JAJA637A October   2018  – September 2024 ADS8528 , ADS8548 , ADS8568 , INA828 , LMH6642 , LMH6643 , LMH6643Q-Q1 , LMH6644 , OPA2863 , OPA2863A , OPA827 , OPA863 , OPA863A

 

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  3.   商標

入力 ADC 入力 デジタル出力 ADS7042
VinDiffMin = –10V CH_x = –10V 8000H
VinDiffMax = +10V CH_x = +10V 7FFFH
電源
AVDD DVDD HVDD (VCC) HVSS (VEE)
5.0 V 3.3 V +15 V -15 V

設計の説明

計装アンプは低ノイズ、低オフセット、低ドリフト、高 CMRR、高精度のために最適化されています。しかし、これらのアンプで高精度 ADC を駆動した場合、高精度 ADC のアクイジション時間内に信号を適切に整定させることができない場合があります。このリファレンス デザインでは、広帯域幅バッファ (OPA827) と計装アンプを組み合わせることで、より高いサンプリング レートで良好なセトリングを達成する方法を説明します。このバッファ付き INA828 計装アンプは、ADS8568 SAR ADC を駆動して、同相電圧範囲の広い高電圧完全差動信号または最大 ±10V のバイポーラ シングルエンド信号のデータ キャプチャを実行します。関連クックブックの回路で、広帯域幅バッファを使用しない簡単な方法を示していますが (『計装アンプを使用した高電圧 SAR 駆動回路』)、本書のバッファ付きの設計に比べるとサンプリング レートが制限されます。この回路は、高精度の信号処理とデータ変換を必要とする産業用輸送およびアナログ入力モジュールに適用できます。

仕様

仕様 目標 計算結果 シミュレーション結果
過渡セトリング誤差 < 1/2LSB (< 152µV) NA –346nV
ADC 入力でのノイズ < 20µVRMS 47.2µVRMS 46µVRMS

デザイン ノート

  1. 計装アンプの帯域幅は通常、高いデータレートで SAR データ コンバータを駆動するには不十分であるため、広帯域ドライバが必要です。なぜなら、スイッチト キャパシタ入力構造の SAR ADC では、各アクイジション時間中に入力コンデンサをフル充電する必要があるためです。OPA827 バッファを追加することにより、ADC がフル サンプリング レートで動作できます (ADS8568:パラレル インターフェイスで 510kSPS)。
  2. ADS8568 は ±10V のシングルエンド入力信号に対応しています。INA828 を使用して ±10V の差動信号を ±10V のシングルエンド信号に変換します。したがって、この例では INA282 はユニティ ゲインであり、外部ゲイン設定抵抗 Rg は不要です。入力信号範囲が小さく、ゲインが必要な場合は、『高ゲインの計装アンプを使用した ADC 駆動回路』を参照してください。
  3. アナログ技術者向けカリキュレータを使用して、アンプの同相電圧範囲を確認します。
  4. 歪みを最小限に抑えるために、C1 と Cfilt には COG コンデンサを選択します。
  5. 「プレシジョン ラボ」ビデオ シリーズで、ドライバ アンプの電荷バケツ回路の Rfilt と Cfilt の選択方法を説明しています。詳細については、『ドライバ アンプの選択と検証』および『Introduction of SAR ADC Front-End Component Selection』を参照してください。
  6. アンチエイリアシングとノイズ低減のために、オペアンプと計装アンプの間のフィルタのカットオフ周波数を設定します。エイリアシングおよびアンチエイリアシング フィルタの詳細については、『エイリアシングおよびアンチエイリアシング フィルタ』を参照してください。

