JAJA734 January   2023 DRV8452 , DRV8462

PRODUCTION DATA  

  1.   概要
  2.   商標
  3. 1ステッパ・モーター・ドライバの電力効率
  4. 2自動トルク
    1. 2.1 自動トルク:学習の原理
      1. 2.1.1 自動トルク学習ルーチンの設定
    2. 2.2 電流制御
      1. 2.2.1 電流制御パラメータの設定
    3. 2.3 PD 制御ループ
    4. 2.4 自動トルク調整パラメータの影響
      1. 2.4.1 学習パラメータが負荷過渡応答に及ぼす影響
      2. 2.4.2 ATQ_UL、ATQ_LL ヒステリシスの影響
      3. 2.4.3 負荷プロファイルが電力節減量に及ぼす影響
      4. 2.4.4 適応型 ATQ_UL、ATQ_LL
      5. 2.4.5 PD パラメータの依存性曲線
        1. 2.4.5.1 KP 依存性
        2. 2.4.5.2 KD および ATQ_D_THR 依存性
        3. 2.4.5.3 ATQ_FRZ および ATQ_AVG 依存性
        4. 2.4.5.4 ATQ_ERROR_TRUNCATE 依存性
      6. 2.4.6 各種モーター速度での ATQ_CNT
      7. 2.4.7 各種電源電圧での ATQ_CNT
      8. 2.4.8 モーター温度の推定
    5. 2.5 自動トルクによる効率向上
  5. 3ケース・スタディ
    1. 3.1 アプリケーション 1:現金自動預払機 (ATM)
      1. 3.1.1 ATM モーターの動作条件
      2. 3.1.2 自動トルク機能付き ATM モーター
    2. 3.2 アプリケーション 2:繊維機械
      1. 3.2.1 繊維機械モーターの動作条件
      2. 3.2.2 自動トルク機能付き繊維機械モーター
    3. 3.3 アプリケーション 3:プリンタ
      1. 3.3.1 自動トルク付きプリンタ・モーター
  6. 4まとめ
  7. 5関連資料

自動トルク機能付き ATM モーター

測定データによると、現金輸送ベルトで使用される代表的なステッパ・モーターでは、40ms ごとに約 300mNm の頻度で負荷トルクの変化が生じます。

ラボでは、このようなステッパ・モーターの 1 つに、300mNm/40ms の頻度で 176mNm と 1.46Nm の負荷トルク過渡を加えました。ピーク負荷のオン時間は 500ms、ピーク負荷イベントの間隔は 4.5s でした。これは、デューティ・サイクル 10% のピーク負荷に対応します。

このモーターでは、自動トルク学習ルーチンは、次のパラメータ値を使用して、無負荷で実行されました。

  • ATQ_LRN_MIN_CURRENT = 00110b
  • ATQ_LRN_STEP = 11b
  • ATQ_LRN_CYCLE_SELECT = 11b

#GUID-09540166-FEC8-4505-BA0D-F819279D80CD に、このモーターの学習ルーチンのスナップショットを示します。

GUID-20221117-SS0I-QPMG-RR5L-ZGS870VFRWXN-low.png図 3-1 ATM モーターの学習ルーチンのスナップショット

ATQ_LRN パラメータの結果の値は次のとおりです。

  • ATQ_LRN_CONST1 = 83
  • ATQ_LRN_CONST2 = 120

電流制御と PD ループ制御のパラメータは、次のように選択しました。

  • ATQ_TRQ_MAX = 120
  • ATQ_TRQ_MIN = 35 (現金が輸送されていないときにモーターに供給する必要がある電流に対応)
  • ATQ_UL = 45
  • ATQ_LL = 43
  • ATQ_LL = 43
  • ATQ_FRZ = 1
  • ATQ_AVG = 0

#X7023#FIG_IYK_BDJ_FWB に、負荷トルクが変化した際の出力電流と電源電流の波形 (自動トルクあり / なし) を示します。

GUID-20221117-SS0I-ZBTH-BHZ6-8PB2CJXXVNGL-low.png図 3-2 負荷がある状態とない状態の ATM モーターの動作、自動トルクなし
GUID-20221117-SS0I-Z6RJ-5FJV-4SRXH3BD4RHN-low.png図 3-4 負荷がある状態とない状態の ATM モーターの動作、自動トルクあり
GUID-20221117-SS0I-FB0P-WLPM-SDGGSLK3JNN7-low.png図 3-3 負荷がある状態とない状態の ATM モーターの動作、自動トルクなし
GUID-20221117-SS0I-BRJ4-HGB7-HZSW0TTB5RBZ-low.png図 3-5 負荷がある状態とない状態の ATM モーターの動作、自動トルクあり

これらの波形に示すように、自動トルクありの消費電流はかなり小さいです。ラボでの測定に基づく値を以下に示します。

  • 自動トルクなしでの消費電力 = 24V * 885mA = 21.24W
  • 自動トルクありでの消費電力 = 24V * 402mA = 9.65W
  • これは、指定された負荷プロファイルでこのモーターの消費電力が 55% 節約されることを示しています。

モーター内の電力損失を以下に示します。

  • 自動トルクなしでのモーターの電力損失 = (2.8A * 2.8A * 1.5Ω) = 11.76W
  • 自動トルクありでのモーターの電力損失= = (0.1 * 2.8A * 2.8A + 0.9 * 0.85A * 0.85A) * 1.5Ω = 2.15W
  • これは、モーター・コイルの発熱が 82% 低減されることに相当し、寿命の延長と長期的な信頼性の向上につながります。