JAJSVT6A December   2024  – August 2025 LM51770 , LM517701

PRODUCTION DATA  

  1.   1
  2. 特長
  3. アプリケーション
  4. 説明
  5. デバイスの比較
  6. ピン構成および機能
  7. 仕様
    1. 6.1 絶対最大定格
    2. 6.2 取り扱い定格
    3. 6.3 推奨動作条件
    4. 6.4 熱に関する情報
    5. 6.5 電気的特性
    6. 6.6 タイミング要件
    7. 6.7 SNVSCL2 の代表的特性
  8. パラメータ測定情報
    1. 7.1 ゲート ドライバの立ち上がり時間と立ち下がり時間
    2. 7.2 ゲート ドライバ デッド (遷移) 時間
  9. 詳細説明
    1. 8.1 概要
    2. 8.2 機能ブロック図
    3. 8.3 機能説明
      1. 8.3.1  パワーオン リセット (POR システム)
      2. 8.3.2  昇降圧制御方式
        1. 8.3.2.1 昇圧モード
        2. 8.3.2.2 降圧モード
        3. 8.3.2.3 昇降圧モード
      3. 8.3.3  パワー セーブ モード
      4. 8.3.4  電源電圧の選択 – VMAX スイッチ
      5. 8.3.5  イネーブルおよび低電圧誤動作防止
      6. 8.3.6  発振器周波数の選択
      7. 8.3.7  周波数同期
      8. 8.3.8  電圧レギュレーション ループ
      9. 8.3.9  出力電圧トラッキング
      10. 8.3.10 スロープ補償
      11. 8.3.11 構成可能なソフトスタート
      12. 8.3.12 ピーク電流センサ
      13. 8.3.13 電流監視および電流制限制御ループ
      14. 8.3.14 短絡保護 - ヒカップ保護
      15. 8.3.15 nFLT ピンと保護機能
      16. 8.3.16 デバイス構成ピン
      17. 8.3.17 デュアル ランダム スペクトラム拡散機能 - DRSS
      18. 8.3.18 ゲート ドライバ
    4. 8.4 デバイスの機能モード
  10. アプリケーションと実装
    1. 9.1 アプリケーション情報
    2. 9.2 代表的なアプリケーション
      1. 9.2.1 設計要件
      2. 9.2.2 詳細な設計手順
        1. 9.2.2.1  WEBENCH ツールによるカスタム設計
        2. 9.2.2.2  周波数
        3. 9.2.2.3  フィードバック ディバイダ
        4. 9.2.2.4  インダクタと電流センス抵抗の選択
        5. 9.2.2.5  スロープ補償
        6. 9.2.2.6  出力コンデンサ
        7. 9.2.2.7  入力コンデンサ
        8. 9.2.2.8  UVLO ディバイダ
        9. 9.2.2.9  ソフトスタート コンデンサ
        10. 9.2.2.10 MOSFET QH1 および QL1
        11. 9.2.2.11 MOSFET QH2 および QL2
        12. 9.2.2.12 出力電圧周波数補償
        13. 9.2.2.13 外付け部品の選択
      3. 9.2.3 アプリケーション曲線
    3. 9.3 システム例
      1. 9.3.1 双方向電力バックアップ
      2. 9.3.2 並列 (マルチフェーズ) 動作
      3. 9.3.3 ロジック レベルのハイサイド ゲート信号を使用した外部ゲート ドライバ
    4. 9.4 電源に関する推奨事項
    5. 9.5 レイアウト
      1. 9.5.1 レイアウトのガイドライン
        1. 9.5.1.1 出力段レイアウト
        2. 9.5.1.2 ゲート ドライバ レイアウト
        3. 9.5.1.3 コントローラのレイアウト
      2. 9.5.2 レイアウト例
  11. 10デバイスおよびドキュメントのサポート
    1. 10.1 デバイス サポート
      1. 10.1.1 サード・パーティ製品に関する免責事項
      2. 10.1.2 開発サポート
        1. 10.1.2.1 WEBENCH ツールによるカスタム設計
    2. 10.2 ドキュメントの更新通知を受け取る方法
    3. 10.3 サポート・リソース
    4. 10.4 商標
    5. 10.5 静電気放電に関する注意事項
    6. 10.6 用語集
  12. 11改訂履歴
  13. 12メカニカル、パッケージ、および注文情報
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出力電圧周波数補償

