図 6-28 に、MCF8316D-Q1 デバイスに実装されているモーター起動シーケンスを示します。
パワーオン状態これは、MCF8316D-Q1 の電源がオンのときの、モーター起動シーケンス (MSS) の初期状態です。この状態では、MCF8316D-Q1 はペリフェラルを構成し、EEPROM からアルゴリズム パラメータを初期化して、モーターを駆動するための準備をします。
スリープ / スタンバイこの状態では、SPEED_REF は 0 に設定され、MCF8316D-Q1 は、DEV_MODE および SPEED/WAKE ピンの電圧に応じて、スリープ モードまたはスタンバイ モードになります。
SPEED_REF > 0 判定SPEED_REF が 0 より大きい値に設定されている場合、MCF8316D-Q1 はスリープ / スタンバイ状態を終了し、ISD_EN 判定に進みます。SPEED_REF が 0 に設定されている限り、MCF8316D-Q1 はスリープ / スタンバイ状態を維持します。
方向変更コマンド判定方向変更コマンドを受信すると、MCF8316D-Q1 は、DIR_CHANGE_MODE 判定に進みます。
DIR_CHANGE_MODE 判定DIR_CHANGE_MODE が 0b に設定されている場合、MCF8316D-Q1 は ISD_EN 判定に進み、方向の変更を開始します。これに対し、DIR_CHANGE_MODE が 1b に設定されている場合、MCF8316D-Q1 は、Speed > OPN_CL_HANDOFF_THR 判定に進み、方向の変更を開始します。
ISD_EN 判定MCF8316D-Q1 は、初期速度検出 (ISD) 機能が有効化されている (ISD_EN = 1b) かどうかを確認します。ISD が有効化されている場合、MSS は BEMF < STAT_DETECT_THR 判定に進みます。これに対し、ISD が無効化されている場合、MSS は直接 BRAKE_EN 判定に進みます。
BEMF < STAT_DETECT_THRISD はモーターの初期条件 (速度、角度、回転方向) を決定します (セクション 6.3.10.1 を参照)。モーターが停止している (BEMF < STAT_DETECT_THR) と見なされた場合、MSS は BRAKE_EN 判定に進みます。モーターが停止していない場合、MSS は回転方向の検証に進みます。
回転方向判定MSS は、モーターが正方向と逆方向のどちらで回転しているのかを判定します。モーターが正方向に回転している場合、MCF8316D-Q1 は RESYNC_EN 判定に進みます。モーターが逆方向に回転している場合、MSS は RVS_DR_EN 判定に進みます。
RESYNC_EN 判定RESYNC_EN が 1b に設定されている場合、MCF8316D-Q1 は「速度」>「開ループ - 閉ループ ハンドオフ」(再同期) 判定に進みます。RESYNC_EN が 0b に設定されている場合、MSS は HIZ_EN 判定に進みます。
速度 > FW_DRV_RESYN_THR 判定モーター速度が FW_DRV_RESYN_THR より大きい場合、MCF8316D-Q1 は ISD から得た速度および位置情報を使用して、閉ループ状態に直接遷移します (セクション 6.3.10.2 を参照)。モーター速度が FW_DRV_RESYN_THR より小さい場合、MCF8316D-Q1 は開ループ状態に遷移します。
RVS_DR_EN 判定MSS は、リバース ドライブ機能が有効化されている (RVS_DR_EN = 1b) かどうかを調べます。リバース ドライブ機能が有効化されている場合、MSS は逆方向モーター速度の確認に遷移します。リバース ドライブ機能が有効化されていない場合 (RVS_DR_EN = 0b)、MSS は HIZ_EN 判定に進みます。
速度 > OPN_CL_HANDOFF_THR 判定MSS は、MCF8316D-Q1A が閉ループで減速するべき程度の、大きい逆転速度であるかどうかを確認します。速度 (逆方向) が OL_CL_HANDOFF_THR よりも大きい間、MSS は閉ループ減速を続けます。速度が OPN_CL_HANDOFF_THR を下回ると、MSS は開ループ減速に遷移します。
逆方向閉ループ、開ループ減速、ゼロ速度クロスオーバーMCF8316D-Q1 は逆方向で再同期し、モーター速度がハンドオフ スレッショルドを下回るまで、閉ループでモーターを減速させます。(「リバース ドライブ」を参照)。逆方向のモーター速度が低すぎる場合、MCF8316D-Q1 は開ループに切り替わり、開ループでモーターを減速させ、ゼロ速度に達します。次に開ループで正方向に加速し、モーター速度が十分に上がった後、閉ループ動作に入ります。
HIZ_EN 判定MSS は、コースト (ハイ インピーダンス) 機能が有効化されている (HIZ_EN = 1) かどうかを確認します。コースト機能が有効化されている場合 (HIZ_EN = 1b)、MSS はコースト ルーチンに進みます。コースト機能が無効化されている場合 (HIZ_EN = 0b)、MSS は BRAKE_EN 判定に進みます。
コースト (ハイ インピーダンス) ルーチン本デバイスは、HIZ_TIME によって設定された特定の時間の間、6 つの MOSFET のすべてをターンオフすることで、モーターを惰性で回転させます。
BRAKE_EN 判定MSS は、ブレーキ機能が有効化されている (BRAKE_EN = 1b) かどうかを確認します。ブレーキ機能が有効化されている場合 (BRAKE_EN = 1b)、MSS はブレーキ ルーチンに進みます。ブレーキ機能が無効化されている場合 (BRAKE_EN = 0b)、MSS はモーター起動状態に進みます (セクション 6.3.10.4 を参照)。
ブレーキ ルーチンMCF8316D-Q1 は、BRK_CONFIG に基づいて時間方式のブレーキ (BRK_TIME によって設定された期間) または電流方式のブレーキ (BRAKE_CURRENT_PERSIST の場合、相電流が BRK_CURR_THR 未満になるまで適用されるブレーキ) のどちらかを作動させます。電流方式のブレーキには、BRK_TIME 内に相電流が BRK_CURR_THR を下回らない場合に、ブレーキ状態が終了することを保証するためのタイムアウトがあります。時間方式のブレーキは、BRK_MODE 設定に基づいて、ハイサイドまたはローサイドのどちらかの MOSFET を使って作動させることができます。電流方式のブレーキは、ローサイド MOSFET のみを使って作動します。
閉ループ状態この状態では、MCF8316D-Q1 は、回転子角度推定に基づいて、センサレス FOC を使用してモーターを駆動します。