JAJSXE8 October   2025 DRV8311-Q1

PRODUCTION DATA  

  1.   1
  2. 特長
  3. アプリケーション
  4. 説明
  5. デバイス比較表
  6. ピン構成および機能
  7. 仕様
    1. 6.1 絶対最大定格
    2. 6.2 ESD 定格
    3. 6.3 推奨動作条件
    4. 6.4 熱に関する情報
    5. 6.5 電気的特性
    6. 6.6 SPI のタイミング要件
    7. 6.7 SPI セカンダリ デバイス モードのタイミング
    8. 6.8 代表的特性
  8. 詳細説明
    1. 7.1 概要
    2. 7.2 機能ブロック図
    3. 7.3 機能説明
      1. 7.3.1  出力ステージ
      2. 7.3.2  制御モード
        1. 7.3.2.1 6x PWM モード (DRV8311S-Q1 および DRV8311H-Q1 バリアントのみ)
        2. 7.3.2.2 3x PWM モード (DRV8311S-Q1 および DRV8311H-Q1 バリアントのみ)
        3. 7.3.2.3 PWM 生成モード (DRV8311S-Q1 および DRV8311P-Q1 バリアント)
      3. 7.3.3  デバイス インターフェイス モード
        1. 7.3.3.1 シリアル・ペリフェラル・インターフェイス (SPI)
        2. 7.3.3.2 ハードウェア インターフェイス
      4. 7.3.4  AVDD リニア電圧レギュレータ
      5. 7.3.5  チャージ ポンプ
      6. 7.3.6  スルー レート制御
      7. 7.3.7  クロス導通 (デッド タイム)
      8. 7.3.8  伝搬遅延
      9. 7.3.9  ピン配置図
        1. 7.3.9.1 ロジック レベル入力ピン (内部プルダウン)
        2. 7.3.9.2 ロジック レベル入力ピン (内部プルアップ)
        3. 7.3.9.3 オープン ドレイン ピン
        4. 7.3.9.4 プッシュプル ピン
        5. 7.3.9.5 4 レベル入力ピン
      10. 7.3.10 電流センス アンプ
        1. 7.3.10.1 電流センス アンプの動作
        2. 7.3.10.2 電流センス アンプ オフセットの補正
      11. 7.3.11 保護
        1. 7.3.11.1 VM 電源低電圧ロックアウト (NPOR)
        2. 7.3.11.2 低電圧保護 (UVP)
        3. 7.3.11.3 過電流保護 (OCP)
          1. 7.3.11.3.1 OCP ラッチ シャットダウン (OCP_MODE = 010b)
          2. 7.3.11.3.2 OCP 自動リトライ (OCP_MODE = 000b または 001b)
          3. 7.3.11.3.3 OCP 通知のみ (OCP_MODE = 011b)
          4. 7.3.11.3.4 OCP 無効 (OCP_MODE = 111b)
        4. 7.3.11.4 過熱保護
          1. 7.3.11.4.1 過熱警告 (OTW)
          2. 7.3.11.4.2 サーマル シャットダウン (OTSD)
    4. 7.4 デバイスの機能モード
      1. 7.4.1 機能モード
        1. 7.4.1.1 スリープ モード
        2. 7.4.1.2 動作モード
        3. 7.4.1.3 フォルト リセット (CLR_FLT または nSLEEP リセット パルス)
    5. 7.5 SPI 通信
      1. 7.5.1 プログラミング
        1. 7.5.1.1 SPI および tSPI フォーマット
  9. DRV8311-Q1 のレジスタ
  10. アプリケーションと実装
    1. 9.1 アプリケーション情報
    2. 9.2 代表的なアプリケーション
      1. 9.2.1 三相ブラシレス DC モーター制御
        1. 9.2.1.1 詳細な設計手順
          1. 9.2.1.1.1 モーター電圧
        2. 9.2.1.2 ドライバの伝搬遅延時間とデッド タイム
        3. 9.2.1.3 遅延補償
        4. 9.2.1.4 電流センシングと出力フィルタリング
        5. 9.2.1.5 アプリケーション曲線
    3. 9.3 三相ブラシレス DC tSPI モーター制御
      1. 9.3.1 詳細な設計手順
    4. 9.4 他のアプリケーション
    5. 9.5 電源に関する推奨事項
      1. 9.5.1 バルク コンデンサ
    6. 9.6 レイアウト
      1. 9.6.1 レイアウトのガイドライン
      2. 9.6.2 レイアウト例
      3. 9.6.3 熱に関する注意事項
        1. 9.6.3.1 消費電力と接合部温度の概算
  11. 10デバイスおよびドキュメントのサポート
    1. 10.1 サポート・リソース
    2. 10.2 商標
    3. 10.3 静電気放電に関する注意事項
    4. 10.4 用語集
  12. 11改訂履歴
  13. 12メカニカル、パッケージ、および注文情報

PWM 生成モード (DRV8311S-Q1 および DRV8311P-Q1 バリアント)