ここでは、LM51770x 昇降圧コントローラの制御ループ補償の設計手順を示します。LM51770x は主に降圧モードまたは昇圧モードのいずれかで動作し、遷移領域によって区切られているため、制御ループの設計は降圧と昇圧の両方の動作モードに対して行われます。したがって、補償の最終的な選択は、ループ安定性の観点から、より制限の大きなモードに基づいて決定します。通常、降圧動作領域と昇圧動作領域の両方に深く入り込むように設計されたコンバータの場合、昇圧モードでは右半平面ゼロ (RHPZ) が存在するため、昇圧補償設計はより制限的になります。

昇圧パワー段出力の極位置は、次の式で与えられます。

式 40. f p 1 ( boost ) =   1 2 π 2 R OUT ×   C OUT =   1 . 22   kHz

ここで、

  • ROUT = 2.0Ω は最大負荷 8.0A に相当します。

昇圧パワー段の ESR ゼロ位置は、次の式で与えられます。

式 41. f z 1 =   1 2 π 1 R ESR ×   C OUT =   61.2   kHz

昇圧パワー段の RHP ゼロ位置は、次の式で与えられます。

式 42. f RHP =   1 2 π R OUT × ( 1 - D MAX ) 2 L 1 =   24 . 87   kHz

ここで、

  • DMAX は最小 VIN での最大デューティ サイクルです。

降圧パワー段出力の極位置は、次の式で与えられます。

式 43. f p 1 ( buck ) =   1 2 π 1 R OUT ×   C OUT = 612   Hz

降圧パワー段の ESR ゼロ位置は、昇圧パワー段の ESR ゼロと同じです。

式 44 により、実現可能な帯域幅を制限する主な要因は RHP ゼロであることがわかります。堅牢な設計のためには、クロスオーバー周波数は RHP ゼロ周波数の 1/3 未満である必要があります。RHP ゼロの位置が与えられると、昇圧動作での適切な目標帯域幅は約 5kHz となります。

式 44. f bw =   5   kHz

出力段によっては、昇圧の最大デューティ サイクル (DMAX) が小さい場合や、非常に小さなインダクタを使用している場合に、昇圧の RHP ゼロがそれほど制限されない場合があります。そのような場合は、RHP ゼロによって課される制限 (fRHP /3) をスイッチング周波数の 1/20 と比較して、いずれか小さい方の値を、実現可能な帯域幅として使用します。

補償ゼロは、昇圧出力極周波数の 1.5 倍に配置します。ただし、その場合、ゼロが降圧出力極周波数の 3 倍の位置に来るため、降圧ループのクロスオーバーの前に約 30 度の位相損失が生じ、昇圧ループの各中間周波数で 15 度の位相損失が生じます。

式 45. f ZC =   1 . 8   kHz

補償ゲイン抵抗 Rc1 は、以下で計算されます。

式 46. R C 1 =   2 π × f bw gm EA × R FB 1 + R FB 2 R FB 2 × A CS × R CS × C OUT 1 - D MAX × 1 1 + f bw f RHP 2 = 1.9   kΩ

ここで、

  • DMAX は、昇圧モードの最小 VIN での最大デューティ サイクルです。
  • ACS は電流センス アンプのゲインです。

これにより、補償コンデンサ Cc1 は次の式で計算できます。

式 47. C C 1 =   1 2 π × f ZC ×   R c 1 =   45.8 nF

補償部品の標準値は、Rc1 = 1.91kΩ および Cc1 = 47nF に選択されます。

高周波極 (fpc2) は、Rc1 および Cc1 と並列にコンデンサ (Cc2) を使用して配置されます。この極の周波数を fbw の 7 ~ 10 倍に設定すると、COMP のスイッチング リップルおよびノイズを減衰させ、クロスオーバー周波数での過剰な位相損失を回避できます。ターゲット fpc2 = 6kHz の場合、式 48 を使用して Cc2 を計算します。

式 48. C C 2 =   1 2 π × f pc 2 × R c 1 =   1 . 68   nF

Cc2 には標準値 1.8nF を選択します。これらの値は、補償設計の出発点として利用できます。実際の設計時には、動作範囲全体の安定性マージンと過渡応答時間との間で適切なバランスが取れるように、ラボで調整を行う必要があります。