JAJSL44 March   2023 DRV8952

PRODUCTION DATA  

  1. 特長
  2. アプリケーション
  3. 概要
  4. 改訂履歴
  5. ピン構成および機能
  6. 仕様
    1. 6.1 絶対最大定格
    2. 6.2 ESD 定格
    3. 6.3 推奨動作条件
    4. 6.4 熱に関する情報
    5. 6.5 電気的特性
    6. 6.6 代表的な特性
  7. 詳細説明
    1. 7.1  概要
    2. 7.2  機能ブロック図
    3. 7.3  機能説明
    4. 7.4  独立のハーフブリッジ動作
    5. 7.5  電流検出とレギュレーション
      1. 7.5.1 電流検出とフィードバック
      2. 7.5.2 外付け抵抗による電流検出
      3. 7.5.3 電流レギュレーション
    6. 7.6  チャージ・ポンプ
    7. 7.7  リニア電圧レギュレータ
    8. 7.8  VCC 電圧電源
    9. 7.9  ロジック・レベル・ピンの図
    10. 7.10 保護回路
      1. 7.10.1 VM 低電圧誤動作防止 (UVLO)
      2. 7.10.2 VCP 低電圧誤動作防止 (CPUV)
      3. 7.10.3 ロジック電源パワーオン・リセット (POR)
      4. 7.10.4 過電流保護 (OCP)
      5. 7.10.5 サーマル・シャットダウン (OTSD)
      6. 7.10.6 nFAULT 出力
      7. 7.10.7 フォルト条件のまとめ
    11. 7.11 デバイスの機能モード
      1. 7.11.1 スリープ・モード (nSLEEP = 0)
      2. 7.11.2 動作モード
      3. 7.11.3 nSLEEP リセット・パルス
      4. 7.11.4 機能モードのまとめ
  8. アプリケーションと実装
    1. 8.1 アプリケーション情報
      1. 8.1.1 ソレノイド負荷の駆動
        1. 8.1.1.1 ソレノイド・ドライバの代表的なアプリケーション
        2. 8.1.1.2 熱に関する計算
          1. 8.1.1.2.1 電力損失の計算
          2. 8.1.1.2.2 接合部温度の推定
        3. 8.1.1.3 アプリケーション特性の波形
      2. 8.1.2 ステッパ・モーターの駆動
        1. 8.1.2.1 ステッパ・ドライバの代表的なアプリケーション
        2. 8.1.2.2 電力損失の計算
        3. 8.1.2.3 接合部温度の推定
      3. 8.1.3 ブラシ付き DC モーターの駆動
        1. 8.1.3.1 ブラシ付き DC ドライバの代表的なアプリケーション
        2. 8.1.3.2 電力損失の計算
        3. 8.1.3.3 接合部温度の推定
        4. 8.1.3.4 単一のブラシ付き DC モーターの駆動
      4. 8.1.4 熱電冷却器 (TEC) の駆動
      5. 8.1.5 ブラシレス DC モーターの駆動
  9. パッケージの熱に関する考慮事項
    1. 9.1 DDW パッケージ
      1. 9.1.1 熱性能
        1. 9.1.1.1 定常状態熱性能
        2. 9.1.1.2 過渡熱性能
  10. 10電源に関する推奨事項
    1. 10.1 バルク容量
    2. 10.2 電源
  11. 11レイアウト
    1. 11.1 レイアウトのガイドライン
    2. 11.2 PCB 材料に関する推奨事項
    3. 11.3 熱に関する注意事項
  12. 12デバイスおよびドキュメントのサポート
    1. 12.1 関連資料
    2. 12.2 ドキュメントの更新通知を受け取る方法
    3. 12.3 サポート・リソース
    4. 12.4 商標
    5. 12.5 静電気放電に関する注意事項
    6. 12.6 用語集
  13. 13メカニカル、パッケージ、および注文情報
    1. 13.1 テープおよびリール情報

パッケージ・オプション

メカニカル・データ(パッケージ|ピン)
サーマルパッド・メカニカル・データ
発注情報

熱電冷却器 (TEC) の駆動

熱電冷却器 (TEC) はペルチェ効果に基いて動作します。TEC の両端に電圧が印加されると、DC 電流が半導体の接合部を流れ、温度差が生じます。熱は、TEC の片側から反対側に伝達されます。これにより、TEC 素子の「高温」側と「低温」側が形成されます。DC 電流が逆になると、高温側と低温側も逆になります。