PWM 生成モードでは、PWM 信号は DRV8311-Q1 内部で生成され、SPI (DRV8311S-Q1) または tSPI (DRV8311P-Q1) を介したレジスタ読み取り / 書き込みによって制御することができます。この動作モードでは、従来のように INHx ピンと INLx ピンを通じてモーターを制御する必要はありません。各相の PWM の周期、周波数、デューティ サイクルは、シリアル インターフェイス経由で設定することができます。さらに、PWM_SYNC ピンの機能により、マイコンと DRV8311P/S-Q1 間の同期が可能です。PWM モードは、各相のハイサイドまたはローサイド MOSFET の PWM 制御を有効または無効に設定できるため、必要に応じて連続スイッチングや非連続スイッチングを選択することができます。DRV8311S-Q1 を PWM 生成モードで使用する場合、マイコンからの PWM_SYNC 信号を DRV8311S-Q1 の INLB ピンに接続してください。このモードでは、DRV8311S-Q1 は、その他の INHx および INLx ピンの状態を参照しません。PWM 生成モードを用いることで、台形波制御、正弦波制御、FOC 制御のいずれも実現可能です。

DRV8311-Q1 PWM 生成モード、DRV8311P-Q1図 7-6 PWM 生成モード、DRV8311P-Q1
DRV8311-Q1 PWM 生成モード、DRV8311S-Q1図 7-7 PWM 生成モード、DRV8311S-Q1

PWM 生成モードには、アップ / ダウンモード、アップモード、ダウンモードの 3 種類のオプションがあります。PWM 生成モードは、PWMG_CTRL レジスタの PWMCNTR_MODE ビットを使用して設定できます。各相 (A、B、C) の PWMG_x_DUTYレジスタ (x は各相を示す) の PWM_DUTY_OUTxビット で定義されたデューティ サイクルは、内部で生成されるリファレンス カウンタ信号と比較され、その結果に基づいてハイサイド MOSFET の PWM 信号が生成されます。PWM 生成では、PWM_PRD_OUT ビット (PWMG_PERIOD レジスタ) と PWMCNTR_MODE ビットの構成に基づいて内部的に生成されるリファレンス カウンタ信号を使用します。PWM_EN ビットが High の場合、PWM_DUTY_OUTx の値がリファレンス カウンタを上回ると、ハイサイド MOSFET の PWM 出力は High になります。一方、PWM_EN ビットが Low の場合、出力は常に Low に保持されます。ハイサイド MOSFET を[サイクル全体でオン状態 HS_ON] とする 100% デューティ サイクルを実現するには、PWM_DUTY_OUTx の値を PWM_PRD_OUT の値より大きく設定する必要があります。

アップ / ダウンモード [PWMCNTR_MODE = 0h] では、基準リファレンス カウンタの波形は V 字形となり、有効化されると PWM_PRD_OUT の値からカウントダウンを開始し、カウンタがゼロに到達すると再びカウントアップします。PWM周波数 (FPWM) は、PWM_PRD_OUT = 0.5 x (FSYS /FPWM) の関係式を用いて PWM_PRD_OUT ビットを設定します。fSYS は、DRV8311P-Q1 および DRV8311S-Q1 の内部システムクロック周波数 (約 20MHz) です。

DRV8311-Q1 PWM 生成、アップ / ダウンモード図 7-8 PWM 生成、アップ / ダウンモード

アップモード [PWMCNTR_MODE = 1h] では、カウンタはゼロから PWM_PRD_OUT の値までカウントアップし、その後ゼロにリセットされます。 PWM_PRD_OUT = FSYS /FPWM

DRV8311-Q1 PWM 生成、アップモード図 7-9 PWM 生成、アップモード

ダウンモード [PWMCNTR_MODE = 2h] では、カウンタは PWM_PRD_OUT の値からカウントダウンを開始し、カウンタがゼロに達すると再び PWM_PRD_OUT の値にリセットされます。 PWM_PRD_OUT = FSYS /FPWM

DRV8311-Q1 PWM 生成、ダウンモード図 7-10 PWM 生成、ダウンモード

TDEAD_CTRL レジスタで設定されたデッドタイムが、LS_ON の立ち下がりエッジと HS_ON の立ち上がりエッジの間、また HS_ON の立ち下がりエッジと LS_ON の立ち上がりエッジの間に挿入されます。

PWM 生成モードにおける PWM 同期

専用の INHx または INLx 制御信号が使用されていない場合、外部マイコンは DRV8311-Q1 が生成する PWM 信号との同期を失う可能性があります。同期のために、外部マイコンは PWM_SYNC ピンに 1 つのリファレンス信号を送信します。PWM 同期機能により、DRV8311-Q1 が生成する PWM 出力をマイコンのクロック精度で動作させることができ、マイコンの ADC による電流センス出力のサンプリングと PWM 出力を整列させることが可能になります。さらに、PWM_SYNC 信号は、DRV8311-Q1 内部発振器の周波数の測定にも役立ちます。DRV8311-Q1 は、動作条件に関わらず内部発振器を 20MHz にキャリブレーションする自動補正機能もサポートしています。DRV8311-Q1 では、PWMG_CTRL レジスタの PWM_OSC_SYNC ビットを設定することで、マイコンと DRV8311-Q1 の間で 5 種類の異なる同期方法を選択することができます。これらの同期方式の概要を以下に示します。

