JAJSVX5 December   2024 MCF8315D

PRODUCTION DATA  

  1.   1
  2. 特長
  3. アプリケーション
  4. 概要
  5. ピン構成および機能
  6. 仕様
    1. 5.1 絶対最大定格
    2. 5.2 ESD 定格
    3. 5.3 推奨動作条件
    4. 5.4 熱に関する情報
    5. 5.5 電気的特性
    6. 5.6 標準モードとファースト モードの SDA および SCL バスの特性
  7. 詳細説明
    1. 6.1 概要
    2. 6.2 機能ブロック図
    3. 6.3 機能説明
      1. 6.3.1  出力段
      2. 6.3.2  デバイス インターフェイス
        1. 6.3.2.1 インターフェイス - 制御と監視
        2. 6.3.2.2 I2C インターフェイス
      3. 6.3.3  降圧混在モード降圧レギュレータ
        1. 6.3.3.1 インダクタ モードの降圧
        2. 6.3.3.2 抵抗モードの降圧
        3. 6.3.3.3 外部 LDO を使った降圧レギュレータ
        4. 6.3.3.4 降圧レギュレータからの AVDD 電源シーケンス
        5. 6.3.3.5 混在モードでの降圧動作と制御
      4. 6.3.4  AVDD リニア電圧レギュレータ
      5. 6.3.5  チャージ ポンプ
      6. 6.3.6  スルー レート制御
      7. 6.3.7  クロス導通 (デッド タイム)
      8. 6.3.8  モーター制御入力源
        1. 6.3.8.1 アナログ モードのモーター制御
        2. 6.3.8.2 PWM モード モーター制御
        3. 6.3.8.3 I2C 方式のモーター制御
        4. 6.3.8.4 周波数モード モーター制御
        5. 6.3.8.5 入力リファレンス プロファイル
          1. 6.3.8.5.1 リニア制御プロファイル
          2. 6.3.8.5.2 階段制御プロファイル
          3. 6.3.8.5.3 双方向プロファイル
          4. 6.3.8.5.4 マルチリファレンス モード動作
          5. 6.3.8.5.5 プロファイラを使わない入力リファレンス伝達関数
      9. 6.3.9  異なる初期条件でのモータの起動
        1. 6.3.9.1 ケース 1 – モータが停止
        2. 6.3.9.2 ケース 2 – モータが順方向に回転
        3. 6.3.9.3 ケース 3 – モータが逆方向に回転
      10. 6.3.10 モータの起動シーケンス (MSS)
        1. 6.3.10.1 初期速度検出 (ISD)
        2. 6.3.10.2 モータの再同期化
        3. 6.3.10.3 リバース ドライブ
          1. 6.3.10.3.1 リバース ドライブ チューニング
        4. 6.3.10.4 モータ起動
          1. 6.3.10.4.1 アライン
          2. 6.3.10.4.2 ダブル アライン
          3. 6.3.10.4.3 初期位置検出 (IPD)
            1. 6.3.10.4.3.1 IPD 動作
            2. 6.3.10.4.3.2 IPD 解放モード
            3. 6.3.10.4.3.3 IPD アドバンス角度
          4. 6.3.10.4.4 スロー ファースト サイクル起動
          5. 6.3.10.4.5 開ループ
          6. 6.3.10.4.6 開ループから閉ループへの遷移
      11. 6.3.11 閉ループ制御
        1. 6.3.11.1 閉ループ加速 / 減速スルーレート
        2. 6.3.11.2 速度 PI 制御
        3. 6.3.11.3 電流 PI 制御
        4. 6.3.11.4 電力制御モード
        5. 6.3.11.5 電流 (トルク) 制御モード
        6. 6.3.11.6 変調インデックス制御
        7. 6.3.11.7 過変調
        8. 6.3.11.8 モーター速度制限
        9. 6.3.11.9 入力 DC 電力制限
      12. 6.3.12 フラックス減衰制御
      13. 6.3.13 モーター パラメータ
        1. 6.3.13.1 モータ抵抗
        2. 6.3.13.2 モーター インダクタンス
        3. 6.3.13.3 モータ逆起電力定数
      14. 6.3.14 モーター パラメータ抽出ツール (MPET)
      15. 6.3.15 電圧サージ防止 (AVS)
      16. 6.3.16 アクティブ ブレーキ
      17. 6.3.17 出力 PWM スイッチング周波数
      18. 6.3.18 PWM ディザリング
      19. 6.3.19 PWM 変調方式
      20. 6.3.20 デッド タイム補償
      21. 6.3.21 モータ停止オプション
        1. 6.3.21.1 コースト (ハイ インピーダンス) モード
        2. 6.3.21.2 リサーキュレーション モード
        3. 6.3.21.3 ローサイド ブレーキ
        4. 6.3.21.4 ハイサイド ブレーキ
        5. 6.3.21.5 アクティブ スピン ダウン
      22. 6.3.22 アライン ブレーキ
      23. 6.3.23 FG の構成
        1. 6.3.23.1 FG 出力周波数
        2. 6.3.23.2 開および閉ループ状態時の FG
        3. 6.3.23.3 フォルト状態およびアイドル状態での FG
      24. 6.3.24 保護機能
        1. 6.3.24.1  VM 電源低電圧誤動作防止
        2. 6.3.24.2  AVDD 低電圧誤動作防止 (AVDD_UV)
        3. 6.3.24.3  降圧低電圧誤動作防止 (BUCK_UV)
        4. 6.3.24.4  VCP チャージ ポンプ低電圧誤動作防止 (CPUV)
