JAJU908 November   2023

 

  1.   1
  2.   概要
  3.   リソース
  4.   特長
  5.   アプリケーション
  6.   6
  7. 1システムの説明
  8. 2システム概要
    1. 2.1 ブロック図
    2. 2.2 設計上の考慮事項
      1. 2.2.1 パワー・ツリーおよびウェークアップ
      2. 2.2.2 絶縁型インターフェイスの絶縁要件
      3. 2.2.3 堅牢なリレー・ドライバ
      4. 2.2.4 スタッカブル・デイジー・チェーン通信
    3. 2.3 主な使用製品
      1. 2.3.1  TMDSCNCD263
      2. 2.3.2  LMR51440
      3. 2.3.3  TPS7A16
      4. 2.3.4  TPS7B81
      5. 2.3.5  TPS62913
      6. 2.3.6  TPS4H160-Q1
      7. 2.3.7  ULN2803C
      8. 2.3.8  ISO1042
      9. 2.3.9  UCC12050
      10. 2.3.10 ISO1410
      11. 2.3.11 SN6505B
      12. 2.3.12 BQ32002
      13. 2.3.13 HDC3020
      14. 2.3.14 TPS3823
      15. 2.3.15 DP83826E
      16. 2.3.16 TPS763
      17. 2.3.17 LM74701-Q1
  9. 3ハードウェア、ソフトウェア、テスト要件、テスト結果
    1. 3.1 ハードウェア要件
    2. 3.2 ソフトウェア要件
    3. 3.3 テスト設定
    4. 3.4 テスト結果
      1. 3.4.1 電源テスト
      2. 3.4.2 デイジー・チェーンの信号品質
      3. 3.4.3 リレー駆動
      4. 3.4.4 絶縁型 CAN トランシーバの動作
  10. 4設計とドキュメントのサポート
    1. 4.1 設計ファイル
      1. 4.1.1 回路図
      2. 4.1.2 BOM
    2. 4.2 ツールとソフトウェア
    3. 4.3 ドキュメントのサポート
    4. 4.4 サポート・リソース
    5. 4.5 商標
  11. 5著者について

システムの説明

現在、バッテリ・エネルギー・ストレージ・システム (BESS) は、住宅、商業、産業、グリッド・エネルギーの蓄積および管理において重要な役割を果たしています。BESS は、各種の高電圧システム構造を採用しています。商業、産業およびグリッド BESS には、複数のラックがあり、それぞれがスタックされたパックで構成されています。住宅用 BESS には、ラックが 1 つあります。

ラックは、BESS を構成する統合モジュールです。ラックは、並列接続されたパックで構成されています。バッテリ・セルには、寿命および安全のために、適切な動作温度、保存温度、電圧範囲、電流範囲が求められるので、ラック・レベルでバッテリ・セルを監視および保護することが重要です。

バッテリ制御ユニット (BCU) は、ラックまたはシングルパックのエネルギーを管理するためにラックに取り付けるように設計されたコントローラです。BCU は以下を実行します。

  • バッテリ・システム管理ユニット (BSMU)、バッテリ電力変換システム (PCS)、高電圧モニタ・ユニット (HMU)、バッテリ・モニタ・ユニット (BMU) との通信
  • パック またはラックの充電状態 (SOC) および健全性 (SOH) の推定
  • バッテリ・クラスタ・バランシング、熱管理、電源 (リレー) のオン / オフ
  • 充電および放電電流の制限
  • 他のシステムへの電源供給

HMU は、ラック内に設置されるコントローラであり、ラックとシングルパックの状態、たとえばラックの電圧、電流、単一または累積の充放電、サイクル時間、絶縁などを継続的に監視します。BCU は HMU と組み合わせて使用され、ラック・レベルでの保護およびエネルギー管理の全機能を実現します。BMU は、パックに取り付けるように設計されたコントローラであり、ライフサイクル全体にわたって各バッテリ・セルの電圧と温度を監視し続けます。

HMU と BMU が収集した情報は、安全とエネルギー管理のために BCU に送信されます。BMU と BCU の間または HMU と BCU の間で、堅牢かつ高速な通信も求められます。CAN は、通信の堅牢性を高めるために今まで広く使用されてきました。CAN 構造のコントローラでは、CAN 通信機能を動作させるために、MCU、デジタル・アイソレータ、絶縁型電源モジュールが必要です。CANでは、パック側の絶縁型インターフェイスと MCU に対する効率的な消費電力管理が不可欠です。

CAN を置き換える選択肢として、デイジー・チェーンが提供されています。CAN インターフェイスの場合と比較すると、BMU、HMU、BCU で必要なものは数個のトランスのみです。したがって、特に大容量バッテリ・パック・アプリケーションにおいて、デイジー・チェーンは CAN よりもコストの点で有利です。大容量 BESS での CAN は、多くの BMU ノードと CAN インターフェイス・デバイスで構成されており、コストが問題となるからです。絶縁要件もコストの上昇につながります。BMU、HMU、BCU の各通信インターフェイス間で強化絶縁を使用すると、デジタル・アイソレータと絶縁型パワー・モジュールのコストが増加します。

BCU は、エネルギー・ストレージ機能全体を動作させるために、SOC、SOH、ラックのステータスを PCS および BSMU に送信する必要があります。CAN、RS-485、イーサネットは、通信インターフェイスで広く使用されています。

BCU は、SOC、SOH、およびラック電流、電圧、温度、絶縁状態などのラックステータスに基づいてリレーのオン/オフを切り替え て、ラックが安全に動作するようにします。SOC および SOH は、パックおよびラックの正確な情報から推定します。

この設計は、大容量バッテリ・ラック・アプリケーションと、住宅、商業および産業、グリッド BESS などに適用できるアプリケーションを想定しています。この設計は、TMDSCNCD263 (AM263x 汎用 controlCARD 開発キット Arm® ベース MCU) に接続するコネクタ・インターフェイスを使用して、すべての機能をテストします。外部ウォッチドッグ TPS3823 を採用して、MCU 動作の信頼性を確保しています。この設計は、1 個の TPS4H160 デバイスと 2 個の ULN2803 デバイスを搭載しており、リレー・コイルの電源をオンまたはオフに切り替えるとともに、リレー・コイルの全般的な診断および高精度の電流センスを行います。このデザインには、通信インターフェイスのために、3 個の ISO1042 デバイス、1 個の ISO1410、1 個の DP83826E、2 個の BQ79600 デバイスを使用しています。UCC12050 および SN6505 デバイスは、絶縁型電源に使用されます。また、この設計は、リアルタイム・クロック BQ32002 を接続してデータを記録し、湿度センサ HDC3020 を接続してラックまたはパックの結露状態を監視します。