JAJAA65B June   2014  – October 2025 DS90UB913A-Q1 , DS90UB954-Q1 , DS90UB960-Q1 , DS90UB9702-Q1

 

  1.   1
  2.   概要
  3.   商標
  4. 1はじめに
  5. 2PoC (Power over Coax) の動作原理
    1. 2.1 インダクタの特性
    2. 2.2 コンデンサ特性
    3. 2.3 インダクタとフェライト ビーズ
  6. 3設計上の考慮事項
    1. 3.1 周波数範囲
    2. 3.2 電源に関する考慮事項
    3. 3.3 抵抗に関する考慮事項
    4. 3.4 インダクタのサイズに関する検討事項
    5. 3.5 レイアウトに関する考慮事項
  7. 4FPD-Link PoC の要件
    1. 4.1 チャネル要件
  8. 5PoC ノイズ
    1. 5.1 PoC のノイズ要件
    2. 5.2 VPoC のノイズおよびパルスの測定
      1. 5.2.1 要件
      2. 5.2.2 測定手順
    3. 5.3 RIN+ ノイズの測定
      1. 5.3.1 要件
      2. 5.3.2 測定手順
    4. 5.4 PoC ノイズの原因
    5. 5.5 ノイズ測定のベスト プラクティス
    6. 5.6 PoC ノイズの影響の低減
  9. 6TI でレビュー済みの PoC ネットワーク
    1. 6.1 FPD-Link III データシートに記載の PoC ネットワーク
    2. 6.2 Murata FPD3 のネットワーク
      1. 6.2.1 Murata FPD3 の設計 1
      2. 6.2.2 Murata FPD3 の設計 2
      3. 6.2.3 Murata FPD3 の設計 3
      4. 6.2.4 Murata FPD3 の設計 4
      5. 6.2.5 Murata FPD3 の設計 5
      6. 6.2.6 Murata FPD3 の設計 6
    3. 6.3 TDK FPD3 ネットワーク
      1. 6.3.1 TDK FPD3 の設計 1
      2. 6.3.2 TDK FPD3 の設計 2
      3. 6.3.3 TDK FPD3 の設計 3
      4. 6.3.4 TDK FPD3 の設計 4
      5. 6.3.5 TDK FPD3 の設計 5
      6. 6.3.6 TDK FPD3 の設計 6
      7. 6.3.7 TDK FPD3 の設計 7
      8. 6.3.8 TDK FPD3 の設計 8
    4. 6.4 Coilcraft FPD3 のネットワーク
      1. 6.4.1 Coilcraft FPD3 の設計 1
      2. 6.4.2 Coilcraft FPD3 の設計 2
      3. 6.4.3 Coilcraft FPD3 の設計 3
      4. 6.4.4 Coilcraft FPD3 の設計 4
      5. 6.4.5 Coilcraft FPD3 の設計 5
      6. 6.4.6 Coilcraft FPD3 の設計 6
      7. 6.4.7 Coilcraft FPD3 の設計 7
      8. 6.4.8 Coilcraft FPD3 の設計 8
      9. 6.4.9 Coilcraft FPD3 の設計 9
    5. 6.5 Murata FPD4 のネットワーク
      1. 6.5.1  設計 1
      2. 6.5.2  設計 2
      3. 6.5.3  設計 3
      4. 6.5.4  設計 4
      5. 6.5.5  設計 5
      6. 6.5.6  設計 6
      7. 6.5.7  設計 7
      8. 6.5.8  設計 8
      9. 6.5.9  設計 9
      10. 6.5.10 設計 10
      11. 6.5.11 設計 11
      12. 6.5.12 設計 12
      13. 6.5.13 設計 13
      14. 6.5.14 設計 14
      15. 6.5.15 設計 15
      16. 6.5.16 設計 16
      17. 6.5.17 設計 17
      18. 6.5.18 設計 18
      19. 6.5.19 設計 19
      20. 6.5.20 設計 20
      21. 6.5.21 設計 21
      22. 6.5.22 設計 22
      23. 6.5.23 設計 23
      24. 6.5.24 設計 24
      25. 6.5.25 設計 25
      26. 6.5.26 設計 26
      27. 6.5.27 設計 27
      28. 6.5.28 設計 28
      29. 6.5.29 設計 29
    6. 6.6 TDK FPD4 ネットワーク
      1. 6.6.1  設計 1
      2. 6.6.2  設計 2
      3. 6.6.3  設計 3
      4. 6.6.4  設計 4
      5. 6.6.5  設計 5
      6. 6.6.6  設計 6
      7. 6.6.7  設計 7
      8. 6.6.8  設計 8
      9. 6.6.9  設計 9
      10. 6.6.10 設計 10
      11. 6.6.11 設計 11
      12. 6.6.12 設計 12
      13. 6.6.13 設計 13
      14. 6.6.14 設計 14
      15. 6.6.15 設計 15
      16. 6.6.16 設計 16
      17. 6.6.17 設計 17
      18. 6.6.18 設計 18
      19. 6.6.19 設計 19
      20. 6.6.20 設計 20
      21. 6.6.21 設計 21
      22. 6.6.22 設計 22
      23. 6.6.23 設計 23
    7. 6.7 Coilcraft FPD4 のネットワーク
      1. 6.7.1  設計 1
      2. 6.7.2  設計 2
      3. 6.7.3  設計 3
      4. 6.7.4  設計 4
      5. 6.7.5  設計 5
      6. 6.7.6  設計 6
      7. 6.7.7  設計 7
      8. 6.7.8  設計 8
      9. 6.7.9  設計 9
      10. 6.7.10 設計 10
      11. 6.7.11 設計 11
      12. 6.7.12 設計 12
      13. 6.7.13 設計 13
      14. 6.7.14 設計 14
      15. 6.7.15 設計 15
  10. 7まとめ
  11. 8参考資料
  12. 9改訂履歴