        5. 6.3.24.5  過電圧保護 (OVP)
        6. 6.3.24.6  過電流保護 (OCP)
          1. 6.3.24.6.1 OCP ラッチ シャットダウン (OCP_MODE = 00b)
          2. 6.3.24.6.2 OCP 自動リトライ (OCP_MODE = 01b)
        7. 6.3.24.7  降圧過電流保護
        8. 6.3.24.8  ハードウェア ロック検出電流制限 (HW_LOCK_ILIMIT)
          1. 6.3.24.8.1 HW_LOCK_ILIMIT ラッチ シャットダウン
          2. 6.3.24.8.2 HW_LOCK_ILIMIT 自動回復
          3. 6.3.24.8.3 HW_LOCK_ILIMIT 通知のみ
          4. 6.3.24.8.4 HW_LOCK_ILIMIT 無効
        9. 6.3.24.9  ロック検出電流制限 (LOCK_ILIMIT)
          1. 6.3.24.9.1 LOCK_ILIMIT ラッチ シャットダウン
          2. 6.3.24.9.2 LOCK_ILIMIT 自動回復
          3. 6.3.24.9.3 LOCK_ILIMIT 通知のみ
          4. 6.3.24.9.4 LOCK_ILIMIT 無効
        10. 6.3.24.10 モーター ロック検出
          1. 6.3.24.10.1 ロック 1:異常速度 (ABN_SPEED)
          2. 6.3.24.10.2 ロック 2:異常 BEMF (ABN_BEMF)
          3. 6.3.24.10.3 ロック 3:モーターなしフォルト (NO_MTR)
        11. 6.3.24.11 モーター ロック (MTR_LCK)
          1. 6.3.24.11.1 MTR_LCK ラッチ シャットダウン
          2. 6.3.24.11.2 MTR_LCK 自動回復
          3. 6.3.24.11.3 MTR_LCK 通知のみ
          4. 6.3.24.11.4 MTR_LCK 無効
        12. 6.3.24.12 EEPROM フォルト
        13. 6.3.24.13 I2C CRC フォルト
        14. 6.3.24.14 最小 VM (低電圧) 保護
        15. 6.3.24.15 最大 VM (過電圧) 保護
        16. 6.3.24.16 MPET フォルト
        17. 6.3.24.17 IPD フォルト
        18. 6.3.24.18 FET 過熱警告 (OTW)
        19. 6.3.24.19 FET サーマル シャットダウン (TSD_FET)
    4. 6.4 デバイスの機能モード
      1. 6.4.1 機能モード
        1. 6.4.1.1 スリープ モード
        2. 6.4.1.2 スタンバイ モード
        3. 6.4.1.3 フォルト リセット (CLR_FLT)
    5. 6.5 外部インターフェイス
      1. 6.5.1 DRVOFF 機能
      2. 6.5.2 DAC 出力
      3. 6.5.3 電流センス出力
      4. 6.5.4 発振器ソース
        1. 6.5.4.1 外部クロック ソース
      5. 6.5.5 外部ウォッチドッグ
    6. 6.6 EEPROM アクセスと I2C インターフェイス
      1. 6.6.1 EEPROM アクセス
        1. 6.6.1.1 EEPROM 書き込み
        2. 6.6.1.2 EEPROM 読み出し
        3. 6.6.1.3 EEPROM セキュリティ
      2. 6.6.2 I2C シリアル インターフェイス
        1. 6.6.2.1 I2C データ ワード
        2. 6.6.2.2 I2C 書き込みトランザクション
        3. 6.6.2.3 I2C 読み出しトランザクション
        4. 6.6.2.4 I2C 通信プロトコル パケットの例
        5. 6.6.2.5 I2C クロック ストレッチング
        6. 6.6.2.6 CRC バイト計算
  8. EEPROM (不揮発性) レジスタ マップ
    1. 7.1 Algorithm_Configuration レジスタ
    2. 7.2 Fault_Configuration レジスタ
    3. 7.3 Hardware_Configuration レジスタ
    4. 7.4 Internal_Algorithm_Configuration レジスタ
  9. RAM (揮発性) レジスタ マップ
    1. 8.1 Fault_Status レジスタ
    2. 8.2 System_Status レジスタ
    3. 8.3 Device_Control レジスタ
    4. 8.4 Algorithm_Control レジスタ
    5. 8.5 Algorithm_Variables レジスタ
  10. アプリケーションと実装
    1. 9.1 アプリケーション情報
    2. 9.2 代表的なアプリケーション
      1. 9.2.1 アプリケーション曲線
        1. 9.2.1.1 モータ起動
        2. 9.2.1.2 MPET
        3. 9.2.1.3 デッド タイム補償
        4. 9.2.1.4 自動ハンドオフ
        5. 9.2.1.5 電圧サージ防止 (AVS)
        6. 9.2.1.6 DACOUT を使用したリアルタイムの変数トラッキング
    3. 9.3 電源に関する推奨事項
      1. 9.3.1 バルク コンデンサ
    4. 9.4 レイアウト
      1. 9.4.1 レイアウトのガイドライン
      2. 9.4.2 レイアウト例
      3. 9.4.3 熱に関する注意事項
        1. 9.4.3.1 電力散逸
  11. 10デバイスおよびドキュメントのサポート
    1. 10.1 サポート・リソース
    2. 10.2 商標
    3. 10.3 静電気放電に関する注意事項
    4. 10.4 用語集
  12. 11改訂履歴
  13. 12メカニカル、パッケージ、および注文情報

