JAJY121A April 2021 – September 2021 BQ25125 , LM5123-Q1 , TPS22916 , TPS3840 , TPS62840 , TPS63900 , TPS63901 , TPS7A02
規定条件:TJ = –40℃~+125℃、VIN = VOUT(nom) + 0.5V または 2.0V (どちらか大きい方)、IOUT = 1mA、VEN = VIN、CIN = COUT = 1μF (別途規定がない場合)。標準値は TJ = 25℃時に測定。
パラメータ | テスト条件 | 最小 | 標準 | 最大 | 単位 | ||
公称精度 | TJ = 25°C, VOUT ≥ 1.5V, 1µA(1) ≤ IOUT ≤ 1mA | -1 | 1 | % | |||
TJ = 25°C, VOUT < 1.5V | -15 | 15 | mV | ||||
温度範囲全体での精度 | VOUT ≥ 1.5V | TJ = –40℃~+125℃ | -1.5 | 1.5 | % | ||
VOUT ≥ 1.5V | -20 | 20 | mV | ||||
(ΔVIN) | ライン・レギュレーション | VOUT(nom)+ 0.5V ≤ VIN ≤ 6.0V(1) | TJ = –40℃~+125℃ | 5 | mV | ||
ΔVOUT (ΔIOUT) | ライン・レギュレーション(1) | 1mA ≤ IOUT ≤ 200mA, VIN = VOUT(nom) + 0.5V(2) | TJ = –40℃~+85℃ | 20 | 38 | mV | |
TJ = –40℃~+125℃ | 50 | ||||||
IGND | グランド電流 | IOUT = 0mA | TJ = 25°C | 25 | 46 | nA | |
TJ = –40℃~+85℃ | 60 | ||||||
IGND/IOUT | グランド電流対負荷電流 | 5µA ≤ IOUT < 1mA | TJ = 25°C | 1 | % | ||
1mA ≤ IOUT < 100mA | 0.25 | ||||||
IOUT ≥ 100mA | 0.15 | ||||||
IGND(DO) | ドロップアウト時のグランド電流(1) | IOUT = 0mA, VIN = 95% x VOUT(nom) | TJ = 25°C | 25 | nA | ||
ISHDN | シャットダウン電流 | VEN = 0V, 1.5V ≤ VIN ≤ 5.0V, TJ = 25°C | TJ = 25°C | 3 | 10 | nA |
IQ-GND、ISHDN、VOUT の精度に関する変動はいずれも、特定のプロセス・テクノロジーを使用する素子の製造能力に関する適切な指標になります。表 1 は TPS7A02 のデータシートからの抜粋であり、無負荷時の IGND が -40℃~85℃の温度範囲にわたって 25nA から 60nA の範囲で変動することを示しています。温度範囲内でのこの変動は、電流ミラーの不整合と IBIAS 生成制御能力を表しています。ISHDN は、室温で 3nA から 10nA の範囲で変動しており、パワー FET とデジタル・ロジックのリーケージ制御に関する良好な指標になります。VOUT の精度は温度範囲全体にわたって誤差 1.5% 未満であり、スレッショルド未満領域での不整合の制御に関する良好な指標になります。
外部コンデンサのリーケージは 1
つの懸案事項になります。どのレギュレータでも、入力と出力両方のコンデンサが、静止電流 (IQ)
の増加要因になります。外部コンデンサのリーケージを評価する優れた方法の 1 つを図 19 に示します。
は、コンデンサのさまざまな絶縁抵抗 (Rp)
仕様について、コンデンサの両端間で測定した電圧降下を時間に対して示してます。データシートの値と無関係にコンデンサのリーケージを測定することを推奨します。コンデンサを既知の電圧まで充電し、時間の経過とともに降下を監視するのは、さまざまなコンデンサ・オプションを定量化して比較するための優れた方法です。絶縁抵抗が最大であるコンデンサは、時間による降下が最小になります。
コンデンサのリーケージ以外に、電圧計の入力インピーダンスは低静止電流 (IQ) を測定するセットアップで重要な役割を果たし、不正確な結果につながる要因にもなります。インピーダンスが 10MΩ である標準的な電圧計を、電源レギュレータの入力または出力に接続すると、電源電圧または出力電圧が 5V である場合に 500nA の電流消費に寄与することになります。TPS7A02 LDO の場合、内部の自己消費静止電流 (IQ) は 25nA なので、この外部リーケージはその 20 倍に達することになります。