PWM_OSC_SYNC = 1h の場合:DRV8311-Q1 は、PWM_SYNC 信号 の周期 (PWM_SYNC_PRD) を、DRV8311-Q1 のシステム クロック FSYS (約 20MHz) のカウント単位で測定します。マイコンは PWM_SYNC_PRD レジスタの値を読み取り、それに基づいて PWM 周期をキャリブレーションを行うことができます。たとえば、マイコンが内部タイマを用いて周期カウント値を N、クロック周波数を FMCU とし、デューティ比 50% の PWM_SYNC 信号を生成する場合を考えます。マイコンは、DRV8311-Q1 によって生成された PWM_SYNC_PERIOD レジスタの読み取り値を M とすると。DRV8311-Q1 は、DRV8311-Q1 システムクロック FSYS(DRV) を使用して PWM_SYNC_PERIOD を生成します。このとき、マイコンのタイマ クロックと DRV8311-Q1 のシステム クロックの間には、関係式 FMCU x M = FSYS(DRV) x N が成り立ちます。

PWM_SYNC_PRD は 12 ビット幅であり、DRV8311-Q1 の内部システム クロックが約 20MHz の場合、飽和せずに読み取ることができる PWM_SYNC 信号の最小周波数は約 4.885kHz (FSYS/4095) です。

PWM_OSC_SYNC = 2h の場合:マイコンからの PWM_SYNC 信号が DRV8311-Q1 の PWM 周期を設定するために使用され、PWMG_PERIOD レジスタの設定は無視されます。DRV8311-Q1 は、PWM_SYNC 信号の立ち上がりエッジで PWM カウンタをリセットします。

DRV8311-Q1 アップ / ダウンモードでの PWM 同期 (PWM_OSC_SYNC = 2h)図 7-11 アップ / ダウンモードでの PWM 同期 (PWM_OSC_SYNC = 2h)
DRV8311-Q1 アップモードでの PWM 同期 (PWM_OSC_SYNC = 2h)図 7-12 アップモードでの PWM 同期 (PWM_OSC_SYNC = 2h)
DRV8311-Q1 ダウンモードでの PWM 同期 (PWM_OSC_SYNC = 2h)図 7-13 ダウンモードでの PWM 同期 (PWM_OSC_SYNC = 2h)

PWM_OSC_SYNC = 5h の場合:PWM_SYNC は、DRV8311-Q1 内部発振器の同期に使用されます (対応する周波数は 20kHz のみです)。PWM_SYNC 信号が 20kHz の場合、DRV8311-Q1 は、PWM_SYNC 信号の立ち上がりエッジ間に発生する内部システム発振器クロックパルスの数をカウントします。DRV8311-Q1 のシステムクロックが 20MHz の所望の条件において、予想されるクロック パルス数は 1000 となります。この値からの偏差は、DRV8311-Q1 の内部発振器が生成する周波数、またはマイコンからの PWM_SYNC 周波数のいずれかにエラーが発生したことを意味します。マイコンからの PWM_SYNC 信号の周波数は正確であると仮定し、DRV8311-Q1 は内部的に発振器のキャリブレーションを行って周波数を 20MHz に補正し、生成される PWM 周波数を PWM_SYNC 信号と整合させます。

PWM_OSC_SYNC = 6h の場合:PWM_SYNC 信号は、DRV8311-Q1 内部システム発振器のキャリブレーションと PWM 周期の設定に使用されます (対応する周波数は 20kHz のみです)。PWMG_PERIOD レジスタの設定は無視されます。DRV8311-Q1 は、PWM_SYNC 信号の立ち上がりエッジで PWM リファレンス カウンタをリセットします。

PWM_OSC_SYNC = 7h の場合:SPI クロック ピン SCLK は、DRV8311-Q1 の内部システム発振器を 20MHz にキャリブレーションするために使用されます。このモードでは、ユーザーは PWMG_CTRL レジスタを設定することで、発振器を同期させるための SPI クロック周波数 (SPICLK_FREQ_SYNC) と、発振器の同期に必要な SPI クロック サイクル数 (SPISYNC_ACRCY) を設定する必要があります。DRV8311-Q1 は、設定された SPISYNC_ACRCY に基づく全 SPI クロック サイクルの合計時間を、DRV8311-Q1 内部システム クロック FSYS のカウント値として測定し、内部システム クロックを 20MHz に対応するカウント値に合わせてキャリブレーションします。キャリブレーション後の DRV8311-Q1 システム発振器の周波数の 20MHz に対する精度は、SPISYNC_ACRCY の構成に依存します。