アクティブ ブレーキ

モーターを迅速に減速させるには、モーターの機械的エネルギーを高速かつ制御された方法で回転子から引き抜く必要があります。しかし、減速プロセス中にモーターの機械的エネルギーが電源に戻ると、電源電圧 (VM) は上昇します。MCF8315D は、アクティブ ブレーキと呼ばれる斬新な手法を使って、ポンピング エネルギーを電源電圧に戻すことなく、モーターを迅速に減速できます。アクティブ ブレーキを有効化し、モーターを急激に減速する際の DC バス電圧 (VM) スパイクを防止するには、ACTIVE_BRAKE_EN を 1b に設定する必要があります。DC バス電圧 (VM) スパイクを発生させずに、モーターを素早く減速させるため、リバース ドライブ中 (「リバース ドライブ」を参照) またはモーター停止中 (「アクティブ スピン ダウン」を参照) にアクティブ ブレーキを使うこともできます。

アクティブ ブレーキ中に DC バスから供給される電流の上限値 (idc_ref) は、ACTIVE_BRAKE_CURRENT_LIMIT によって設定できます。D 軸基準電流 (id_ref) は、DC バス電流の上限値 (idc_ref) と DC バス電流の推定値 (idc) との間の偏差から、PI コントローラを使って生成されます (図 6-52 を参照)。PI コントローラのゲイン定数は、ACTIVE_BRAKE_KP と ACTIVE_BRAKE_KI によって設定できます。アクティブ ブレーキ中、DC バス電流の上限値 (idc_ref) は、ACTIVE_BRAKE_BUS_CURRENT_SLEW_RATE によって設定されたスルーレートで、0 から ACTIVE_BRAKE_CURRENT_LIMIT まで直線的に増加します。

MCF8315D アクティブ ブレーキの id_ref 電流制御ループ図 6-52 アクティブ ブレーキの id_ref 電流制御ループ

ACTIVE_BRAKE_SPEED_DELTA_LIMIT_ENTRY は、その値を上回るとアクティブ ブレーキ動作に入る、初期速度と目標速度の差の最小値を設定します。たとえば、ACTIVE_BRAKE_SPEED_DELTA_LIMIT_ENTRY が 10% に設定されていると仮定します。初期速度が 100%、目標速度が 95% に設定されている場合、95% 速度に到達するのに、MCF8315D はアクティブ ブレーキの代わりに AVS を使います。なぜなら、指示された速度変化 (5%) が ACTIVE_BRAKE_SPEED_DELTA_LIMIT_ENTRY (10%) より小さいためです。

