11 システム・エンジニアリングとリファレンス・デザイン

テキサス・インスツルメンツのシステム・エンジニアリング・チームは、テキサス・インスツルメンツの幅広い製品ラインアップによる最適化システム設計の開発に取り組んでおり、それによってお客様がシステム設計サイクルを短縮できるように支援しています。以前に開発されたリファレンス・デザインの一部を以下に示します。

• TIDM-02009：

  TIDM-02009 は、ASIL D 安全性コンセプト検証済み、高速トラクション、双方向 DC/DC 変換のリファレンス・デザインです。

  このリファレンス・デザインでは、1 つの TMS320F28388D リアルタイム C2000 マイコンを使って HEV または EV (ハイブリッド車または電気自動車) のトラクション・インバータと双方向 DC/DC コンバータを制御する方法を示します。トラクション制御機能はソフトウェア・ベースのリゾルバ / デジタル・コンバータ (RDC) を使用し、最高 20,000RPM に達する高速でモーターを駆動します。DC/DC コンバータは、位相シフト・フルブリッジ (PSFB) トポロジーと同期整流 (SR) 方式を採用したピーク電流モード制御 (PCMC) 手法を使用します。トラクション・インバータ段は、UCC5870-Q1 スマート・ゲート・デバイスで駆動する SiC (シリコン・カーバイド) 電力段を使用します。PCMC の波形を生成するために、最新の PWM モジュールと、コンパレータ・サブシステム (CMPSS) が内蔵しているスロープ補償機能を使用しています。ASIL デコンポジションに基づくシステム機能安全コンセプトは TÜV SÜD によって評価され、代表的な安全性目標として ISO 26262 ASIL D までのシステム・レベル安全インテグリティが証明されています。

• PMP22817：

  PMP22817 は、車載対応の、SPI プログラマブル・ゲート・ドライバとトランス内蔵バイアス電源のリファレンス・デザインです。

  このリファレンス・デザインは、トラクション・インバータ内のパワー・スイッチを想定した絶縁型バイアス電源と絶縁型ゲート・ドライバを実現します。バイアス電源とドライバの両方が、800VDC バス・アプリケーションが必要とする高い絶縁能力を達成しています。絶縁型バイアスは 24VDC を生成するほか、+15V と -5V 両方のゲート駆動バイアスを供給します。この絶縁型ドライバは、このような大電力スイッチのオン / オフを迅速に切り替えるために必要な大電流を供給するほか、複数の高度な保護機能を搭載しています。また、PMP22817 リファレンス・デザインは、車載バッテリのバッテリ電圧 (サージ / 降下を含め 6V～42V) に直結可能なテスト済みの DC/DC シングルエンド 1 次側インダクタ・コンバータ SEPIC を実現し、レギュレーション済みの 24V を供給することもできます。

• TIDA-01527

  TIDA-01527 は、C2000™ マイコンを使って ±0.1° の精度を実現するディスクリート・リゾルバ・フロントエンドのリファレンス・デザインです。

  このリファレンス・デザインは、リゾルバ・センサ用の励起アンプおよびアナログ・フロント・エンドです。このデザインは、ディスクリート部品と標準的なオペアンプのみを 1 平方インチ (6.45 平方 cm) のプリント基板 (PCB) に実装しています。公開されているアルゴリズムとサンプル・コードは、信号処理と角度計算の目的で、C2000 マイコン (MCU) LaunchPad™ 開発キットと TMS320F28069M マイコンの組み合わせを使用しています。このリファレンス・デザインは、優れた散乱信号処理方式を使用しています。この方式によりシステム精度が 250% も向上し、同時にハードウェアのコストと複雑性を妥当なレベルに抑えられます。