パワーダウン (PD):
アンプのパワーダウン機能は、通常動作とは別の状態を提供しながら、アンプに接続された電源を維持することを目的としています。パワーダウン状態の主な構成要素は次のとおりです。
- 制御信号:パワーダウン状態の設定および切り替え方法
- 多くの場合、パワーダウンのロジックは通常とは極性が逆になっており、、低い電圧 (ロジック 0) でデバイスがパワーダウン状態になり、高い電圧 (ロジック 1) で通常の増幅動作が維持されます。
- パワーダウン制御信号には、スレッショルド電圧が規定されています。PD ピン電圧を規定電圧より高くまたは低く設定することで、予期される制御が可能になります。その中間電圧範囲では、動作は厳密には既知とはいえません。制御信号を未規定の電圧範囲に維持しないことが推奨されます。この範囲では、適切なパワーダウン動作が保証されません。
- PD ピンが「フローティング」、つまり未接続の状態の場合に適用されるデフォルト動作が用意されていることもよくあります。スレッショルド電圧、制御電圧、ピンのデフォルト動作に関する情報については、アンプのデータシートを参照してください。
- 静止電流:パワーダウン状態においてアンプが消費する電流
- パワーダウン機能を使用する主な利点の 1 つは、静止電流と呼ばれる動作電流を低減できることです
- 静止電流 Iq は、アンプのアクティブモードの動作電流と比較して、しばしば 10 倍または 100 倍に低減されます。DEM-FDA-RUN-EVM の場合、Iq は 4.7mA ~ 20µA に低下します。
- 出力インピーダンス:パワーダウン時にアンプ出力段の抵抗が変化します
- アンプのパワーダウン動作として、出力段をハイ インピーダンス状態にする仕様になっていることは一般的です。これにより、アクティブモード時 (パワーダウン状態ではない) に想定されるアンプ出力段の低インピーダンスが変化します。出力段が電流のシンクやソースを行わなくなるため、出力インピーダンスの変化は接続回路に影響を及ぼします。
- 注記:出力段がハイ インピーダンスになっても、帰還回路 (完全差動アンプの両側に 1 つ) を介して、帰還抵抗 (RF) には依然として電流が流れます。アンプをハイインピーダンス設定で運用することが望まれるアプリケーションやシステムにおいて、これは非常に重要なポイントとなります。
- パワー サイクルに関する注記:その他のエネルギー管理目的で電源電圧を完全に取り去った場合、パワーダウン機能による各種制御機能は使用できません。このアンプには、出力段をハイ インピーダンス状態に設定するための内部電流源やプルアップ抵抗は備わっていません。代わりに、アンプの出力段は低インピーダンス状態のまま維持されます。
- DEM-FDA-RUN-EVM は、さまざまな PD 構成に対応できるように、回路と制御用のジャンパを搭載しています。外部信号制御用に、SMA コネクタに接続するためのインピーダンス整合 (50Ω) 配線パターンもあります。
出力同相電圧制御 (VOCM):
出力同相電圧制御信号は VOCM と呼ばれ、完全差動アンプ (FDA) アーキテクチャにおける重要な内部機能のひとつです。内部エラーアンプは、検出された出力同相電圧を VOCM ピンに設定された制御信号と比較します。結果として行われる補正により、FDA の動作がシフトされ、適切な出力同相電圧が設定されます。この動作は、完全差動A/D コンバータの入力を駆動するうえで重要な役割を果たします。VOCM 機能の主な要素は次のとおりです。
- VOCM にはデフォルト動作があり、内部のプルアップ抵抗により、VOCM は中電圧 (正電源と負電源の中間電位) に設定されます。このデフォルト バイアスは、アンプの単一電源、分割電源 (正負対称) 構成、分割電源 (非対称) 構成のいずれにおいても有効に動作します。
- VOCM ピンは、デフォルト動作を優先する (上書きする) 制御信号を受け入れます。VOCM ピンは、静的 (定常状態) の DC 電圧を設定することができます。この電圧は通常、接続されるデータコンバータの VCM (同相電圧) 出力ピンです。さらに、出力同相モードを調整する必要がある場合は、VOCM ピンを時間的に変化する信号で駆動することもできます。
- DEM-FDA-RUN-EVM には、さまざまな VOCM 条件に対応できるように、適切な部品配置と未実装のパッドがあります。外部信号制御用に、SMA コネクタに接続するためのインピーダンス整合 (50Ω) 配線パターンもあります。