ACTIVE_BRAKE_SPEED_DELTA_LIMIT_EXIT は、その値を下回るとアクティブ ブレーキ動作を終える、現在の速度と目標速度の差を設定します。たとえば、ACTIVE_BRAKE_SPEED_DELTA_LIMIT_EXIT が 5% に設定されていると仮定します。モーターの初期速度が 100%、目標速度が 10% に設定されている場合、モーター速度を 15% に下げるのに、MCF8315D はアクティブ ブレーキを使います。15% の速度に達すると、MCF8315D はアクティブ ブレーキ動作を終了し、AVS を使ってモーター速度を 10% まで下げます。

ACTIVE_BRAKE_MOD_INDEX_LIMIT は、それを下回るとアクティブ ブレーキが使われる、変調インデックスを設定します。たとえば、ACTIVE_BRAKE_MOD_INDEX_LIMIT が 50%、ACTIVE_BRAKE_SPEED_DELTA_LIMIT_ENTRY が 5%、ACTIVE_BRAKE_SPEED_DELTA_LIMIT_EXIT が 2.5% に設定されていると仮定します。モーターの初期速度が 70% (対応する変調インデックスは 90%)、目標速度が 40% (対応する変調インデックスは 60%) に設定されている場合、MCF8315D は AVS を使って 40% の目標速度までモーターを減速します。なぜなら、最終的な速度に対応する変調インデックス (60%) が ACTIVE_BRAKE_MOD_INDEX_LIMIT (50%) より大きいためです。同様に、最終速度コマンドが 10% である場合 (対応する変調インデックスは 30%)、MCF8315D は 30% の速度 (対応する変調インデックスは 50%) まで AVS を使い、30%~15% の速度ではアクティブ ブレーキに切り換えます (最終速度 (10%) + ACTIVE_BRAKE_SPEED_DELTA_LIMIT_EXIT (5%))。そして、15%~10% の速度で AVS を使いアクティブ ブレーキを完了します。ACTIVE_BRAKE_MOD_INDEX_LIMIT を 100% に設定してアクティブ ブレーキ チューニングを開始することをテキサス・インスツルメンツは推奨します。アクティブ ブレーキ中に DC バス電圧 (VM) スパイクが観測された場合、この電圧スパイクが除去されるように ACTIVE_BRAKE_MOD_INDEX_LIMIT を段階的に減らします。ACTIVE_BRAKE_MOD_INDEX_LIMIT が 0% に設定されている場合、(ACTIVE_BRAKE_EN が 1b に設定されている場合でも) MCF8315D は AVS で順方向に減速します。逆方向 (方向変更中) の場合、ACTIVE_BRAKE_MOD_INDEX_LIMIT は適用されないため、MCF8315D はアクティブ ブレーキで減速します。

注:
  1. ACTIVE_BRAKE_SPEED_DELTA_LIMIT_ENTRY、ACTIVE_BRAKE_SPEED_DELTA_LIMIT_EXIT、ACTIVE_BRAKE_MOD_INDEX_LIMIT は、順方向での減速中にのみ適用され、方向変更中は適用されません。
  2. アクティブ ブレーキを動作させる場合、ACTIVE_BRAKE_SPEED_DELTA_LIMIT_ENTRY は ACTIVE_BRAKE_SPEED_DELTA_LIMIT_EXIT よりも大きい値に設定する必要があります。
  3. アクティブ (または閉ループ) ブレーキ中、Iq_ref は -ILIMIT にクランプされます。これ (Iq_ref が -ILIMIT にクランプされること) により、減速中に速度 PI ループが飽和し、SPEED_LOOP_SATURATION ビットが 1b に設定される可能性があります。減速が完了し、速度 PI ループが飽和状態を脱すると、このビットは自動的に 0b に設定されます。したがって、減速中、速度ループ飽和フォルトは無視する必要があります。
  4. アクティブ ブレーキは、速度制御モードでのみ使用できます。
  5. (バス) 電力制限機能が有効化されている (BUS_POWER_LIMIT_ENABLE = 1b) 場合、(ACTIVE_BRAKE_EN = 1b の場合でも) アクティブ ブレーキは利用できません。