JAJU809 march 2023
フェーズド・アレイ・アンテナとデジタル・ビームフォーミング (DBF) は、宇宙用レーダー画像処理や広帯域衛星通信システムなど、多くの衛星アプリケーションの性能を向上できる、重要なテクノロジーです。デジタル・ビームフォーミングは、アナログ・ビームフォーミングとは異なり、通常はアンテナ素子ごとに一連のデータ・コンバータが必要で、結果として高精度の同期が必要になります。デジタル・ビームフォーミングにより、性能と柔軟性が向上し、新しい動作モードを実現できます。この例の 1 つは、高分解能の合成開口レーダー (SAR) です。これは、NASA-ISRO により、NISAR プロジェクトにおける SweepSAR という名前で、宇宙ベースのアプリケーションに初めて使用された、新しいレーダー技術です。ビームフォーミングは、5G モバイル・ブロードバンドの世界で中核となるビルディング・ブロックでもあります。この場合には、5G 伝送が地上と宇宙のどちらで行われるかはほとんど関係しません。5G のレーダー・アプリケーションのビームフォーミングがデジタルへの移行で恩恵を受けるのと同様に、クロック供給の要件も、両方のアプリケーション分野でほとんど同じです。
このリファレンス・デザインでは、高速 GSPS JESD204B 対応の ADC12DJ3200QML-SP データ・コンバータ用のクロッキング・サブシステムが中心になります。このリファレンス・デザインには、複数の素子間で高精度の同期要件を持つアプリケーションで使用できる、マルチチャネルの位相同期クロッキング・プラットフォームがあります。この設計には最小構成で、デモ用の 2 つの高速チャネルがあります。設計のブロック図を、図 1-1 に示します。クロック・システムは、入力クロック・セレクタとクロック・リファレンス・バッファ CDCLVP111-SP、ジッタ・クリーナとクロック分配 LMK04832-SP、サンプル・クロック・マルチプライヤ LMX2615-SP という 3 つの主要部分に分割されています。システムの中核は LMK04832-SP です。このデバイスは、受信クロックからジッタを除去し、安定したクロック・フレームワークを作り出します。また、LMK04832-SP は FPGA クロックと SYSREF 信号も供給します。LMX2615-SP クロック・マルチプライヤの入力クロックについては、LMK04832-SP のクロック出力、または入力クロック・リファレンス・バッファ CDCLVP111-SP の出力を使用するようにリファレンス・デザインを構成できます。受信クロックの位相ノイズが既に非常に低い場合、LMX2615-SP を CDCLVP111-SP に接続すると、ADC で可能な限り低い出力位相ノイズが得られます。その後で、LMX2615-SP がこのベース・クロックを取得し、分数乗法を使用して、最高 15GHz のサンプリング・クロックを生成し、サブヘルツ精度に調整できます。また、システムは SYSREF を ADC サブシステムにルーティングします。
この設計は 3 つの LMX2615-SP デバイスを搭載していますが、このドキュメントの技術的な分析で使用されているのは 2 つだけです。したがって、この図に示されている RF PLL シンセサイザは 2 つだけです。3 つ目の LMX2615-SP は、たとえばダウン・コンバータの局部発振器入力のソースとして使用し、より高い入力周波数帯域や、他のスーパーヘテロダインをサポートできます。