JAJA911A June   2025  – August 2025 BQ76972

 

  1.   1
  2.   概要
  3.   商標
  4. 1はじめに
  5. 2BQ769x2 クーロン カウンタ電流誤差の算出
  6. 3センス抵抗の設計に関する考慮事項
  7. 4電流検出回路の診断
  8. 5クーロン カウンタの蓄積された電荷測定
  9. 6システム実装
  10. 7まとめ
  11. 8参考資料
  12. 9改訂履歴

センス抵抗の設計に関する考慮事項

バッテリー マネジメント システムにおいて、シャント抵抗はその高精度、低コスト、シンプルさから、充電および放電電流の測定に一般的に使用されます。ただし、適切な設計およびキャリブレーションが行われない場合、シャント抵抗による誤差が電流測定誤差の主因となる可能性があります。

抵抗器の許容誤差および温度係数は、抵抗の精度を示す重要な仕様です。シャントの許容誤差は、室温でのキャリブレーションによって補正可能ですが、温度変化に伴うドリフト誤差は温度に依存して変化するため、補正が困難です。特に BMS アプリケーションにおいては、低電圧バッテリー パックの多くが自然空冷であるため、温度係数の小さい抵抗を使用することで電流検出精度の向上が期待できます。

熱起電力 (EMF) もゼーベック効果により精度に影響を与えます。熱起電力は、数十~数百マイクロボルトに達する可能性があり、フルスケール範囲が非常に小さい場合には許容できない誤差となります。そのため、シャント抵抗を選定する際には、温度上昇を最小限に抑えることが重要となります。

温度上昇の影響を最小限に抑えるためには、高い定格電力および低い温度係数を持つシャント抵抗を選定することが推奨されます。また、熱特性を向上させるために PCB レイアウトも慎重に設計する必要があり、電流の流れる方向によってシャントの温度係数が影響を受けないように配慮する必要があります。

この問題に対処するための別の手法として、図 3-1 に示すようにケルビン接続を採用することが必要です。差動電圧を測定するために、2 本の独立した配線が使用されます。このような構成により、配線抵抗やシャントの銅電極による温度ドリフトに起因する誤差を排除することが可能です。

 ケルビン接続図 3-1 ケルビン接続