部品選定

  1. 差動入力信号とADCの全入力電圧範囲に基づいてゲインを求めます。この設計における入力信号は ±10V の高電圧信号であるため、INA828 のゲインは 1 に設定する必要があり、ゲイン抵抗 (Rg) は不要です。
  2. アナログ技術者向けカリキュレータを使用して、INA828 が同相電圧範囲を逸脱しているかどうか判断します。下図の同相電圧カリキュレータは、同相入力電圧 0V に対して出力振幅が ±14.9V であることを示しています。
  3. TINA SPICE と『Introduction to SAR ADC Front-End Component Selection』に記載する方法により、Cfilt と Rfilt の値を求めます。本書に示す Rfilt と Cfilt の値は当該回路において有効ですが、別のアンプを使用する場合、TINA SPICE を用いて改めて値を求める必要があります。
  4. 個々のシステム要件に基づいて、INA828OPA827 の間の RC フィルタの値を選択します (この例では fcRC = 15.9kHz)。アンチエイリアシングとノイズ低減のために、このフィルタのカットオフ周波数を設定します。

DC 伝達特性

以下のグラフに、–12.2V~+12.2V の差動入力に対する出力の線形応答を示します。ADC の入力電圧範囲は ±10V であるため、アンプは必要な範囲を優に超えて直線性を維持しています。この件の詳しい理論については、『計測アンプ使用時の逐次比較型 (SAR) ADC の線形範囲の決定』を参照してください。ADC の入力電圧範囲 (FSR) は計装アンプの線形範囲内に収まっています。

AC 伝達特性

このシステムの帯域幅のシミュレーション結果は 167kHz であり、ゲインは 0dB です。OPA827INA828 の間に入れたフィルタによって、帯域幅は約 167kHz に制限されます。

ADC 過渡入力電圧セトリングのシミュレーション (510kSPS)

OPA827 バッファ (22MHz GBW) を使用する理由は、ADS8568 における電荷のキックバックによる急激な過渡事象に応答できるためです。オペアンプ バッファにより、システムは ADS8568 の最高サンプリング レート 510kSPS を達成できます。以下のシミュレーションは、INA828 および OPA827 バッファと ADS8568 によるフルスケール DC 入力信号のセトリングを示しています。このようなシミュレーションは、目標の ½ LSB (152µV) を満たすようにサンプル/ホールド キックバック回路が適正に選定されていることを示します。この件の詳しい理論については、『Introduction to SAR ADC Front-End Component Selection』トレーニング ビデオ シリーズを参照してください。

ノイズ シミュレーション

このセクションでは、概算のための簡易なノイズ計算を示します。INA828OPA827 の両方のノイズを含めています。計装アンプとオペアンプの間の RC フィルタにより総ノイズが大幅に低減されることに注意します。OPA827 の帯域幅限界 (22MHz) と電荷バケツ フィルタのカットオフ周波数 (10.2MHz) が近いため、出力フィルタの極は 2 次フィルタとして推定しています。

計算結果とシミュレーション結果はよく一致していることに注意します (計算結果 = 47.2µV、シミュレーション結果 = 46µV)。アンプ ノイズの計算の詳しい理論については TI プレシジョン ラボを、データ コンバータのノイズについては『Calculating Total Noise for ADC Systems』を参照してください。

使用デバイス

デバイス 主な特長 リンク 類似デバイス
ADS8568 16 ビット、8 チャネル同時サンプリング、バイポーラ入力 SAR ADC 16 ビット、8 チャネル、同時サンプリング、バイポーラ入力 SAR A/D コンバータ (ADC) A/D コンバータ (ADC)
INA828

帯域幅 1MHz (G = 1)、低ノイズ 18nV/rtHz、低オフセット ±40μV、低オフセット ドリフト ±0.4μV/℃、低ゲイン ドリフト 0.1ppm/℃ (標準値)

50μV オフセット、7nV/√Hz ノイズ、低消費電力、高精度計測アンプ 計測アンプ
OPA827 ゲイン帯域幅 22MHz、低ノイズ 4nV/rtHz、低オフセット ±75μV、低オフセット ドリフト ±0.1μV/℃ (標準値) 低ノイズ、高精度、JFET 入力オペアンプ オペアンプ

主要なファイルへのリンク

テキサス・インスツルメンツ、SBAA286 用のソース ファイル、サポートソフトウェア