インダクタの特性

理想的なインダクタは、すべての AC 周波数をブロックし、すべての DC 電力を通過させることができます。しかし、インダクタは極端な状況で、この理想から離れた動作になる特性があります。実際のインダクタは、図 2-2 に示すような回路に近い動作を行い、寄生容量と抵抗の成分が存在します。低周波数では、コンデンサは高インピーダンスの開路のように動作し、インダクタは低インピーダンスの短絡のように動作します。非常に高い周波数では、コンデンサは短絡のように動作し、この時点でインピーダンスは RL に等しくなります。

 実際のインダクタ図 2-2 実際のインダクタ

インピーダンスは、インダクタとコンデンサが共振する自己共振周波数 (SRF) でピークになります。SRF を超える周波数では、寄生容量が有意になり、インピーダンスは低下します。SRF は、式 2 を使用して計算できます。ここで、L はインダクタンス、C は寄生容量、F は共振周波数です。これらの値は通常、部品のデータシートに記載されています。

式 1. F=1LC

100μH インダクタのインピーダンスを、図 2-3 に示します。ここで、黒線は SRF の前の理想的なインダクタのインピーダンス、赤の線は SRF 後の寄生容量のインピーダンスを示しています。

 SRF インピーダンスのプロット図 2-3 SRF インピーダンスのプロット

図 2-3 は、100µH インダクタの場合、約 1MHz でインピーダンスが 1kΩ より高くなり、約 30MHz を超える周波数では 1kΩ より低くなることを示しています。厳密には必須ではありませんが、高インピーダンスは信号損失の低減と関係するため、1kΩ より高いインピーダンスが推奨されます。この理由から、FPD-Link の双方向信号周波数範囲の全体にわたってインピーダンスを高くするには、より複雑なローパス フィルタが必要です。

動作周波数範囲全体にわたって回路のインピーダンスを高くするには、値の異なる誘導性成分を直列に追加します。100µH インダクタと比較して、4.7µH インダクタは SRF が高くなりますが、広い周波数範囲にわたって高インピーダンスを実現できません。ただし、直列に使用すれば、1MHz 付近から 500MHz のずっと上まで 1kΩ を超えるインピーダンスを維持できます。

 直列インダクタのインピーダンス図 2-4 直列インダクタのインピーダンス

インダクタを直列にカスケード接続すると、広帯域幅のインダクタを構築でき、バック チャネルの周波数範囲からフォワード チャネルの周波数までのすべてをカバーできます。このことは、図 2-5図 2-6 に詳しく示されています。図 2-5 に、さまざまな値のインダクタについて、それぞれのインピーダンスのグラフを示します。単独のインダクタでは、広い周波数範囲にわたって 1kΩ のインピーダンスは得られません。しかし、インダクタを組み合わせると、図 2-6 に示すように広い周波数範囲にわたって 1kΩ の一貫したインピーダンスが得られます。

 単独のインダクタのインピーダンス図 2-5 単独のインダクタのインピーダンス
 組み合わせたインダクタのインピーダンス図 2-6 組み合わせたインダクタのインピーダンス

実際のインダクタを使用する際には、飽和電流も考慮する必要があります。インダクタには、磁界の形で電気エネルギーが蓄積されます。磁界の強度は、インダクタを流れる電流と相関しています。飽和電流はインダクタがサポートできる最大電流で、この電流を超えるとインダクタは理想的なインダクタとして動作しなくなります。PoC ネットワークを実装する際には、動作条件がどの部品についても最大定格の電気的特性を超えないことを確認するのが重要です。