読み書きされるアドレス。
    EEPROM DataField (EDF) EEPROM トランザクションで読み取られたデータ、または書き込まれるデータが含まれます。
注: 各フィールドの具体的な内容については、Tamagawa から入手できる T フォーマットの仕様を参照してください。

要求で使用されるフィールドを、表 2-4 に示します。トランザクションを開始するため、コントローラはエンコーダ・インターフェイス経由で要求を送信します。要求は、Data ID を含む ControlField で開始されます。エンコーダは、データ ID を使用して、要求されたトランザクションを正確に識別します。読み出し要求またはリセット要求に必要なのは、ControlField のみです。EEPROM の読み取りまたは書き込みの場合、コントローラは EEPROM アドレス・フィールドと EEPROM データ・フィールド (書き込み用) に続いて、CRCField も送信します。

表 2-4 T フォーマットの要求フィールド
要求タイプ 送信されるフィールド
読み出し ControlField
リセット ControlField
EEPROM 書き込み ControlField EEPROM AddressField EEPROM DataField CRCField(1)
EEPROM 読み出し ControlField EEPROM AddressField CRCField
CRC の計算には、制御、EEPROM アドレス、EEPROM データの各フィールドの 8 ビット・データが含まれます。スタート・ビットと区切りビットは除外されます。

エンコーダの応答で使用されるフィールドは、要求によって異なります。読み出しおよびリセットのトランザクション (表 2-5) では、エンコーダが ControlField のエコーで応答し、その後に StatusField と 1 つ以上の DataField が続きます。最後に、エンコーダは常に CRCField を送信します。CRCField は、受信データの整合性チェックとして使用できます。

表 2-5 読み出しおよびリセット用の T フォーマット応答フィールド
データ ID タイプ 制御
フィールド(1)
ステータス・
フィールド
データ・フィールド (DF0:DF1:…DF7) + CRC (2) (3)
ID 0 読み出し CF SF ABS0(4) ABS1 ABS2 CRC
ID 1 読み出し CF SF ABM0(5) ABM1 ABM2 CRC
ID 2 読み出し CF SF ENID(6) CRC
ID 3 読み出し CF SF ABS0 ABS1 ABS2 ENID ABM0 ABM1 ABM2 ALMC(7) CRC
ID 7 リセット CF SF ABS0 ABS1 ABS2 CRC
ID 8 リセット CF SF ABS0 ABS1 ABS2 CRC
ID C リセット CF SF ABS0 ABS1 ABS2 CRC
CF:ControlField。要求で送信された ControlField と一致します。
DF:DataField。トランザクションに応じて最大 8 つのフィールド。
CRCField は常に、最後に使用された DataField の直後に送信されます。CRC には、使用される CF + SF + DataField の 8 ビットのデータが含まれます。各フィールドの開始ビットと区切りは除外されます。
ABS:1 回転内の絶対データ。3 つのフィールドを使用します。
ABM:マルチ・ターンのデータ。3 つのフィールドを使用します。
ENID:エンコーダ ID。1 つのフィールド。
ALMC:エンコーダの誤差。1 つのフィールド。

次のデータ読み出しの例では、コントローラがマルチ・ターンのデータ (データ ID 1) を要求します。表 2-5 を参照すると、応答の DataField はマルチ・ターンのデータ (ABM0:ABM1:ABM2) に対応しています。

表 2-6 データ読み出しの例
要求 データ ID 1 の
ControlField
応答 データ ID 1 の
ControlField
StatusField DataField0 DataField1 DataField2 CRC

EEPROM トランザクションの場合、表 2-7 に示すように、エンコーダは ControlField + EEPROM AddressField + EEPROM DataField + CRCField で応答します。

表 2-7 EEPROM 読み取り / 書き込み応答フィールド
データ ID 要求 フィールド 0 フィールド 1 フィールド 2 フィールド 3
ID 6 書き込み ControlField EEPROM
AddressField
EEPROM
DataField (1)
CRCField(3)
ID D 読み出し ControlField EEPROM
AddressField
EEPROM
DataField (2)
CRCField
エンコーダの EEPROM から読み取られたデータ。
EEPROM に書き込まれるデータ。これは、要求の DataField のエコーです。
CRC の計算には、制御、EEPROM アドレス、EEPROM データの各フィールドの 8 ビット・データが含まれます。各フィールドの開始ビットと区切りは除外されます。