JAJA691 September   2021 TMAG5170 , TMAG5170-Q1 , TMAG5173-Q1

 

  1.   商標
  2. 1高速での高精度位置検出を実現
  3. 2消費電力の最適化
  4. 3フレキシビリティの向上を実現
  5. 4信頼性の向上
  6. 5まとめ
  7. 6その他の資料

フレキシビリティの向上を実現

ホール・エフェクト・センサを使用した設計で最も重要な唯一の設計上の検討事項は、磁石に対するセンサの配置です。センサの配置にフレキシビリティがないと、最終製品のフォーム・ファクタが望ましくないものになる可能性があります。新規設計のさまざまな機械的側面は、多くの場合、設計プロセスの初期段階では十分に定義されていません。したがって、リニア 3D ホール・エフェクト位置センサは、選択可能な磁気感度範囲、ゲインおよびオフセットの補正、可変な更新レート、温度補償など、設定を変更できる機能を備えている必要があります。TMAG5170 はこのような機能を提供します。このデバイスは汎用性が高いため、あらゆる設計フェーズで構成変更が可能で、さまざまなアプリケーションに適しています。

一般に、温度が上昇すると、磁石の残留磁気すなわち磁束密度を示す値は減少します。さまざまな種類の磁石 (ネオジム鉄ボロンやフェライト磁石など) を使用したシステムの性能を向上させるために、温度補償機能を備えたリニア 3D ホール・エフェクト位置センサを使用すると、より高いフレキシビリティが得られます。TMAG5170 は、オンボードで設定可能な温度補償機能を搭載しており、磁石のみ、またはセンサのみが温度変化にさらされる場合はオフにすることもできます。

ジンバル・モーターは、特定の感度範囲やその他のパラメータに合わせた構成変更を必要とするアプリケーションの例です。ジンバル・モーターは、MCU に角度測定情報を提供する、ハンドヘルド・カメラ・スタビライザやドローンで使用されています。これらのモーターは、動きが発生したときにモーターの位置を常に調整することで、映像を安定させます。正確かつ高精度に角度を測定できる、軸上または軸外に配置されたセンサ (図 3-1を参照) を使用すると、磁石とセンサの配置の柔軟性を持たせることができます。


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図 3-1 ハンドヘルド・ジンバル・モーターで 3D リニアを使用した軸外角度測定

家電製品、試験および測定機器、パーソナル・エレクトロニクス (図 3-2を参照) のヒューマン・インターフェイスおよび制御では、ダイヤルが回るたびに磁界を高精度で測定できるリニア 3D ホール・エフェクト位置センサのメリットを活用できます。磁界情報を使って、いずれか2 つの次元 (XY、YZ、または ZX) 間の角度位置を計算します。 この図ではTMAG5170 のセンサ同一平面外 (アウトオブプレーン) の構成でダイヤルが実装されていますが、図に示す 3 つの方法のどれでも実施可能であり、柔軟性がさらに高くなります。X および Y 成分の大きな変化を監視してプッシュ検出を実装できるほか、 3D 感度を使って理想的な構成からのずれを検出することができます (3 番目の未使用 Z 軸を監視)。 これにより、ダイヤルの磨耗や破損に対する予知保全のアラートを実現できます。


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図 3-2 ノブまたはダイヤル・アプリケーションでリニア 3D ホール・エフェクト位置センサを使用した同一平面外角度測定の例

回転シャフトの角度測定を計算する際に、軸上での測定 (センサが回転磁石の直下または直上にある) であれば、等価な大きさの磁界ベクトルが得られるので、最も正確な磁界測定が可能になります。しかし、図 3-2 に示すヒューマン・インターフェースとコントロール・ノブの場合、シャフトがセンサの配置を妨げているため、軸上の実装は不可能です。X および Y 成分を監視することで、磁界は正弦関数と余弦関数で表現され、アークタンジェント関数を使用すればそれらの間の角度を計算できます。

図 3-3 に、ダイヤルのように一定速度で回転する磁石により生成される磁界を示します。BX は X 方向の磁界、BY は Y 方向の磁界を表しています。これらの正弦波形および余弦波形 (BX および BY) は、軸上での測定結果を表します。同一平面外 (アウトオブプレーン) 実装 (先に 図 3-2 で示したもの) では、これとは異なる磁界強度が得られるため角度計算が複雑になります。この場合、 1 つの磁界ベクトルの大きさが他の磁界より小さくなる可能性があります。図では、これを B X に対して BX(OFF-AXIS) と示しています。2 つの適切な波形を得る代わりに、BX(OFF-AXIS) 磁界では歪みが生じているので、角度計算誤差が発生します。

この他に、磁界測定で考慮する必要のあるもう 1 つの要素はオフセットです。測定値全体をオフセット (図 3-3では 3 つの下向き矢印で表示) の分だけ減少させて、BX(OFF-AXIS)の磁界ベクトルに一致する BX(OFF-AXIS, OFFSET)の磁界ベクトルを効果的に生成することにより、小さな磁界オフセットを補正し、正確な回転角度計算を行います。単純化のため、このオフセットは 1 つの測定軸のみにあるものとしています。実際には、すべての軸に固有のオフセットが存在し、補正が必要です。オフセットを除去した状態で、磁界ベクトルの 1 つを正規化して、他のベクトルと一致させる必要があります。この例では、BX(OFF-AXIS) に合わせて B Yを正規化します (BY(NORMALIZED)と表示)。この大きさは BX(OFF-AXIS)を BYで割った値に等しくなります。このゲインおよびオフセット補正を行うように TMAG5170 を設定すると、最も正確な角度計算が保証されます。また、設計にとって最も便利な場所にセンサを配置できる柔軟性も備えています。


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図 3-3 ゲインおよびオフセット補正の XY 例