TEC を流れる電流を変調する一般的な方法は、PWM 駆動を使用し、オンとオフのデューティ・サイクルを変えて、平均電流を変化させることです。単一電源で加熱と冷却の両方を可能にするには、H ブリッジ・トポロジが必要です。DRV8952 は 2 つの H ブリッジを駆動し、最大 5A の電流で 2 つの TEC を双方向駆動できます。ハーフブリッジのペアを並列接続して、最大 10A の電流で 1 つの TEC を駆動することもできます。

また、DDW パッケージの DRV8952 には 5% の精度を達成する電流検出出力 (IPROPI) も備えているため、閉ループ制御トポロジで 2 つの外部シャント抵抗が不要になり、部品表のコストとスペースを削減できます。DRV8952 ドライバに接続された 2 つの TEC の回路図を、図 8-8 に示します。

GUID-20220817-SS0I-SSQH-ZLBR-CV8FKLM3KFQP-low.svg図 8-8 2 つの TEC の駆動

より大きな電流で 1 つの TEC を駆動する回路図を、図 8-9 に示します。

GUID-20220705-SS0I-PVTF-4C67-J7JCMJSBHKNG-low.svg図 8-9 1 つの TEC を大電流で駆動

出力ノードに接続された LC フィルタは、DRV8952 からの PWM 出力を、TEC 両端の低リップル DC 電圧に変換します。高速過渡 (方形波電力など) により TEC の寿命が短くなる可能性があるため、リップル電流を最小化するにはフィルタが必要です。最大リップル電流は、最大電流の 10% 未満にすることを推奨します。TEC の最大温度差は、リップル電流が増加すると減少し、次の式で計算されます。

式 21. ΔT = ΔTMAX / (1 + N2)

ここで、ΔT は実際の温度差、ΔTMAX は TEC データシートに記載されている可能な最大の温度差、N はリップルと最大電流の比です。n は 0.1 より大きくはしません。

入力 PWM 周波数の選択は、スイッチング損失と、より小型のインダクタおよびコンデンサの使用との間のトレードオフです。また、PWM 周波数が高いと、TEC の両端の電圧を厳密に制御でき、LC コンポーネントのコストを削減できる可能性もあります。

2 次ローパス・フィルタの伝達関数を、式 21 に示します。

式 22. H (jω) = 1 / (1 - (ω / ω0)2 + jω / Qωn)

ここで、

ω0 = 1 / √(LC)、フィルタの共振周波数

Q=品質係数

ω=DRV8952 の入力 PWM 周波数

フィルタの共振周波数は通常、PWM 周波数よりも 1 桁以上低い値を選択します。この想定から、式 21 は次のように簡素化できます。

dB 単位の H = -40 log (fS/f0)

ここで、f0 = 1/2π√(LC)、fS は入力 PWM スイッチング周波数です。

  • L = 10μH、C = 22μF の場合、共振周波数は 10.7kHz です。

  • この共振周波数は、100kHz のスイッチング周波数で 39dB の減衰に相当します。

  • VM = 24V の場合、39dB の減衰は、TEC 素子の両端におけるリップル電圧の大きさが約 270mV であることを意味します。

  • したがって、抵抗が 1.5Ω の TEC 素子の場合、TEC を流れるリップル電流は 180mA になります。

  • DRV8952 の最大出力電流 5A では、180mA は 3.6% のリップル電流に相当します。

  • これにより、式 21 から TEC 素子の最大温度差が約 0.13% 低減されます。

TEC 素子を通過する電源電圧と DC 電流に応じて LC の値を調整します。DRV8952 は、最高 200kHz の入力 PWM 周波数をサポートしています。入力 PWM 周波数を選択する前に、与えられた周囲温度におけるデバイスの電力損失を慎重に考慮する必要があります。

一部の TEC ベースの冷暖房システムでは、電流ループを閉じることが重要です。DDW パッケージの DRV8952 は、外付けの電流シャント抵抗を使用せずに、この機能を実現できます。内部電流ミラーは各ハーフブリッジの電流を監視するために使用され、この情報は IPROPI ピンで利用できます。マイクロコントローラは、IPROPI ピンの電圧に基づいて PWM デューティを監視および調整できます。2 つの TEC を駆動するときは、対応するハーフブリッジの IPROPI ピンを互いに接続して、H ブリッジ電流を測定します。たとえば、図 8-8 に示す回路図では、IPROPI1 と IPROPI2 が互いに接続され、IPROPI3 と IPROPI4 もまた互いに接続されています。図 8-9 に示すように 1 つの TEC のみを駆動する場合は、すべての IPROPI ピンを互いに接続します。

さらに、DRV8952 は、外部電圧リファレンス (VREF) をデバイスに供給して電流レギュレーションのトリップ・ポイントを調整することにより、内部で電流をレギュレートできます。電流ループはその後、H ブリッジ自体の中で閉じます。