JAJU908 November 2023
現在、バッテリ・エネルギー・ストレージ・システム (BESS) は、住宅、商業、産業、グリッド・エネルギーの蓄積および管理において重要な役割を果たしています。BESS は、各種の高電圧システム構造を採用しています。商業、産業およびグリッド BESS には、複数のラックがあり、それぞれがスタックされたパックで構成されています。住宅用 BESS には、ラックが 1 つあります。
ラックは、BESS を構成する統合モジュールです。ラックは、並列接続されたパックで構成されています。バッテリ・セルには、寿命および安全のために、適切な動作温度、保存温度、電圧範囲、電流範囲が求められるので、ラック・レベルでバッテリ・セルを監視および保護することが重要です。
バッテリ制御ユニット (BCU) は、ラックまたはシングルパックのエネルギーを管理するためにラックに取り付けるように設計されたコントローラです。BCU は以下を実行します。
HMU は、ラック内に設置されるコントローラであり、ラックとシングルパックの状態、たとえばラックの電圧、電流、単一または累積の充放電、サイクル時間、絶縁などを継続的に監視します。BCU は HMU と組み合わせて使用され、ラック・レベルでの保護およびエネルギー管理の全機能を実現します。BMU は、パックに取り付けるように設計されたコントローラであり、ライフサイクル全体にわたって各バッテリ・セルの電圧と温度を監視し続けます。
HMU と BMU が収集した情報は、安全とエネルギー管理のために BCU に送信されます。BMU と BCU の間または HMU と BCU の間で、堅牢かつ高速な通信も求められます。CAN は、通信の堅牢性を高めるために今まで広く使用されてきました。CAN 構造のコントローラでは、CAN 通信機能を動作させるために、MCU、デジタル・アイソレータ、絶縁型電源モジュールが必要です。CANでは、パック側の絶縁型インターフェイスと MCU に対する効率的な消費電力管理が不可欠です。
CAN を置き換える選択肢として、デイジー・チェーンが提供されています。CAN インターフェイスの場合と比較すると、BMU、HMU、BCU で必要なものは数個のトランスのみです。したがって、特に大容量バッテリ・パック・アプリケーションにおいて、デイジー・チェーンは CAN よりもコストの点で有利です。大容量 BESS での CAN は、多くの BMU ノードと CAN インターフェイス・デバイスで構成されており、コストが問題となるからです。絶縁要件もコストの上昇につながります。BMU、HMU、BCU の各通信インターフェイス間で強化絶縁を使用すると、デジタル・アイソレータと絶縁型パワー・モジュールのコストが増加します。
BCU は、エネルギー・ストレージ機能全体を動作させるために、SOC、SOH、ラックのステータスを PCS および BSMU に送信する必要があります。CAN、RS-485、イーサネットは、通信インターフェイスで広く使用されています。
BCU は、SOC、SOH、およびラック電流、電圧、温度、絶縁状態などのラックステータスに基づいてリレーのオン/オフを切り替え て、ラックが安全に動作するようにします。SOC および SOH は、パックおよびラックの正確な情報から推定します。
この設計は、大容量バッテリ・ラック・アプリケーションと、住宅、商業および産業、グリッド BESS などに適用できるアプリケーションを想定しています。この設計は、TMDSCNCD263 (AM263x 汎用 controlCARD 開発キット Arm® ベース MCU) に接続するコネクタ・インターフェイスを使用して、すべての機能をテストします。外部ウォッチドッグ TPS3823 を採用して、MCU 動作の信頼性を確保しています。この設計は、1 個の TPS4H160 デバイスと 2 個の ULN2803 デバイスを搭載しており、リレー・コイルの電源をオンまたはオフに切り替えるとともに、リレー・コイルの全般的な診断および高精度の電流センスを行います。このデザインには、通信インターフェイスのために、3 個の ISO1042 デバイス、1 個の ISO1410、1 個の DP83826E、2 個の BQ79600 デバイスを使用しています。UCC12050 および SN6505 デバイスは、絶縁型電源に使用されます。また、この設計は、リアルタイム・クロック BQ32002 を接続してデータを記録し、湿度センサ HDC3020 を接続してラックまたはパックの結露状態を監視します。