JAJSST7B January 2024 – September 2025 MCF8315C-Q1
PRODUCTION DATA
モーターを迅速に減速させるには、モーターの機械的エネルギーを高速かつ制御された方法で回転子から引き抜く必要があります。しかし、減速プロセス中にモーターの機械的エネルギーが電源に戻ると、電源電圧 (VM) は上昇します。MCF8315C-Q1 は、アクティブ ブレーキと呼ばれる斬新な手法を使って、ポンピング エネルギーを電源電圧に戻すことなく、モーターを迅速に減速できます。アクティブ ブレーキを有効化し、モーターを急激に減速する際の DC バス電圧 (VM) スパイクを防止するには、ACTIVE_BRAKE_EN を 1b に設定する必要があります。DC バス電圧 (VM) スパイクを発生させずに、モーターを素早く減速させるため、リバース ドライブ中 (「セクション 6.3.10.3」を参照) またはモーター停止中 (「セクション 6.3.20.3」を参照) にアクティブ ブレーキを使うこともできます。
アクティブ ブレーキ中に DC バスから供給される電流の上限値 (idc_ref) は、ACTIVE_BRAKE_CURRENT_LIMIT によって設定できます。D 軸基準電流 (id_ref) は、DC バス電流の上限値 (idc_ref) と DC バス電流の推定値 (idc) との間の偏差から、PI コントローラを使って生成されます (図 6-42 を参照)。PI コントローラのゲイン定数は、ACTIVE_BRAKE_KP と ACTIVE_BRAKE_KI によって設定できます。アクティブ ブレーキ中、DC バス電流の上限値 (idc_ref) は、ACTIVE_BRAKE_BUS_CURRENT_SLEW_RATE によって設定されたスルーレートで、0 から ACTIVE_BRAKE_CURRENT_LIMIT まで直線的に増加します。
ACTIVE_BRAKE_SPEED_DELTA_LIMIT_ENTRY は、その値を上回るとアクティブ ブレーキ動作に入る、初期速度と目標速度の差の最小値を設定します。たとえば、ACTIVE_BRAKE_SPEED_DELTA_LIMIT_ENTRY が 10% に設定されていると仮定します。初期速度が 100%、目標速度が 95% に設定されている場合、95% 速度に到達するのに、MCF8315C-Q1 はアクティブ ブレーキの代わりに AVS を使います。なぜなら、指示された速度変化 (5%) が ACTIVE_BRAKE_SPEED_DELTA_LIMIT_ENTRY (10%) より小さいためです。
ACTIVE_BRAKE_SPEED_DELTA_LIMIT_EXIT は、その値を下回るとアクティブ ブレーキ動作を終える、現在の速度と目標速度の差を設定します。たとえば、ACTIVE_BRAKE_SPEED_DELTA_LIMIT_EXIT が 5% に設定されていると仮定します。モーターの初期速度が 100%、目標速度が 10% に設定されている場合、モーター速度を 15% に下げるのに、MCF8315C-Q1 はアクティブ ブレーキを使います。15% の速度に達すると、MCF8315C-Q1 はアクティブ ブレーキ動作を終了し、AVS を使ってモーター速度を 10% まで下げます。
ACTIVE_BRAKE_MOD_INDEX_LIMIT は、それを下回るとアクティブ ブレーキが使われる、変調インデックスを設定します。たとえば、ACTIVE_BRAKE_MOD_INDEX_LIMIT が 50%、ACTIVE_BRAKE_SPEED_DELTA_LIMIT_ENTRY が 5%、ACTIVE_BRAKE_SPEED_DELTA_LIMIT_EXIT が 2.5% に設定されていると仮定します。モーターの初期速度が 70% (対応する変調インデックスは 90%)、目標速度が 40% (対応する変調インデックスは 60%) に設定されている場合、MCF8315C-Q1 は AVS を使って 40% の目標速度までモーターを減速します。なぜなら、最終的な速度に対応する変調インデックス (60%) が ACTIVE_BRAKE_MOD_INDEX_LIMIT (50%) より大きいためです。同様に、最終速度コマンドが 10% である場合 (対応する変調インデックスは 30%)、MCF8315C-Q1 は 30% の速度 (対応する変調インデックスは 50%) まで AVS を使い、30%~15% の速度ではアクティブ ブレーキに切り換えます (最終速度 (10%) + ACTIVE_BRAKE_SPEED_DELTA_LIMIT_EXIT (5%))。そして、15%~10% の速度で AVS を使いアクティブ ブレーキを完了します。ACTIVE_BRAKE_MOD_INDEX_LIMIT を 100% に設定してアクティブ ブレーキ チューニングを開始することをテキサス・インスツルメンツは推奨します。アクティブ ブレーキ中に DC バス電圧 (VM) スパイクが観測された場合、この電圧スパイクが除去されるように ACTIVE_BRAKE_MOD_INDEX_LIMIT を段階的に減らします。ACTIVE_BRAKE_MOD_INDEX_LIMIT が 0% に設定されている場合、(ACTIVE_BRAKE_EN が 1b に設定されている場合でも) MCF8315C-Q1 は AVS で順方向に減速します。逆方向 (方向変更中) の場合、ACTIVE_BRAKE_MOD_INDEX_LIMIT は適用されないため、MCF8315C-Q1 はアクティブ ブレーキで減速します。