正しい測定方法と、電圧計および電流計を適切な場所に接続する方法で、測定誤差を防止することができます。図 20 に、さまざまなテストのセットアップと、それらが効率に及ぼす影響を示します。負荷が 0.1mA 未満である場合、これらはすでにかなり大きい影響を及ぼしています。超低静止電流 (IQ) を測定する場合にセットアップの問題を防止する最善のオプションに関するヒントについては、Analog Design Journal の記事である『Accurately measuring efficiency of ultra-low-IQdevices』 (英語) をご覧ください。
フレキシビリティは、低消費電力アプリケーションの設計の鍵になります。その 1 つの例が、出力電圧値の変更です。従来の方法は、調整可能な外部帰還デバイダを使用することです。ただし、その場合は不正確さが大きくなることに加えて、静止電流 (IQ) も大きくなります。最新のナノアンペア・パワー・コンバータでは、R2D インターフェイス (図 21) を使用して、出力電圧の設定をデジタル化できます。この機能はデバイスの起動後にシャットダウンされるので、余分な電流を消費しなくて済みます。
過酷な車載環境では、システム・レベルの静止電流 (IQ) は外部抵抗で決まります。リーケージを防止する要件を考慮し、抵抗は通常 100kΩ 未満に制限されます。ただし、静止電流 (IQ) と ISHDN を小さくする目標を放棄する必要はありません。12V を監視する外部帰還デバイダを使用すると、静止電流 (IQ) が 100μA を上回る範囲になります。これより抵抗値の大きい内部帰還デバイダを使用してデバイダ電流を小さくすることは可能ですが、プログラマビリティ (設定能力) は失われます。
LM5123-Q1 は、入力電圧範囲 (VIN) が広い昇圧コントローラであり、従来の外部帰還抵抗と内部の低電圧リファレンスを入れ替える方法で、静止電流 (IQ) を低減します。それにより、わずかな代償で値の小さい抵抗を実現できます。電圧リファレンスと帰還抵抗に関するこの革新的な配置を使用すると、直前の例で登場した 300μA の静止電流 (IQ) という値を 1/20 未満に減少させることができます。図 22 を参照してください。
LM5123-Q1 と同様、LMR43610/20 36V、1A/2A
降圧コンバータは、帰還回路を内蔵することで IQ を最小化する斬新な方式を採用しています。LMR43610/20 は起動時に VOUT/FB
ピンのインピーダンス・チェックを実行します。
これにより、出力電圧調整機能を利用するために使う外部帰還回路の有無を検出します。外部の帰還抵抗が検出されない場合、本デバイスは、3.3V
または 5V の固定出力電圧を設定する内蔵帰還回路を自動的に使用します。これにより、帰還回路のリーケージを最小限に抑え、IQ
を低減します。
LMR43610/20 など、多くのスイッチ・モード電源デバイスは、IC の内部回路に電力を供給するために内部 LDO を使用しています。低電圧アプリケーションでは、通常この内部 LDO に入力電圧から直接電力を供給します。しかし、内部 LDO に電力を供給するこの方法は、LDO の電力損失が入力電圧に正比例するため、広い入力電圧にわたって動作する設計に特有の課題をもたらします。
この課題に対処するため、入力から電力を供給するのではなく、LMR43610/20 は VOUT/FB ピンから同じ電圧を利用して内部 LDO に電力を供給します。次にその内部 LDO が、総 IQ_VIN を最小化するためにすべての内部回路をバイアスします。これにより、内部 LDO の電流を VOUT/(VIN * η1) の係数で低減できます。これらの機能をこの資料で説明している方法と組み合わせることで、LMR43610/20 はクラス最高の低 IQ 性能 (150℃ TJ で 3μA 以下) と軽負荷時効率 (公称 12VIN、3.3VOUT、2.2MHz 変換で 1mA 時に約 90%) を実現できます。
デバイス・レベルで改良を実施すると、システム・レベルの設計を簡素化することができます。これに該当する 1 つの例は、60mΩ、リーケージ 10nA
のロード・スイッチである TPS22916 が搭載しているスマート・イネーブル機能です。
超低リーケージと超低静止電流
(IQ) 特性に加えて、このデバイスはスイッチをオンにするスマートな方法も実現しています。通常、ON
ピンに内部プルダウン抵抗を取り付けているので、スイッチを制御するマイコンが高インピーダンス (Z)
状態に移行する状況でも、パワー・スイッチが偶発的にオンに切り替わる事態を確実に防止できます。残念ながら、これらのプルアップ抵抗とプルダウン抵抗は、システム・レベルの静止電流
(IQ) に悪影響を及ぼします。
図 24 に示すように、TPS22916 は他の多くのナノ静止電流 (IQ) 製品と同様、スマート・オンまたはスマート・イネーブル回路を搭載しています。この回路は、ソフト・スタートを実施した後はプルダウン・パスを開回路にして、従来発生していた常時オンの静止電流 (IQ) を排除すると同時に、デバイスへの電力供給がオフになっているときは既知の低インピーダンス状態を引き続き維持することを保証します。