JAJY139 November   2023

 

  1.   1
  2.   概要
  3.   概要
  4.   高電圧である理由
  5.   部品の技術革新によるワイド バンドギャップ FET 性能の最適化
  6.   最適なゲート ドライバの選択
  7.   適切なコントローラの選択
  8.   トポロジの技術革新による電力密度の最大化
  9.   システム レベルの技術革新による高い効率目標の達成
  10.   EMI の課題への対処
  11.   まとめ
  12.   その他の資料

システム レベルの技術革新による高い効率目標の達成

今日の部品とトポロジの技術革新によって、これまでよりもはるかに高効率の電力変換システムの実現が可能になりました。新たな DC グリッド システムでは、従来の集中型 AC グリッド システムよりもさらにシンプルで効率的、かつ信頼性の高い高電圧ソリューションが提供されています。たとえば、太陽光発電 (PV) 電源システムでは、PV パネルから 120V または 240V の AC グリッドへの電力変換段はわずか 1 つしか必要ありません。分散型 DC グリッド システムは、高電圧電力変換を大幅に簡素化し、システムの可用性と信頼性を向上させることができます。

システム アーキテクチャの技術革新にとどまらず、制御システムの技術革新も高電圧電力変換システムを簡素化し、改善する方法の 1 つです。PFC を事例に説明します。AC を使う大電力アプリケーションでは、インダクタの電流リップルを低く抑えることがきるため CCM PFC を第一に選択すべきです。そのため、より小型の差動電磁干渉 (EMI) フィルタが必要になります。臨界導通モード (CRM) PFC は、CCM PFC と比較して、PFC インダクタ電流が常にゼロから始まるか、またはそれよりも小さいインダクタンスでマイナスから始まるため、ターンオンの瞬間のパワー スイッチの電流がほぼゼロになって、スイッチング損失が大幅に低減され、効率が高くなります。ただし、同じ電力を供給する場合、インダクタの電流リップルは CCM PFC よりもはるかに高くなるため、EMI フィルタの設計が困難になる可能性があります。

効率と差動 EMI ノイズ レベルの適切なバランスをもたらす 3 つ目のオプションは、マルチモード動作 (AC サイクルごとに CCM 動作と CRM 動作を組み合わせた動作) です。マルチモード動作では、PFC が 1 つの AC サイクルで CCM と CRM の両方の動作を行えるようにするために、PFC インダクタのインダクタンスは CCM 動作で使用される PFC インダクタよりも小さく、かつ CRM 動作で使用される PFC インダクタよりも大きくする必要があります。図 11 に、これら 3 つのモードにおける電流リップルのエンベロープを示します。

GUID-20231004-SS0I-95PG-HZPQ-05M0LC5SRK4M-low.png図 11 CCM、CRM、マルチモードの各動作における PFC インダクタ電流 (左から右)

図 12 に、同じ仕様のマルチモード PFC と CRM PFC (ゼロ電圧スイッチングが保証されるとした場合) の損失比較を示します。マルチモード PFC 設計では、動作周波数範囲 60kHz~250kHz の 150µH PFC インダクタを搭載しているのに対し、CRM PFC 設計では、動作周波数範囲 75kHz~750kHz の 25µH PFC インダクタを搭載しています。その結果、CRM PFC は、より高い動作周波数とより小さなインダクタによって、半分の負荷で FET 損失を 40% 以上低減します。このことは、高効率の高電圧電力変換システムが、ソフト スイッチング トポロジを採用する方向に移行すべきことを示しています。

GUID-20231004-SS0I-2MR1-NFVN-ZLRXKQ9GMMBS-low.png GUID-20231004-SS0I-ZQGH-X80P-JRRXMWLSSVNV-low.png図 12 1.8kW 電源ユニットに搭載されたマルチモード PFC (左) と CRM PFC の周波数スペクトルと FET 損失